第7話 パフェ

 「もし従姉じゃなかったら、あなたたちは結婚してたよね」


 そんなことを言ったのは、コレットだ。彼女は今日、イダとルネと一緒にいつも私が使っているこの客間で泊まる予定だ。代わりに、レアの部屋に私が泊まる。イダとルネとレアは今、キッチンで手作りパフェを作っている。3人のにぎやかな笑い声が、階下から聴こえる。


「かもね」


 冗談めかして笑いながら、もし彼女と血が繋がっていなかったら、あんな風に助けられることもなかったんだろうな、と思う。同時に、こうも思う。従姉妹じゃなかったら、レアと私はこんなに仲良くなっていなかったかもしれないと。


「レアってさ、普段凄いストイックなのよ。お酒も飲まないし、ご飯もあんまり食べないで、仕事がない時はジムに行って鍛えたり、いつもダンスのことばっか考えてるの。羨ましいよ、そんなに夢中になれるのは」


 昔から、レアは時間を惜しまずダンスの練習に明け暮れていた。ダンスのためだけに生きていると言っても、過言ではないくらいに。


「ダンスしてる時のレアって、凄くかっこいいよね。惚れちゃいそうになる」


 コレットの言う通り、ダンスをしている時のレアはとてもクールだ。底知れぬ生命力に満ちていて、一種の神聖さすら感じさせる。高校の時に一度、誰もいない教会の聖堂でダンスをしているレアの姿を見たことがあった。ステンドグラスの窓から差し込む陽光が、舞い踊る彼女の姿を照らして、まるで今にも天使が空から降ってきて、彼女をどこかに連れ去ってしまいそうだった。


「レアのダンスは、神のレベルなんだよ。誰もレアには敵わない」


 子どもの頃から、レアの才能は群を抜いていた。彼女が家の側にあるダンス教室で踊っているのを、よく開いた窓の隙間から見ていたことを思い出す。私の姿を見つけると、レアはすぐに駆け寄ってきて、


「マノン!! 見てた? 今の」


 と誇らしそうに尋ねた。


「見てたよ」


 そう答えると、レアは嬉しそうに笑った。


 コレットが客間に戻り、レアが一階から戻ってきた。


「パフェ、マノンの分も作ったから食べなよ」


 レアはスプーンの入った透明の深めの皿を私に手渡した。チョコレートをかけたコーンフレークの上に、スポンジケーキとストロベリーとチョコレートのアイスクリームが2つ載っている。そのさらに上にかけられたホイップクリームが、パフェっぽい雰囲気を醸し出していた。


「ありがとう」


 ベッドを背もたれにして、ホイップクリームとチョコレートアイスを掬って口に運ぶ。レアも私の隣に腰掛ける。


「私のダンスの練習が終わったあとに、あなたとよくアイスクリーム食べに行ったよね」


 レアの青い目は、懐かしそうに細められている。


「そうだったね」


 思い出話をしていると、ふとあることを思い出した。

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