第二十集 疑惑
いつもならすぐにようすを見にくるだろう生母・
家主が
我が子が二人も関わっている茶の密売について、
家中で味方と思えるのは二兄・
現状あまりに覚束ない自分の身を守ることも、
眠るように目を閉じて
「
「
受けとった湯飲みの水を、
「心配しないで、
言いながら、空の湯飲みを
「ねえ、
「いかがなさいましたか」
「わたくしに、なにか隠していることはない?」
問うた直後、
「長年お仕えしているわたくしが、三娘子に隠しごとするとお思いですか?」
「主人に問い返すのは礼儀違反よ」
常であれば流してしまう点を咎められ、
「……申しわけございません」
「謝罪はいいわ。質問にだけ答えて。わたくしに、隠しごとはしていない?」
一拍置いて、歳下の侍女は
「ございません」
心臓を締め上げられたように胸が痛むのを、
「……そう。それならいいわ。少し休むから、二兄上が帰ってきたら教えて」
「かしこまりました」
なにごともなかったかのように、
すでに証拠が
侍女のおこないは主人の意思とみなされる。
茶賊と通じた罪。証文を偽造した罪。妹の名誉を毀損した罪。いくつもの罪状が重なり、刑罰として杖で打たれて命を落とす。その結末は、『霜葉紅』と変わらない。
物語が元に戻ろうとする力の、なんと強いことか。おそらく
「三娘子、もうお体は大丈夫なのですか」
目を丸くして言う
「平気よ。それより、
「かしこまりました」
まだ諦める段階ではない。立ち向かうべき相手が、
まずは
輿の担ぎ手に共をさせて訪ねた
茶坊でも今のところ大きな動きはないことも確認した
「二兄上。お帰りが早かったのね」
声をかけながら
「
「
二兄から指示されたことに
「
さっそくとばかりに、
「少し痩せたようではあったけれど、思ったより元気そうだったわ。乱暴なこともされていないようだし。差し入れもしっかり食べてくれて。
「
確かに、
ただ、彼の行動の動機は
「危ない橋を渡っているのは二兄上と世子も同じでしょう。そちらの調べは進んでいて?」
「そのことだが……」
問いかけに、
二兄が
なにか深刻な問題が起きたのだろうかと、
「実は、
そう前置きして、
「大兄上は、今どこにいる」
「……え?」
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