第5話 新たな日常

 そしてまたやってくる月曜日。


 眠い目をこすりながら、顔を洗い、納豆と白ご飯を交互に食べ、急いで登校する。


 日曜日の晩は基本良く眠れないので、余計に月曜日が辛くなる悪循環が俺の中で毎週確立されてる所がある。辛い。


 白椿と学校では今後どうするかについては昨日メッセージを送り合って決めた。


『明日ですけど、私たちの関係はひとまず秘密にしておきましょう』

『まあ、だよな』

『友達とは言っても、バレて先輩がどうこう言われるのも私は嫌ですし』

『あと嫉妬とか怖いしな』

『ですです。でも、万が一バレて、私のせいで先輩に危害が及ぶようなら、私が直々に怒ってあげますから大丈夫ですよ』

『いや、それは俺も大丈夫。申し訳無いし』

『そうですか......まあ先輩のせいなら先輩に頑張って貰いますけど』

『それは言われなくてもそうする。でも、基本はバレない感じで。放課後会う時は人目の少ない所で、って感じにしよう』

『ですね。そうしましょう』

『了解』


 そんな感じで、割と早く方針は決まった。

 

 自転車を数分漕ぐと、俺の通う高校が見えてくる。


===


 白椿とは学年が違うので別れ、俺は自分の教室に入る。


「お、真木じゃんおはよ」


 この、俺を見て早々に挨拶をしてきた男は、クラスメイトの雨野。


 特別仲がいい訳では無いけどよく話す、位の間柄だ。


「おはよう」

「で、なんだけど。お前彼女できた?」


 え。表情が固まってしまう。


「土曜日に真木が女子と歩いてるところを見て、俺もあれ? って思ってさ。あれ、多分白椿さんだよな」

「……どう思ってる?」

「別にいいんじゃねえの? 真木、顔は別に悪くないし。普通に悪いやつでもないし。全然俺は応援する」

「ありがとう。あと、あんまり他のやつがには言わないでいてくれると助かる」

「了解」


===


 そして放課後、まあ、今日は特に予定がないので速攻帰るとしよう。


 スマホの着信音が鳴る。昨日ぶりの白椿からのメッセージだ。


『今日は予定あるので遊べません。明日会えますか?』

『明日も暇だからいいけど』

『良かったです。怖いので今度は駅から離れた所に集合しましょう。やってみたかったことがあるので』


 やっぱり、何だか付き合ってるみたいだなと思う。


「真木くん」


 女子の声だ。それも白椿より少し低いハスキーな。


 見遣ると、中学の時からの俺の部活の先輩で、かつての部長である雪宮結ゆきみやゆいだ。


 同時に白椿にとっても二つ上の先輩でもある。


「どうしたんですか? 久しぶりに」

「真木くんに、茜ちゃんのことで聞きたいことがあってね。」


 茜は白椿の下の名前だ。


「……見たんですか。言っときますけど付き合ってないですよ」

「うん。たまたま駅前のカフェで2人でいるところを見てね。ま、茜ちゃんの性格的に付き合っては無いだろうなーとは思ったけど、万一ってこともあるし一応聞きたくてね」


 万一、か。確かに、雪宮結は昔からそういう人だ。


 いつだって、自分の決めた事に従って場を上手くまとめようとする。だから彼女はリーダーに向いている、と思う。


「大丈夫ですよ。今は俺なりに白椿を尊重したいと思ってますし」

「ふふ。真木くんからその言葉を聞けて良かった。でも、ちゃんと茜ちゃんのことは大切にしなよ? 何かあったら私も相談に乗るしね」

「助かります」


 同性であることもあって、俺よりも雪宮の方が白椿と一緒にいた時間は長い。


 いざと言う時は相談に乗らせてもらおう。

 

「じゃあね、応援してるから」


 それだけ話して雪宮とは別れた。

 

 土曜日に白椿といる所を見られたのが雨野と雪宮だったのは幸いだったな、と思う。


 彼らは、人にそういう事を言いふらすようなことをしない人達だから。


 ともあれ、穏便に済みそうでよかった。


 明日の白椿の用とは何だろうか、と内心ワクワクしている俺が居ることに気づいた。


 でも今日はなんか気疲れしたしマジで帰ろうと思います……


===


 翌日の放課後。俺たちは他の生徒に見つからなそうな場所で再び待ち合わせた。

 

「先輩、なんか会うの久しぶりな気がします」

「白椿も、今日は遅れなかったんだな」

「大事な用事なので」

「で、用事ってなんだ?」

「先輩を私の家に招きます!」


 ……なんか展開早くない?

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