学園カーストトップの異世界帰りの聖女様を助けて死にかけたら、強制的に恋人になる魔法のキスで蘇生されました~皆に隠れて毎日イチャラブしながら迫る危機は捻じ伏せます~
第26話 (R)キスマークと休日のおでかけ
第26話 (R)キスマークと休日のおでかけ
その夜、命令が下った。
【お互いのパートナにキスマークをつけなさい】
ちょうど、夕飯を終えお風呂も入り終わったところで、遥と一緒にDVDを見ていた際のことだった。ミミは既に布団で大の字になってすやすやと寝ており、タイミングとしては絶妙だった。
だが、命令がキスマークとは……。
ど、どこにつければ良いのだろうか。
遥は今Tシャツと短パン一枚だ。
首元、鎖骨、胸元、太腿、お腹……そんなところが場所の候補になる。
当然、首元や鎖骨は学園でバレる。
『天音様の首元に、鎖骨に、キスマークが! 誰だ、付けた奴は! 探し出して殺せ!』
みたいなことにきっとなるだろう。
いや、治安悪過ぎかよ。
でも、あらゆる可能性を考えて、普段は見えない所にするのがベストか。
となると、お腹……、太腿、あたりか?
「あの……、私が場所を指定しても良いですか?」
「い、良いけど……、どこにする?」
「…………胸に」
「えっ⁉ 良いの⁉」
「はい」
こくりと遥が頷いた。
やっぱり胸元だと隠れるからとかそういう理由だろうか。
照れた様子で俺の手を握って言った。
「私……、景太に独占されたいし、独占したいです」
「――――っ!」
正直で愚直で純粋過ぎる想いだった。
性なる守護の魔法だけではない。
自分でも恋人を守るための印をつけて貰いたいし、つけたいのだ。
「ダメですか?」
そんなことを彼女に求められて断る彼氏なんていないだろう。
「分かった」
俺たちはお互いに上着を脱ぐ。
すると、水色のフリルの付いたブラをした遥が姿を現し、お風呂上りだからほんのり肌に赤味が出ている。
「……可愛い」
「景太にそう言われるの凄く嬉しいです」
ポロっと出た言葉に遥が頬を赤く染めて俯く。
「……お願いします」
遥が俺に近づく。
目の前には遥の豊かな胸と谷間があった。
俺は左の胸にキスをする。
「んっ」
遥がピクリと体を震わせ、甘い声を上げたが、キスだけではキスマークはつかなかった。
当たり前だ。
唇だけでつくわけがない。
なら、どうする?
吸うしかない。
俺はキュッと口をすぼめ、吸う。
「――――っぁ」
何かを
何回か繰り返すとと、遥の胸元に薄っすらと赤くキスマークがついた。
でも、これではだめだ。
すぐに消えてしまう。
そんな想いが俺を突き動かした。
「ぁっ……ぁぁっ!」
優しく遥の胸に甘噛みをして、吸い上げる。
唇を放すと、赤いキスマークが遥の胸につけられていた。
遥を見ると、少し息を荒くしてほんのりと顔を赤く染めていた。
そして、俺の胸に体を寄せて、上目遣いで俺を見る。
「じゃあ……、今度は私の番ですね?」
遥の唇が胸に触れる。
しっとりと舌で心臓辺りを濡らした後。
熱く、強く、俺がやったのと同じように、数回甘噛みし俺の肌を吸うようにキュッと口をすぼめる。
そして、俺より長く、入念に、ねっとりとキスマークがつくように施す。
ピリッとした感覚が脳を突き抜けた。
「……できました」
遥がそう言うと、パチリと命令が消えた。
だが、キスマークをつけた甘い余韻がリビングに漂う。
お互いに見つめ合い、顔が熱くなる。
手を合わせたまま、横座りになり、遥が俺の肩に頭を乗せてその時間を噛み締める。
しばらくして、遥は自分につけられたキスマークを触り――、顔を綻ばせた。
そして、遥が俺のキスマークに手を触れる。
「私たちだけの秘密の印です」
「そうだね」
「どんな形であれ、やっぱり好きな人に触れてもらえるのは幸せです。本当はもっと……」
そんなことを言われて俺も急激に頭の中の温度が上がっていくのが分かった。
【魔法を授けます。これで何かあった時、お互いに連絡を取りなさい。さらに集中すればさらなる力を開放できます】
と急に魔法の取得の知らせが届いた。
「また魔法を取得したみたいだね。次は何だろうか……」
『多分、パートナー同士で念波を送れるようになったかもしれません』
遥の声が頭に響く。
なるほど、テレパシーみたいなものか。
『近々、どのくらいの距離まで使えるのか試した方が良いね』
『そうですね。名付けて聖なる念波――
また、急に厨二が過ぎる遥であったが、その笑顔に心が安らぐ。
事あることに遥との絆が深まっていく。
そんな気がした。
☆
遥と付き合い始めて初めての休日はピクニックデートをすることにした。
朝起きて、一緒にお昼ご飯を作った後、軽い朝食を挟んで家を出る。
ミミも猫耳を隠すためにベレー帽を被り、尻尾はスカートの内側にしまうようにさせた。
服は天音さんの子供の頃のおさがりらしい。
家の外に出ると、気持ちのいい日差しが顔を出していた。
絶好のピクニック日和である。
ミミも俺の隣でグーッと背伸びをして気持ちが良さそうだ。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
遥もキスマークの一件から妙にご機嫌である。
二人でミミの手を引きながら、バスに乗った。
目的地は駅前から電車でニ時間ほどの所にある。
電車に乗り、三十分もすれば建物の背が低くなって、田園風景が見えてきた。
「おー、はーやーい!」
ミミは対面の座席に靴を脱いで立ったまま、外を眺める。
子猫が電車に乗って外を見る機会なんてあんまりないだろうし、物珍しくて堪らないのだろう。
だが、興奮気味なのかお尻部分がうにょうにょと動いており、若干ハラハラしてしまう。
「ミミ、危ないよ」
「お外見たいの!」
「じゃあ、ママと一緒に見ましょうね」
遥がミミのことを抱き抱えて、膝の上に座らせてあげた。
「うん、見る!」
にま~っと満面の笑顔。頬から餅でも取れるんじゃないかと思うくらい極上だ。
遥がミミを上手く抱き抱えるようにしており、尻尾が隠れる。
まぁ、これなら問題ないかな。
遥がクイズ形式で「あれは何かな?」と問題を出すと、「ひこうき!」「とりさん!」「おやま!」「おさかな!」と窓の外を指さす。
「魚はないだろ」
「そんなことないよ? ほら!」
ミミが指さした先には魚の形をした雲が浮かんでいた。
「確かにあれは魚だわ」
「でしょー?」
むふっと勝ち誇ったような顔をミミにされたが、可愛いから良しとする。
「ミミは色々知っているんだねぇ。凄いね! 物知りで偉い、偉い」
「うん、ママ好きー!」
ミミは遥の胸に顔を埋めた。
ミミは好奇心旺盛で本当に可愛い。
人になって知能が上がったのか、元々頭が良いのか、ご飯を食べ終わったら遥と一緒にテレビや動画を見ている。
つい先日はマグロ漁船の特集を齧り付くように見ていたからな。
そこで魚を覚えたのかもしれない。
俺は遥とミミがリズミカルに小さく振り子のように揺れながら、同じ歌を小さく口ずさむの見ながら目的地までの時を過ごした。
☆
T駅、県立K記念公園。だだっ広い敷地にアスレチック施設や子供用の遊具、動物との触れ合い広場があり、サイクリングやランニングなども楽しめる地元民にとっては憩いの場らしい。
なぜ俺が見知らぬ土地に詳しいのかというと、遥の出身がT駅の近くらしく、遥の地元なのだ。
そういえば、遥は独り暮らしをしているって言っていたな。
付き合ってからミミのこともあってか、毎日俺の家に泊まっており半ば同棲しているようなものだ。
実家に行く機会があれば、菓子折りを持って挨拶しにいかないといけないと思った。
俺たちは入口付近のアイスクリーム屋でアイスクリームを三つ購入して、公園内を散策する。
土日ということもあって、家族連れやカップルが多く賑やかな雰囲気だ。
俺たちはどう見えているのだろうか……。
恋人には見えるだろうけど……。
「パパ、ママ! ミミ、あそこに行ってくる!」
アイスクリームを食べ終わったミミがその場で足踏みしながら、大きなトランポリンを指さした。ミミと同じくらいの子たちが元気にはしゃいでいるが見える。
「気をつけて、あまり力を使わないようにな」
「うん!」
ミミは駆けていくと、トランポリンの中心に行き、ぴょんぴょんと跳ねる。まぁ、力を抑えているとはいえ、体操選手並の跳躍力を見せており、周りの子供たちの注目を集めていた。
そして、くるりとベレー帽を押さえて空中で一回転して着地。
「パパ、ママ! どう⁉」
と俺たちの方へ向かってVサインを向けた。
拍手が上がり、周りの子供たちから賞賛の眼を向けられるミミ。
「お子さん凄いですね。まだ、お父さんとお母さんはこんなに若いのに」
「えっ」
「どんなご教育をされたらあんなことができるようになるんですか?」
「あっと」
俺たちも周りにいた親御さんの注目を浴びる。
「あ、あははは……、ありがとうございます。ウチの娘は昔から運動神経が良くて……」
「あら、じゃあ、将来はオリンピック選手かしら、楽しみねぇ」
いや、本気だしたら軽く十回転くらいできると思いますけどね。
そんなこと言ったら変人扱いされてしまうので言わないけれど。
そっか、ウチの娘か。
ミミにはいるはずの両親がいないのだ。俺たちのことをパパとママと呼ぶのも本当の親だと思っているから……なのかもしれない
ミミが寂しくならないように一緒にいてあげたいと思う。
「お父さん、お母さん……」
ボソッと遥が呟いた。
「どうかした?」
「あ、いえ。昔、ミミちゃんと同じことを私もしたなぁと思い出しまして。当然、ミミちゃんみたいに一回転なんてできませんでしたけど、両親に見てもらいたくて……」
少し遥が落ち込んだ顔をしたが――。
「ママ~‼」
トランポリンに飽きたミミがトコトコと走って来て、遥の足に抱きつく。
自分の頬を遥に擦り付ける。まるで子猫がマーキングするみたいではあるが、本当に甘えたがりな娘である。
「すきぃ!」
「はい、私もです」
仲睦まじい二人を見ていたら、こっちも幸せになってしまった。
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