第二十一集 尋問
「大兄上は、今どこにいる」
「……え?」
予想していなかった質問を投げかけられ、
「どこにって……どうして、それを今、わたくしに訊くの?」
逃亡した大兄・
「大兄上が帰ってくる以前からやりとりがあっただろう。少なくとも数ヶ月以上は。なぜ隠していた?」
助けを求めるように、
二人からの疑いの眼差しに、
「隠してなんていないわ! だって、帰ってくるまで大兄上がどこにいるかも分からなかったのよ。一体どこからそんな話が――」
「
感情のまま
「連絡をとっていたことを責めたいわけではない。大兄上とお前は同腹だ。兄妹としての情も深いだろう。しかしなぜ、わたしたちにそれを隠した」
「天地に誓って、わたくしはなにも偽っていないし、大兄上ともなにもないわ。嘘だったら雷に打たれます。わたくしと大兄上が連絡をとっていたなんて、誰がそんなことを」
頑とした
二人揃って顔の向きを
「実は、
「
自分の知らないことが起きていると分かり、
「きっと母さんの侍女よ。わたくしは本当に、なにも知らなくて」
「それでは訊くが、
血の気が引くのを
「妹が兄の行方を捜すのは、そんなにおかしなこと?」
「つまり、なんらかの理由で大兄上を捜し出し、誰にも報せることなく連絡をとり合っていた、ということで間違いないな」
「それは……」
反論する言葉が咄嗟に出なかった。
黙り込む
「わたしたちは、ただ正直に話して欲しいだけなのだ。大兄上とどういうやりとりがあったかを教えてくれれば、これから先の手がかりにもなるだろうし、わたしたちも安心ができる」
「そう言われても……」
ないものをどう教えろと言うのか。いよいよ窮地に立たされ、
三妹がなにも言わないと見ると、
「あまり荒立てずに進めたかったが、お前に協力する気がないのなら
「
つい、
「大兄上と接触していた奴婢は、どうやら
二兄と世子に試されたのだと、
「明日、
ようよう立ち上がった
けれど今、泣くわけにもいかず、
「……二兄上、世子。失礼します」
すっかり打ちのめされて、
令嬢と侍女という関係ながら、幼少期から並んで字を学び、書を読み、共に育ってきた。ときには実妹以上に妹のように思いやってきたつもりだ。主人という立場から厳しく当たってしまったこともあったが、恨みを買うほどの心当たりは思いつけなかった。
「東廂房の侍女が、どうしてここに?」
侍従や侍女は、同じ
「二公子より、三娘子のお世話を仰せつかりました」
「
「今夜は別の場所で過ごされます。必要なことは、わたくしにお申しつけください」
「そう……」
聴取の前に口裏合わせをさせないための処置だろう。やはり
二兄の侍女に、一人にして欲しいとだけ伝えて、
今の
牢獄で四妹から聞いた印を確認するために
この印を見せて
しかしどうやらその機会がないまま、二兄と世子に悪事を暴かれることになりそうだ。
大事な証文をなくさないよう敷き布団の下に押し込んで、衣が皺になるのも構わず
誰一人として味方のいない心細さに、
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