第4話 勝の父親からの強烈な一言(若葉編)
部屋の中で休んでいると、乾いた音のノックが数回聞こえる。
「トントン、トントン」
部屋をゆっくりと開けると、勝の父が立っていた。
「少しだけ話をしたいから、一階まで来てもらおう」
火花を散らしたことで、異変を感じ取ったのは確実。あれで何も気づかないなら、感覚は著しく欠如している。
ゴムで髪の毛をくくったあと、勝の父親が待つ一階へと足を進める。恐怖心ゆえに、一歩一歩は非常に重かった。見えない何かに縛られているかのようだった。
一階のテーブルでは、新しい父が腕組みをして待っていた。
「ここに座ってくれ」
指示されたのは、父の目の前の席。圧力を一番感じる場所である。
椅子に座ったあと、心臓はドクンドクンとなった。
「勝と何があったのかを、包み隠さずに伝えてほしい」
浮気によって、破局された過去を伝えた。父は相槌を2~3回打っていた。神妙な面持ちなので、何を考えているのかは読めなかった。
「なるほど。その理由なら、フォローは難しそうだな」
フォローは無理、短い言葉が胸に強烈に突き刺さる。
「普段は温厚に接している分、怒らせたときの反動はすさまじいものがある。こんなことをいうのは酷だけど、二度と話をしないかもしれないな」
同じ空間に住んでいる大好きな人と、一言も会話をしない生活。想像すると、身の毛がよだつこととなった。浮気したことに対する、心の死刑宣告だ。
「若葉さんのおかあさんと相談して、食事は別々にすることに決定した。君もそれでいいだろ」
反論の余地を許さない、冷たい口調だった。
「わ、わかりました・・・・・・」
勝の父は眉を顰める。
「勝のことを考えたら、再婚すべきではなかった。家族をチェックしなかったのは、こちらのミスといっていい。再婚を急ぎすぎたために、このような結末を招いてしまった」
三人の家族から敵対心を持たれる。地獄さながらの生活が、幕を開けようとしていた。
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