第20話 わがままモード500パーセントの病人

 若葉は学校を欠席。大事を取ったのか、熱がぶり返したのかはわからない。


 部屋をノックすると、若葉の元気のない声が聞こえる。


「は、はいっていいわよ」


 若葉はベッドで寝込んでいた。


「熱はどうなんだ」


「39℃くらいあるよ」


 朝は36℃まで下がった熱は、39℃まで上昇したのか。性格はわがままだけど、中身はポンコツさながらだ。


「氷のたっぷりと入った水を飲みたいんだけど・・・・・・」


「わかった。すぐに持ってくる」


 高熱を出したことで、人使いの荒さにさらに拍車がかかっている。病人でなかったら、顔面を10発、20発くらいは殴ってやるところだ。


「若葉、何か食べられそうか」


 若葉の耳は赤みを帯びる。看病に不満で、怒っているのかなと想像する。


「ぞ、雑炊を食べたいんだけど・・・・・・」


「わかった。スーパーに並んでいるものを買ってくる」


「手作りがいいんだけど・・・・・・」


 若葉のわがままを聞き、背中をぼりぼりとかいた。


「しょうがないな・・・・・・」


「塩分は任せるわ。勝の好きなようにして・・・・・・」


「塩分0で持ってくるから、塩を好きな量だけかけろ。その方がおいしく食べられるだろ」


 味付けの好みはそれぞれ異なる。好きなように食べさせてやるのが、食欲増進につながる。


「アイスクリーム、杏仁豆腐、寒天も食べたいんだけど・・・・・・」


 看病される立場なのに、何様のつもりなのか。そのようなことを思ったものの、希望をかなえてやることにした。


「わかった。わかった。病気が治るまでは、おまえの希望をかなえてやるよ」


 一刻も早く高熱をなおして、わがままをストップさせる。そのために、全力を尽くそうと思った。


 冬樹はこんなわがままな女を好きになった。その時点で、地獄直達の高速飛行機に乗り込んだようなもの。軌道修正を図っても、未来は明るくなるとは思えなかった。

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