第7話 大好きな人からの看病(若葉編)

 一睡もできなかったことで、40度の高熱を出してしまった。


 おかあさんに看病を頼みたいけど、パートの仕事に出ている。7時間くらいはぼっちで耐える必要がある。


 新しいおとうさんは、朝から沖縄に出張。一週間~一〇日くらい、家を留守にする。


 勝に助けを求めようにも、相手は恨みを持っている。40度の熱を出しても、救いの手を差し伸べる確率は低い。


 死を覚悟していると、部屋をノックされる音がした。


「若葉、部屋に入っていいか」


 勝の声を聞き、体内は別の熱を帯びる。


「今回だけは入っていいよ」


 今回だけでなく、いつだって部屋に入ってきてほしい。大好きな男と、一秒でも長く過ごしたい。


「おかあさんから、40度の熱が出たと聞いたけど調子はどうなんだ」


 交際していたときに感じていたけど、どことなく抜けている発言が多い。素は天然なのかなと思った。


「いいわけないでしょう」


 勝はレジ袋を地面に置く。


「アイス、ヨーグルト、ポカリスエットを買ってきたから、好きなときに飲食してくれ」


 看病のために、アイス、ヨーグルト、ポカリスエットを買ってきてくれた。胸キュン展開に、心は温かくなった。


「あ、ありがとう・・・・・・」


「おまえに感謝されるためにやっているのではなく、新しいおかあさんに悲しんでほしくないからだ。そこのところは勘違いするなよ」


 きのうから満足に食べられていないからか、おなかはきゅるるとなった。 


「ま、北村君。雑炊を食べたいんだけど・・・・・・」


「デザートだけでなく、ご飯類を食べられるのか。ドラッグストアで買ってくるから、しばらく待っていろ」


「ドラッグストアではなく、手作りを食べたいんだけど・・・・・・」


 勝はしょうがないという感じで、頭をぼりぼりとかいていた。


「料理はめったにしないから、味付けはまったく保証できないぞ。それでもいいなら、雑炊くらいなら作ることはできるかもしれないぞ・・・・・・」


 若葉は深々と頭を下げる。謝罪したときよりも、角度は深かった。


「お願いします・・・・・・」


「わかった。雑炊を作ってやる。料理はめったにしないから、味はどうなっても知らないぞ。まずかったとしても、責任は取れないからな」


 ご飯を煮て、軽く味付けをするだけ。料理ど素人であっても、失敗はありえないレベル。


「あ、ありがとう・・・・・・」


「塩分は多めがいいのか、少なめがいいのか?」


「たっぷりにしてもらえると、とっても嬉しいんだけど・・・・・・」


 この言葉が恐怖の始まりになるとは、現時点では予想もつかなかった。


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