第3話 浮気しなければよかった(若葉編)
元カレと生活すると知ったとき、気分は大いに高まっていた。好きな人と一緒に過ごすのは、何よりの快楽といえる。
勝は浮気を忘れているかと思ったけど、そんなことは全然なかった。破局を告げられたときと変わらぬ憎しみを持っていた。深い憎悪はどんなに時間をかけても、消えることはなさそうだ。
浮気をした理由は、満たされていると感じなかったため。欲求の赴くままに、新しい彼氏を作ってしまった。
浮気は一カ月ほどで発覚し、一方的に別れを告げられる。用済みと思っていたため、破局する手間を省けたのはラッキーだった。
本命との交際は順調に行くと思ってけど、実際はそんなことなかった。勝と破局してから三カ月後、二股をかけていた男と破局した。いろいろと問題はあったけど、直接的な原因は彼の浮気。合計で六人の女と交際していた。欲望の身で生きている男は、六股をかけていたことになる。
六股男は浮気がばれて、すべての女から逃げられた。二兎を追う者は一兎をも得ずといわれるけど、彼の場合は六兎を追うものはすべてに逃げられるがぴったりだ。
六股男と破局したあと、勝の大切さに気づいた。派手さはないけど、堅実さは大きな魅力になりうる。バランスの悪い男は、何かをしでかすことが多い。
あんな別れ方をしたため、声をかけることすらできなくなった。下手に接しようものなら、悪いうわさを流されかねない。最悪、いじめに発展するリスクもある。
洗濯かごの中から、勝のパンツを持ち出す計画を立てていたけど、やめておこうと思った。パンツが一枚でもなくなったとなったら、大きな問題になるリスクをはらんでいる。
パンツは持ち出さないけど、匂いは堂々と嗅ぐつもりでいる。大好きな人の股間を感じられるだけで、幸せをぞんぶんに満喫できる。
勝が不在のときは、部屋のにおいを嗅ぐのもいい。同じ家で生活したことで、可能性はおおいに広がった。
新しく与えられた部屋がノックされる。
「若葉、部屋に入るわよ」
「おかあさん、どうしたの?」
おかあさんは気をつかったのか、小さい声で聴いてきた。
「あんなに楽しみにしていたのに、どうしちゃったのよ」
これまで隠していた事情を、母に包み隠さずに伝える。
「なるほどね。あなたを許すことは、絶対にないでしょうね」
浮気をされたからこそ、浮気をされた人間の気持ちがわかる。二度と顔を合わせたくないほど、相手のことを嫌いになる。
「新しいおうちにお世話になるんだから、喧嘩はなるべくしないようにしてね」
「私の方からはするつもりはないよ」
おかあさんは顎に手を当てる。
「ご飯は別々にしたほうがよさそうだね。勝さんの様子からして、目を合わせるのも嫌そうだし・・・・・・」
「勝があの態度のままだったら、そうするしかないと思う」
彼女のままだったら、ご飯の食べさせあっこをできたのに。ほんの一時の気の迷いで、すべてを失うこととなった。
「私たちは家に住まわせてもらう立場なの。相手方よりも弱いことを認識しておいてね」
自宅を持っている、家に住まわせてもらっているでは、立場は大きくなる。自宅であったなら、勝に対してもう少し強く出れたのかな。
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