第十八集 牢獄
石壁に囲われた牢獄の通路は、外よりもいくぶん気温が低かった。左右にならぶ頑丈な木格子の牢には、高い位置に採光と通気用の小さな窓が開けられているが十分でなく、
二の腕がかすかに粟立つのを感じ、
徒党を組んで茶の私販を
本来なら掃討すべき茶賊を、茶の産地の雲州では州の長官たる
京城・
なお、皇城司による追及はまだ終わってはおらず、この件はこれからさらに
証文に書かれていた取引内容の目録と、
空の牢をいくつか通り過ぎたところで、先を行く
近づいてみると、粗い
「
ほんの数日の間ですっかり憔悴した
格子越しに
「三姉上」
「
姉妹がそうしている間に、
「三姉上。わたし、なにもしていないの。信じて」
「分かっているわ。
元気づけるように、
気をとり直すように腕を放し、
「
牢の中央にある粗末な卓に
卓についた
そんな四妹のために、
「口が渇くからお茶も飲んで。
「十分よ。ありがとう、三姉上」
甘いものを食べたことで
「ねえ、
問われた
「大兄上からは買っていないし、そういう契約もしていないわ。茶坊の帳簿を見たらすぐに分かることよ。お金の出入りは
散々、同じ内容を尋問されたのだろう。苛立った声の響きと傷ついた眼差しを四妹から感じとり、
「ごめんなさい。わたくしは一度だって
「見たことには見たけれど、内容を読み込めるほどは見せて貰えなくて。でも、署名はわたしの字ではないわ。しかもその証文の話、聞けば聞くほどおかしくて」
「どうおかしいの?」
「証文を交わすほどたくさんの茶葉、それも高級な雲州産のものをわたしが買うなら、まず茶坊で出すためでしょう? だとしたら証文の署名をわたしがしたとしても、印は拇印でなく茶坊の印を使うはずなの。
少しだけ考える間を置いてから、
「茶坊の印はどこに置いている?」
「茶坊の戸棚に仕舞ってあるわ。戸の鍵は
しかし鍵を手に入れたところで、茶坊が閉鎖されてしまっているのでは印を確かめようがない。皇城司による捜査で、すでに押収されている可能性もある。
けれども、今回の一件に印は使われていない。となれば、よくよく検証するべきは印の代わりとなっている拇印の方だろう。
「ありがとう、
時間はあまりない。
牢獄を出て皇城の外へ向かう道すがら、
いかにして、
考えるほど、あまり望ましくない答えに辿り着きそうで、臆した
結論を出す前に、話を聞くべき相手はもう一人いるのだ。
息を吸い込んだ
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