クラスの構図
中間テストというイベントは実にあっさりと終わった。
ついでに言うと俺も終わった。いつもより勉強したと思うがまた平均前後の出来だろう。
それは一つずつ返される答案を見れば瞭然だった。
担当教官が学年の平均点、クラスの平均点、学年の最高得点、クラスの最高得点をわざわざ言う。教えてくれなくても良いのにそれで自分が平均前後だと知ることになるのだ。
俺たちのクラス――二年E組はおそらくは学年では真ん中あたりの成績だろう。クラスの平均点が学年全体の平均点とほぼ同じだった。
ちなみにクラスの最高得点は科目ごとだと
二枚目三枚目の両刀使いである
学級委員の二人――
中休み。前の席の
「五十位以内に入らないと
「あいつと争っているのか?」
「名手よりも上の成績になることが求められている」
「どっちが上かの勝負じゃないのか」
「あいつの頭の中で俺のあるべき姿というものがあって、
ここでも設定という言葉が使われる。俺たちは学園ものアニメのキャラか。
――て言うか、門藤って
「なあ――」俺は声を潜めて以前から気になっていたことを訊いた。「なんでみんなあいつのシナリオ通りに動くんだ?」
あいつとはもちろん名手のことだ。
門藤はこれ以上できないくらい渋い顔をして言った。
「みんなたいてい何か大っぴらにしたくない秘めごとを抱えている。いやそんなに大袈裟に秘密というほどでもないがそれでやかましく騒がれたり煽られたりしたら面倒というか困惑することだ。あいつはそういうものを嗅ぎ付けるスキルが桁外れにあるんだ」
「弱みを握られて脅されているのか?」なんて悪女だ。
「いや脅している訳ではない。あいつが厄介なのは本当に悪気がないところだ。あいつは秘密を嗅ぎ付けるとそれに共感し同情し過ぎるあまりに協力しようとしてくる。非常に迷惑なお節介だ。俺と
「――俺は優秀な学級委員。
「俺たちだけではない。おそらくは新聞部の
「え?」
「伊沢は更なる情報収集のための手駒にされているし、古織は名手のことを見て見ぬふりだ」
「それは……」厄介で面倒くさいな。
「だから誰もあいつに逆らえない」
「
「樋笠は単に面白くてやっているだけだろ。あいつも自由人だ」
「そうなんだ」
「だから何か秘密めいたことがあっても絶対に知られるなよ。舞台劇の役者として操られるぞ」マジ?
俺と
――って、
大丈夫なのか?
俺は体中に冷や汗を感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます