学園カーストトップの異世界帰りの聖女様を助けて死にかけたら、強制的に恋人になる魔法のキスで蘇生されました~皆に隠れて毎日イチャラブしながら迫る危機は捻じ伏せます~
第29話 ミーアの憂鬱と血の集会〈ミーア視点含む〉
第29話 ミーアの憂鬱と血の集会〈ミーア視点含む〉
〈ミーア視点〉
景太たちが学校へ向かっている頃、ミーアは清純学園の一年D組の自分の席でイライラを募らせていた。いつもにこやかで陽キャで通っているミーアであるが、その面影はなく頬杖をついて貧乏ゆすり。
その原因は【
ミーアは景太達と接触する前に【絶対魅了】を掛けた
調査班から上がって来た内容では、勇者と聖女には隙がないうえに性別も同じで、自分の特性を活かすことができないと思っていたが、最近生徒会に入った平凡な容姿で童貞臭が出ている景太を見て勝利を確信していた。
――この程度の男なら、異世界にゴロゴロいたし、私の【絶対魅了】でイチコロ。
魅了した後にピーな行為を致し、襲われたと被害者を装い、サディに通報すれば速攻で生徒会を潰すきっかけが作れると思っていた。
だが――、煽情的な態度で散々景太の心を散々揺さぶった後、魅了の眼を発動して 三秒間見つめたはずなのに景太は落ちなかった。
――こんなことってあり得る?
異世界では【絶対魅了】を使って落ちない男はいなかった。
そのミーアが初めて男を逃がした。
ミーアの心の中はズタズタに引き裂かれ、屈辱的な敗北がミーアの脳に刻み込まれていた。
――でも、あの感覚は……魔法よね
ミーアは自分の右手にした黒い手袋を見つめた。
景太に触れた時、苦手な聖魔法の力が自分にも流れていた。聖魔法が自分にも流れたことにより、景太に触れた手は誘惑してから三日も経った今でも火傷で
ミーアはその傷を見つめて、またイライラが募る。
その傷は自分の女としての価値を著しく下げるためだ。
――まさか、聖女の加護を受けている? 勇者と聖女がいる生徒会メンバーに選ばれるくらいだし、そのくらいはあり得そうね。本当に迂闊だったわ。
ミーアは爪を噛んで悔しがる。
だがしかしだ。景太が聖女に守られているとなると、【絶対魅了】で景太を落とすことは難しくなる。だが、サディの命令を遂行するためにも次なる手を打たなければならない。
「身躾、ここの問題を解いてみろ」
一年生学年主任であり、数学教師である――御子柴がミーアに問題を解くように命令した。
ミーアのペットの情報筋から、御子柴は生徒からの評判がクソ悪かった。
自分の教育に陶酔し、教育方針にそぐわない生徒は授業中に分からない問題を解くように仕向け、解けなかったら人格否定のような罵声を浴びせる時代錯誤も甚だしい教師だった。
さらに写真部の顧問であり、天音遥の密かなファンであり、何やら良くない黒い噂も耳にしていた。
ミーアは御子柴を見て、ため息をつく。
ミーアは身躾瑠奈になって以来、人間の授業には全く興味がなかったため、教科書の類を学校に持ってこない問題児となっており、今日も机とロッカーの中はすっからかんだし、黒板に書かれた高一では解けそうにもない問題にも鼻くそ食らえと思っていた。
「どうした、
怒鳴る御子柴を見て思う。
――人間の分際で私に命令するなっつーの。私に命令をしていいのはサディ様だけなんだけど。 ミーアはぶすっとした顔でそっぽを向いたが――。
「
あぁ、煩すぎるし、ウザすぎる。
昨日からの敗北に続き、ミーアのイライラは頂点に達しようとしていた。
「おい、聞いているのか‼ 先生を無視するなぁ!」
御子柴が黒板を叩いた。それに合わせてクラスの皆も肩をびくりと震わせる。
怯えたクラスメイト達がミーアを見た。
無視をしようとしたミーアであったが、こうなると御子柴は生徒を教育という名の免罪符を掲げて粘着質に追い込み続けるので、場の空気が非常に悪くなる。
――仕方ないわねぇ……。
「はーい。すみませんでしたー」
ミーアは手を上げ、教師の元まで行くと、【絶対魅了】の眼を発動させ教師の瞳を見る。
「せんせ、私の前で犬みたいにお座りして」
そう、煩わしい男は従順なペットにすればいい。
「な、何を言っているんだ……」
当惑した御子柴だったが、数秒後にはミーアの前に跪き、「きゃうん!」と声をあげて犬のように息を荒くしたままお座りをした。
「よくできましたー!」
ぱちぱちとミーアは手を叩き、賞賛する。
「この後は分かるよね?」
「きゃうきゃう‼」
お手とおかわりと〇んちんを披露した。
「すごいすごーい!」
【絶対魅了】の力は圧倒的だった。人間を掌握することなど容易だ。
これがミーアの望んでいた状況だった。
犬になっていたのは御子柴ではない景太の予定だったのだ。
聖女に守られていたとはいえ、男を堕とせないというのはミーアにとって最上級の屈辱だった。
――ちょうど良いわ。このクズ教師を利用して、聖女を追い詰め、あの男を私の犬にする。
「せんせ、瑠奈のお願いを聞いてくれたらご褒美上げるけどどうする?」
「きゃ、きゃ、きゃうん!」
御子柴は全力で首を縦に振った。
ミーアは教師の頭を撫でながら、ぼそっと教師の耳元で囁く。
「可愛い子。じゃあ、今夜私と良いことしよ? だからね。これから先生のために私も準備しないといけないから、授業は自習にしてくれる?」
「きゃ、きゃうん‼」
御子柴はとびっきりに嬉しい顔をした後、犬になったまま、教科書を口に加えたまま四足で走り去っていった。
授業が急に中断してしまったことにクラスメイトは戸惑ったが、つまらない恐怖の授業が終わったことに安堵したのが大半で、ミーアは催眠術で御子柴を操り、授業を無くしてくれたと賞賛された。
だが、ミーアにとってはそんなことどうでも良かった。
「私に振り向かない男とか絶対に許せないから……」
ミーアは歯を食いしばり、この屈辱感を晴らすために景太を何としても堕とすことを誓うのだった。
☆
〈景太視点〉
遥との二度目の休日を迎えていた。
今日もイチャラブできるかと思っていたが、メイド班の実技練習ということで、俺たちは身躾さんの自宅に招待されていた。
今、男女含め総勢三十七名+眼鏡君のメイド班がM区にあるタワマンの最上階にいる。
その部屋は大人数でパーティーをやれるほど広く、見晴らしも凄く良い。
タワマン最上階全てが自分の家というのだから、身躾グッドスマイルカンパニーの社長令嬢っていうのは伊達じゃないと思った。
だが、当の身躾さんはなぜか不機嫌な顔をしていた。
可愛い顔が台無しなほどにとびきりの不機嫌だ。
声をかけるのも憚られるほどだ。
そういえば、身躾さんに誘惑をされて以来、身躾さんは妙に大人しい。
誘惑をされて以来、遥が警戒して学校にいる時は常に俺の隣にいるということもあるが、見かけは普通のエッチな後輩だ。
まぁ、静かにしてくれているならそれでいいけど。
だがしかし、今日は今まで見たこともないほど不機嫌だった。
恐らく、不機嫌の理由は何となくだが――。
「全く、瑠奈嬢には頭が上がらないよ。僕と君のためにこんな素敵な場所を用意してくれるなんて……ねっ!」
金髪の美形のウェーブヘアの帰国子女の青年。同じクラスであだ名は王子。謎にワイシャツの襟を立てて格好つけるから、そう呼ばれている。美形ゆえに女装メイドに選ばれた一人である。
王子は身躾さんの手を取り、その手の甲にキスをして言う。
「瑠奈嬢、君は月よりも、いいやこの銀河の、いいや、宇宙の何よりも美しい。そして、僕に相応しい人だ」
「あはっ。キモ過ぎるんですけどー」
ふぁっさ~と王子の金髪が色褪せ抜けていく。
だが――。
「ふっ。瑠奈嬢は照れ屋さんだな。恥ずかしがらずに素直になればいいのに。だが、そんな罵倒する言葉を僕に吐く君も素敵さ! 僕はめげない! そして、必ず君のハートを射抜いてみせる!」
すぐにメンタルを持ち直した王子は前髪を弾き、右手でピストルのポーズを作って身躾さんにバキューンと打つ。
「……バン」
周りの女子もドン引きだった。
正直男としても痛々しい。王子にもパートナーがいるのに、他の女子に現を抜かすとかチームワークもあったもんじゃない。
王子のペアは三つ編みツインテールの一年生の子であり、隅っ子で誰とも関わらないようにメイド服の裁縫を続けていた。
本当に王子のパートナーが可哀想だ。
身躾さんに対する王子の付きまといが酷いため、眼鏡君が仲裁に入っていた。
そんな三人を置いといて、他の皆は男女ペアになり、メイクやら所作やらを女子から教えられていた。
俺も遥にメイクを施されている最中だった。
一通りメイクを終えると、男顔が女顔に変身を遂げる。
「メイクって凄いな、別人だ」
遥は俺を見て言葉を失っていた。
「どうした?」
「自分でメイクを施しておいてなんですが、こーいう景太も良いなって思っちゃいました」
パァッと遥の頬が赤く染まる。
「え、あ、う、うん。ありがと‼」
こういうのって見た目が女になった俺も好きってことなのか?
それとも恋人の違う一面が見れてドキっとしたということか?
恐らく後者に違いないだろう。
ウィッグもつけると、完璧な女だった。俺にこんな才能があったとは……。
そして、一通り接客の練習やらを終えたら昼時になっていた。
身躾さんが、セレブが食べるという高級弁当を注文してくれていたらしく、来るまで
「ふっ。僕が出よう」
気が利く男を身躾さんに魅せつけたいのか、颯爽と王子が玄関の方に向かう。
他の女子たちは台所で食後のデザートを切っていた。
「ちょっと男子ー、女子にだけ仕事させないでよね!」
と女子側から圧力がかかり、男子たちは顔を見合わせてとぼとぼとデザート作りを手伝う。
女子は怒っているように見えたが、意外とパートナーと話したかったらしく賑やかで和やかな空気が流れる。こういう文化祭の準備だったら俺も参加しているだけで楽しくなってくるな。
俺も遥と一緒にデザート作りに取り掛かる。
「てか、王子遅くない?」
「確かに」
「どうせまた調子乗ってやらかしているんじゃないの?」
「あり得るな」
「てか、一人で全員分の弁当運べないでしょ。誰か手伝ってあげなよー」
「そうだな。ちょっと俺、見てくるわ」
リビングの入口近くにいた一人の男子が玄関の方に向かった。
だが――、数秒後。
「み、みんな、早く逃げ――がはっ!」
王子の様子を見に行った男子が軽快に吹っ飛んでリビングに倒れた。
何事が起こったのか、一瞬の出来事に皆言葉を失っていたら、ずるずると何かを引きずる音が聞こえる。
その正体は――。
頭から血を流している王子のワイシャツの首根っこを掴み、金属バッドを片手に持ち、デリバリーの服を着た一年の学年主任の先生――、御子柴だった。
御子柴がにちゃりと笑って言う。
「貴様らが不純な集会を開いているというから指導しに来てやったぞ‼」
賑やかな文化祭の集まりが、一転して血の集会に変わった瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます