第十九集 暗躍
「
「どういうつもり?」
「質問の意味が分からない」
今度は声が返ってきたが、素っ気のない口調に
「
苛立ちを隠すことなく
「わたしの仕業と思うか?」
「わたくしがやっていない以上は、あなたしかいないでしょう」
「つまり、なにも気づいていないということだな」
せせら笑うような吐息と共に、
「なにに気づいていないと言うの」
問い詰める
「わたしは君の代わりに
聞き捨てならず、
「待って、どういうこと。わたくしが引き起こした?」
「
「霜葉紅で、
袖をつかむ手をたやすく振り払って、
「忘れてなんかいないわ。
「では、偽の証文がどうやって作られたかは覚えているか」
「それは……」
『霜葉紅』と同じ方法が使われたのだとしたら、
だが、
「忘れたか? それなら、わたしが――」
「忘れてない」
そうは思ってもやはり拒否感は拭えず、
「忘れていないわ……
『霜葉紅』で描かれた内容そのままだ。実行した人物が違うだけで。
読み上げるように言葉を重ねるほどに、
証文の拇印が本当に反転しているかはまだ確かめられていないが、いずれ
「……
最後の希望に縋る心地で、
「君は、
「どうしてよ……わたくしは望んでないのに、どうして!」
両腕で
行き場を失った両手を、
「どうして、あなたじゃないのよ! どうして、こんなこと……どうしてっ」
二度、三度と、
黒衣の胸に押し当てたまま震える
「それが知りたいなら、本人に訊くのだな」
突き放すようなその一言が、
傷つき意気を失った彼女の手を引き、
先ほどよりもずっと緩慢な歩調で、白壁がどこまでも続く皇城の道を並んで歩いた。
ほどなくして皇城の内外を繋ぐ楼門が見えてくると、
門外には、
門を通るときに守門の皇城司がやや意表を突かれた顔をしていたが、
「
楼門を出たところで呼びかけられ、
「お帰りなさいませ、三娘子。
「三娘子?」
うつむいたままの
すると、令嬢と侍女の間へ割って入るように、
「
「かしこまりました。お心づかい感謝いたします」
「できるだけ急いで帰って」
「三娘子、お体は大丈夫ですか」
いつも通りに輿の横をつき従って歩く侍女の足音を聞きながら、
自分の態度がよくないのは重々自覚している。それでも今は、感情と思考を整理する時間を置かなければ、
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