第二十六集 悪女
そのすべてを大兄・
押し込められた牢の隅に、
ふと、金属の擦れる音がした。億劫に顔を上げると、格子扉の向こうに立つ
だが、扉を解錠した彼の後ろから
ほんの数日前に見た
「三姉上」
「三姉上、どうして……どうして、こんなこと」
「わたしを助けるためだったとしても、三姉上が罪を被る必要なんてなかったのに……どうしてやってもいないことを、認めたりしたの?」
真っ直ぐな
このような状況でなお姉を信じ続けられる四妹の
「逆に聞きたいわ。わたくしがやっていない、なんて。どうして思えるの?」
「だって、三姉上はそんな人ではないもの。母さんが死んでから、家で一番わたしの傍にいて、ずっと助けてくれていたでしょう。三姉上がわたしを陥れようとするなんて、考えられない」
「待っていて、三姉上。今度はわたしが、必ず三姉上を助け――」
「おめでたいのね」
顎を上げ、
「
こちらを見上げる
二人の表情を眺めやり、
「優しい姉だと思っていたとしたら残念ね。わたくしはずっと、あなたが嫌いだった」
元から青ざめていた
「あなただけじゃない。
世子が批難の目を向けてきたが、
「中でも、あなたが一番嫌い。同じ家の同じ庶子で、生まれた日も
「三姉上……誰も、そんなこと――」
「目障りなのよ!」
「あなたさえいなければ、世子がわたくしを見てくれて、皆を見返せるはずだった。あなたさえいなければ、わたくしはこんな思いをしなかった!」
迫るように、
「出ていって。あなたがいると、わたくしはおかしくなるの。もう二度と、わたくしの前に現れないで」
「三姉上……」
「行ってったら!」
世子は敵意の宿った目を
「
二人の姿が見えなくなるなり、
床に散った
『
あとは悪女らしく、華麗に散るばかりだ。意外にも、今の気分はそれほど悪くはない。
「……いたの。
「二人は先に外へ送らせた」
「ふうん。それで、なんの用?」
「なぜ君が、自分から罪を引き受ける気になったのか不可解でな」
「なにを
「あれほど死を拒んでいたのに、どういう心変わりだ」
言われてみればそうか、と
「前から言っているでしょう。わたくしは、
背の高い
「
急に鼻の奥がつんとするのを感じて、
「
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