第2話 険悪な二人
若葉の部屋は、勝の隣に決まった。大嫌いな女の隣に住むなんて、悪夢を見ているかのようだった。
「私の部屋には絶対に入ってこないでね」
「そちらこそ、部屋に絶対に入ってくるなよ」
勝は扉の前に、「若葉は絶対に立ち入り禁止」の紙を張りつける。おまえのことは大嫌い、顔すら見たくないという意思表示である。
若葉はこちらを強烈に睨みつけてきた。
「あんたの部屋を見るなんて、死んでも願い下げだって。男の部屋には、いろいろと汚いものがありそうだし。隅々を探したら、エロ本などもあるんじゃない」
浮気女を相手にしているからか、普段では考えられないほどに口調は荒かった。
「そんなもの、あるわけないだろ」
ベッドに下に一冊、引き出しの中に三冊のエッチ本を隠している。男のたしなみとして、必須アイテムといえる。
若葉の目つきは、より一層きつくなった。
「食事、洗濯物も別々にしてほしいけど、特別に我慢してあげる。新しいおとうさんにかける迷惑は最小限にしたいからね」
勝は乱暴な言葉を返す。
「それはこっちのセリフだ。二股をかけた女の匂いをつけたら、服に穢れをつけることになる」
二股女の匂いのついた、衣服を着用する日々を送る。そのことを考えるだけで、身の毛はおおいによだつこととなった。
食事についても、おいしく食べられることはなさそう。食べる楽しみを失ったとき、元気を保っていられるのか。
若葉が部屋に入ったのを確認したあと、勝は自分の部屋に入った。扉を乱雑に閉めようとするも、間一髪のところで踏みとどまることができた。
部屋の中に入ったあと、強烈な眠気に襲われる。昨日は8時間も眠ったのに、どうしちゃったのか。大嫌いな女と過ごすことで、体に不調をきたしたのかな。あいつは社会に生きていること自体が、不調の要因となりうる。
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