新年度初登校
新年度始業式の日になった。高校二年生の始まりだ。
俺と
「行ってらっしゃい。仲良くね」こどもかよ!
「うん」と日葵は俺の腕に手を通して来た。
それを微笑ましく見る愛子さん。
もし俺たちが付き合うようになったとしても認めるだろう。親父とは明らかに態度が違う。
すでに出勤してこの場にいない親父はことあるごとに俺に釘を刺す。
「日葵ちゃんはお前の妹だからな。勘違いするなよ!」
するかよ!
幼馴染みの期間が長かっただけに俺にはそれ以上の感覚はなかった。
日葵は日葵だ。ただその存在が俺を惑わす。家にいる時の日葵はあまりにも目に毒過ぎた。
家を出て、人通りが多い駅までの道を歩く頃には二人は離れる。
それでも知らない人には高校生のカップルに見えるかもしれない。
俺も日葵もお喋りなタイプではないから歩きながら話すことはあまりない。
俺たちはたとえ一言も話さなくても気を遣わない仲だった。
そして電車に乗り十五分もして学校最寄駅に着く。ここからは同じ高校の制服姿で溢れる。
俺と日葵もそれに紛れ、やがて離れて行くのだ。
再び顔を合わせたのは校舎入口に貼り出されたクラス表の前だった。
二年生になっても俺と日葵は別クラスだった。一学年八クラスもあるからな。
俺は二年E組、日葵はF組になった。
日葵の顔が不服そうに見えたのは気のせいか。
家でも学校でもずっと近くにいるというのも何だな。俺は少しほっとしていた。
体育館で始業式を行ったあと俺たちはそれぞれの教室に向かった。
今年度から高等部入学生と中高一貫生とが半々に混じった混合クラスになる。
といって高等部入学生の俺にとっては高等部入学生なのか中高一貫生なのかの区別は簡単にはつかない。そういうのが判断できるのはここに長く通う中高一貫生だけだろう。
二年E組には何人か顔見知りはいたが馴染みの顔はなかった。
三十八名のうち男子は十四名だ。元女子校だったこともあり今でも男子の方が少ない。四割程度なのだ。
その男子の中に知り合いはいなかった。馴染むのに時間がかかる俺はしばらくボッチ生活になりそうだ。
担任が教壇に立った。
この学園には若くて美人の先生が多かった。
ただし、清楚で清純な先生が多い中、古織は異質だった。
凹凸のはっきりとした体を隠しもしないスタイル。スリットの入ったタイトスカートに黒タイツ。一応スーツ姿でシャツのボタンもしっかりとめてはいるが前屈みになると胸の深い谷間が見え、男子生徒にとっては刺激が強すぎる。他の清楚系女性教師がゆるふわワンピースを着たりしているのとは対照的だ。
その古織がホームルームを始めた。まずは席決めと学級委員をはじめとする各種委員の選出だ。
俺は目立たないように立ち回り、面倒な委員から逃れた。修学旅行委員になったがこれくらいなら良しとしよう。
その日を無難に終えたと思った俺は古織に呼び止められた。
「
「え?」俺は困惑した。
羨ましそうに俺を見る男子の視線が痛い。
俺は仕方なく古織の後ろを歩いた。
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