第21話 あゆちゃんとにゃんこ
「「お嬢さんたちは5年の
ふたつのてるてる坊主は昔あたしたちが作ったことがあるてるてる坊主に似ていた。
「あゆちゃん・・・確か名前は晴子さんだっけ?」
「ゆあちゃん・・・照子さんもいたよね?」
突然会えなくなって寂しかったあゆちゃんに会えた。
「あゆちゃん・・・どこいってたの?呼んでも声が聞こえなくて不安だったよ」
「ゆあちゃん・・・ずっと一緒にいたよ?でも声が届かなくなっちゃったの」
晴子さんが話しかけてきた。
「お嬢さんたちは生まれてから最期の方までお互いを認識できていたのね。
大きくなっていくとね、片方は心の奥底にずっと居るんだけど、時々出てくることもあるんだけど、交代で出てくるからお互い忘れちゃうことが多いのよ。
結愛ちゃんはお姉ちゃんになって、一生懸命お勉強も頑張っていっぱい怒られちゃったり寂しかったり悲しかったから、あゆちゃんと助け合いながら生きてきたんだね。エライエライすごく頑張ったよ」
晴子さんはとても優しく頭の周りを撫でるようにフワフワしてくれた。
「あゆちゃん・・・ゆあがあゆちゃんのこと心の奥にしまっちゃったのかな」
「ゆあちゃん・・・ゆあちゃんがいっぱい怒られて泣きたい気持ちをね、あゆが全部持って隠れちゃったんだ・・・あゆちゃんの心の奥の方に。そうしないと泣いちゃいそうだったから」
照子さんも話してくれた。
「お嬢さんたちは大人から見たら『イマジナリーフレンド』とか『インナーチャイルド』と言われる事があるけどね。大人は忘れちゃってるのよ。いつか人生が終わる時には改めてもう一人の自分に再会出来るけど、誰だ?とかお互いに思うことが多いから、あなたたちの方が優秀ね。とってもとってもいい子さんたちね」
照子さんもあゆちゃんの頭を撫でるようにフワフワしてくれた。
「あゆちゃん・・・いっぱい褒められるの久しぶりだね」
「ゆあちゃん・・・いっぱい褒められるって嬉しいよね」
晴子さんがあたしたちに先に質問があれば言ってほしいと言ったから、
「「お母さんにはもう会えないの?お母さんに会いたい」」とふたりでお願いしたけど、
「お母さんを見る事は出来てもお嬢さんたちの事をお母さんが見る事が出来るかどうかは行ってみないと分からないね。もし見えたとしてもお母さんは怖がっちゃうかもしれないけどどうしたいかな?」
「ねぇ、あゆちゃん・・・あたしたちってオバケになっちゃったってことだよね?」
「うん、ゆあちゃん・・・オバケだね・・・それは怖がっちゃうよね。お母さん」
照子さんが他に質問がないかな?と聞いてくれたから、
「あたしたちは、ちゃんと出来なかったから死んじゃったの?」と聞くと、
照子さんは、
「それについてはマホウのお話をしようかな・・・まず、ゆあちゃんに晴子さんが与えたマホウは【諦めないで頑張るマホウ】いっぱい頑張れたもんね。いい子さんたちはちゃんと出来ていましたね」
晴子さんも、
「そうちゃんと出来たし頑張りすぎたくらいですよ。エライエライ。そしてあゆちゃんには照子さんが【困難を乗り切るマホウ】を与えたから最期まで頑張ってたんだけど、困難を乗り越えるためには心の中に辛さをあゆちゃんが持って行かないといけなかったね」
「あゆちゃん・・・ゆあの辛いの全部持っていてくれたの・・・ありがとう」
「ゆあちゃん・・・ゆあちゃんばっかり怒られて何もできなくて・・・ごめんね」
今までできなかったけど、ふたりでギュって抱きしめあった。
ふたりとも赤ちゃんの時のようにはもう泣けなくなっちゃったけど、抱きしめあって涙を流して「「一緒にいてくれてありがとう」」と言い合った。
死んじゃった理由については教えてくれなかった気がした。
「あたしたちのマホウは諦めないで頑張ることと、困難を乗り越えることなのになんで死んじゃったの?」と聞くと、
「それはにゃんこに聞くしかないわねぇ・・・そろそろそっちも話終わったかしら?」
黒いてるてる坊主をふたつつけたにゃんこは、大人の男の人たちに変身した。
「にゃんこ人間だったんだ・・・・あゆちゃん」
「知らなかったね・・・ゆあちゃん」
そっくりな男の人たちは、
「僕もさっきまで忘れてたんだよ・・・今は分かる僕たちが誰で君たちが誰なのか」
「君たちは僕たちが血で結ぶ
あたしたちを死なせたのは、この元にゃんこ・・・。
「なんで?どうしてそんなことするの?お母さんにもう会えなくなっちゃったじゃない」
「血で結ぶ
おじさんたちは優しく答えてくれた。
「僕たちは君たちの本当のお父さんなんだよ・・・君たちがお母さんのお腹に入ってすぐに事故で死んじゃってね・・・今は黒いけど死んじゃった時には白いてるてる坊主が君たちみたいにふたつ僕の前に現れたんだ」
「僕たちは何個かの選択肢を与えられてね・・・その中からそれぞれ選んでいいよという事になったんだけど、君たちと同じで何がなんだか分からなくて、しばらく君のお母さんを見ていたんだよ」
おじさんたちがお父さん?じゃああのお父さんは誰だったんだろう?
「ああ、ごめんね。君たちには聞かされてなかったもんね。混乱させちゃったかな・・・お母さんは僕たちが死んじゃった後に一人で子供を育てられるか分からなくて相談した相手が君たちが知ってるお父さんなんだよ」
「お母さんは僕たちと結婚していたんだけど僕たちが死んでしまって、あのお父さんが落ち込んだお母さんに優しくして、お母さんも君たちの知っているお父さんの事が好きになってね、再婚したんだよ・・・でもまさかあんな男だとは思わなくて君たちが産まれて、初めて首を絞められた時に僕たちは、ただ見ている事をやめてふたりとも同じ選択をしたんだ」
黒いてるてる坊主たちが話し始めた。
「人生は特殊な条件がない限り一回キリなんだけどな・・・こいつらは人間にしろと五月蠅くて、出来ないって言っても聞かなくて、本来
「
あのお勉強を教えてくれたお父さんはあたしたちを殺そうとしていたんだ。
「あゆちゃん・・・お母さんは、幸助は大丈夫かな?」
「ゆあちゃん・・・どうしよう誰がお母さんと幸助を守ってくれるのかな?」
晴子さんが、
「じゃあこの後の事をお話ししましょうね。
まず、この先お嬢さんたちにはそれぞれに選択肢がありますよ。
ーー壱に記憶を持ってこの世界に漂う事が出来ます。制限時間はありません。
まぁ、オバケになれるってことだね。
ーー弐に記憶をある条件をクリアするまでお預かりして誰かのお守(オモリ)として人間ではない生き物に転生して縁があれば大事な誰かを守ってあげる事が出来ます。
お嬢さんたちの本当のお父さんが選んだのはこれだね。
ーー参に産まれる事は最初からできないと決まっていますが、誰かのお腹に宿ることは出来ます。女性の肉体で尚且つ子宮がある人に限られて、みんな一度は望むから先に言っておきますね。
同じお腹には一度しか宿ることは出来ないから、お母さんのお腹には宿ることは当然できませんよ。
ゆあちゃんもあゆちゃんも、それぞれどの選択肢をいつ決めてもいいですよ」
ふたりで「「じゃあ2でお母さんを」」と言ったら本当のお父さんが、
「待って、ふたりとも、僕たちが君たちに会えたのだってかなり奇跡だったし、結局最期の方でしか会えなかったんだよ・・・僕たちは君たちを守りたくて君たちが今選ぼうとしている選択肢を選んだけど、結局辛い想いばかりさせて何にもしてあげられなかったんだよ」
「君たちはお母さんにいつ会えるか分からないけど何回も繰り返して会うまでにお母さんたちはずっと辛いことがあるかもしれない、記憶もないままふたりで僕たちと同じような選択はしない方がいいよ」
と言う。
「でも、それじゃあのお父さんにお母さんが殺されちゃう・・・」
すると、黒いてるてる坊主たちが、
「あいつはにゃんこであるこいつらを殺した。悪意を持って殺した。慈悲のかけらもない奴だから俺たちは黒いてるてる坊主になったんだ。」
「俺たちはあいつにこれから憑いてマホウを与えてやるんだ・・・人生が辛くなるようなマホウをふたつね・・・それはもう決めてある教えてやろうか?」と言う。
「う、うん。教えて」と言うと、
「あいつには【今いる家族に二度と会えなくなるマホウ】と【簡単に死ねなくなるマホウ】を与えてやるんだ・・・だから君たちのお母さんも弟もあいつとはすぐに離れ離れになるだろう・・・安心しろ」
「あゆちゃん・・・ちょっとだけホッとしたね」
「ありがとう黒いから・・・何て名前にしようか?ゆあちゃん」
「そうだね・・・雲助とか・・・」
「いいね・・・もう一個は雨蔵にしよう」
「「雲助・・・雨蔵・・・お母さんと幸助を助けてくれてありがとう」」
雲助と雨蔵はなんだか照れたように消えていった。
晴子さんと照子さんが、
「では、ゆあちゃん、あゆちゃん本当にいっぱい頑張りました。花丸で200点満点でしたよ。本当にエライエライ・・・ここでバトンタッチですね」
すると本当のお父さんは白いてるてる坊主になって答えた。
「これからは僕たちが娘たちを守り続けます。今まで守っていてくださってありがとうございました晴子さん、照子さんチェンジありがとうございます」
晴子さんと照子さんはあたしたちをいっぱい撫でて消えていった。
「「ここからは僕たちが君たちのてるてるだよ。今までちゃんと守ってあげられなくてごめんね・・・愛してるよ」」
「あゆちゃん・・・お父さんたちにも名前つけよう」
「そうだね・・・ゆっくりつけようか、ゆあちゃん」
お父さんてるてるたちは、あたしたちとしばらくオバケをやりながら色んな人の人生を見て回ることにした。
助けてあげたい人たちを助ける方法がきっとあるはずだから。
「結愛って名前はね・・・お母さんが僕たちとの愛を結んでくれた子って意味で感謝の気持ちでいっぱいでつけたんだよ・・・産まれてきてくれてありがとう」
そうお父さんてるてるたちは言って撫でてくれた。
さぁ、狭い箱の中から飛び出して広い世界を一緒に見よう。
「ねぇ、ゆあちゃん今日も一緒だからね」
「うん、あゆちゃんが居れば大丈夫」
「あ、お父さんたちもいたね」
「そうだったね・・・うふふ」
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