第十七集 鞭打
「門を開けて。
声をかけながら何度も叩いて、やっと門扉の向こうから物音がした。ゆっくりと門扉が開き、顔を覗かせたのは
「お帰りなさいませ、
さっさと
「二公子とご一緒ではなかったのですか」
半歩後ろの位置へ追いついたところで、
「緊急事態があって、二兄上は世子と一緒に皇城へ行ったの。それより、父上はまだいる?」
時刻的に、そろそろ昼食を終えて午後の出仕に向かっていてもおかしくない。まだ出発する前であれ、という期待を込めて
「旦那様はいらっしゃいます。ただ……」
急に歯切れが悪くなったのが気になり、
「なにかあったの?」
侍女と
「今、
「どうしたの? なにかあったのなら、はっきり――」
高く響く鞭打の音と、悲鳴があがった。
追い打ちをかけるように、
「母さん!」
「父上、なにをなさっているのですか!」
叫んだ
「なにをしているかだと? 自分の母親に聞け!」
竹鞭を振り回しながら怒鳴られ、
今日はなんという日だ、と思いつつ、
「母さん、なにがあったの」
「わたくしは、ただ……ただ、
「お前はまだ
「待ってください、父上! お願いだから待って!」
その隙に、
「父上、まったく話が見えません。一体なにがあったのですか。大兄上になにか?」
「いいだろう。教えてやる。
一呼吸置き、
「
「大兄上が逃亡? それで、なぜ母さんを打つのですか」
なにが起きているか、
娘の当惑をせせら笑うように、
「奴は元々、家から逃げているからな。そこはそう驚くところでもないだろう。問題は、茶の密売の嫌疑をかけられていることだ!」
ひょうと音をたてて、威嚇するように
「近頃わたしの留守中に、
竹鞭の先を揺らして、
茶の密売が露見し、関わっていた
だが
「帰ってきたならちょうどいい。
やはり、
「
「なに?」
意表を突かれたように、
「皇城司に
「我が家には罪人しかおらんのか!」
「違います!」
「大兄上はともかく、
ただただ必死に、
「母さん。雪柳閣に戻りましょう」
立たせるために
なりゆきを見守っていた
本当に『霜葉紅』の通りであるならば、
逃げた
そんなことをする人物はやはり、『霜葉紅』を知る
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