第七集 側妻
「
「どうって、なにが?」
「縁談相手のことよ。さっきまで会っていたでしょう? 今日の来訪があるまでわたくしになにも報せなかったのだから、
今日の縁談を
「それで、どちらの公子なの? 官職は? 名前は?」
ようやく本題に戻って、
「
「農民ですって!」
悲鳴じみた声で再び
「
癇癪を起こしたように座ったまま地団駄を踏む
「
まずは縁談相手の擁護を試みてみる。ところが
「そんなどうなるか分からない要素なんか信用できるもんですか。科挙に合格できるのは受験者のほんの上澄みなのよ。六十や七十の歳まで受け続ける人もいるのだから。
上昇婚を理想とするのなら、
「母さん。格上の家に嫁げても、爵位もない
「なんてことを言うの!」
叱りつける口調で言って、
「わたくしはね、物のような扱いの生活から抜け出して少しでも楽な暮らしをするために、努力して努力して、旦那様と出会って今の暮らしを手に入れたの。
切実な響きで言い募られ、
そこから抜け出すために彼女は、出会った当時には官職に就いたばかりだった
そのような経験をしているものだから、
「わたくしは貧しい苦労を知っているわ。だから、血を分けた娘にはそういう苦労のない、より富貴な暮らしをさせてあげるのが、親としてのわたくしの勤めよ。よく分からない農民なんかよりも、
「母さん、世子については口を出さない約束でしょう」
「そう言ってちっとも進展しているようすがないから、こうして聞いているんじゃない。なんのために茶坊へ行っているのよ」
確かに、
そんな事情を知るよしもない
「今日も世子と会ってきたのでしょう? あなたも茶坊に行くようになってもう結構になるし、世子も進士になられたんだから、そろそろなにか言ってくるんではないかしら」
「それを言ったら、
「あんな商人の娘なんて、世子が相手にするはずがないじゃない」
そう言う
これでは兄妹の中で唯一、母のいない
「ねえ、いっそ
「連れていってどうするの」
つい聞き返してしまってから、
「
素晴らしいひらめきだとばかりに、
物語にあらがうと心では思っていても、すべては複数の登場人物の思惑が交錯することで進行していくものだ。
「そんなに上手くいくとは思えないけど」
無駄と分かりつつ、
「二人きりにさせて、それらしい既成事実でもなんでも、でっち上げたらいいのよ。そもそも
娘の意見を聞く気がないどころか、侮辱の言葉がさらりと出るあたり本当に救いようがない。汚い手を使うことになんら躊躇のないこの生母が、
当時の
たとえ実の娘であっても強く反発すれば、
「……やってみるわ」
形だけ、と心の中でつけ足す。
なんらかの策は講じたのだと、
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