第14話 傍にいてほしい(若葉編)

 雑炊を食べ終えると、体は少しだけ楽になった。


「しっかりと食べられたなら、問題はなさそうだな。十分な睡眠をとったら、二~三日で楽になるだろ」


 勝が部屋からいなくなろうとしたので、ストップをかける。


「もうちょっとだけ・・・・・・」


 勝は冷たい視線を向けてきた。


「浮気された女といるだけで、ストレス爆上がりなんだよ。二股をかけられたことは、どんなに時間をかけても消えることはない」


 二股をしなければ、楽しい生活を送れていた。安易な行動を取ったことを、大いに悔やんだ。


「40度の熱で苦しんでいるんだよ。今日くらいは優しくしてくれてもいいじゃない」


 40度の熱を引き合いに、譲歩を引き出していく。


「40度も熱があるなら、すぐに睡眠を取れよ。起きていたら、熱が下がるのは遅くなるぞ」


 論破しようとした女は、まっとうな意見で論破されてしまった。


「そ、そうかもしれないけど・・・・・・」


「おまえの部屋にいたら、熱をうつされる確率はアップする。看病をした挙句、熱を移されたらたまったものじゃないだろ」


 高熱を移したら、下がりようのない評価をさらに低下させる。若葉は付き添いを断念せざるを得なかった。


「わかった。すぐに眠るよ」


「見た目は頑丈そうなのに、中身はポンコツだったんだな」


「ポンコツってどういう意味・・・・・・」


 勝はどういうわけか、若葉の頭に手を当ててくる。熱とは異なる意味で、体は熱くなっていく。


「熱を下げるために、おでこを冷やしたほうがよさそうだな。冷たいタオルを持ってくるから、ちょっとだけ待っていろ」


「あ、ありがとう・・・・・・」


「交際しているときも、それくらい素直ならよかったのに」


 勝は部屋を出たあと、おでこに手を当てる。ひんやりとした感触からは、大いなる幸せに包まれる。


 40度の熱が出たのは最悪だったけど、大好きな人に看病してもらえた。生まれてから初めて、病気に感謝する。


 勝は十分ほどで、部屋に戻ってきた。 


「冷たいタオルを頭に当てておけ」


「あ、ありがとう・・・・・・」


「何かあったら呼んでくれ。こっちは宿題を済ませてくる」


 突然襲ってきた睡魔にあらがうことはできなかった。五分としないうちに、深い眠りについた。

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