第四集 知己
透き通った生地の中に花弁が舞う
艶やかな露に輝く
きな粉を纏った
一同の揃った円卓の上に、色彩豊かな菓子が並んだ。
「
円卓を囲む個々の前に
「我が四妹は、また腕を上げたようだ」
皆が舌鼓を打ち始める中で、
「
言いながら、
「ありがとうございます。でも、わたしは動き回っていた方が落ち着くので」
「しかし君だけ働かせるわけには……」
「今日は世子と
科挙は、官吏登用のための国家試験だ。三年に一度おこなわれる試験にはいくつかの段階があるが、この度、その最終試験である
たいへん難関な試験だ。当然、それぞれの家で盛大な祝宴はしている。それとは別にごく親しい仲間内でも改めて喜びを分かち合おうということで、こうして集まったのだった。
霜葉茶坊を使っているのは、
「
「しかし――」
「
言い募ろうとする
「姉妹だもの、そんなに違いはないでしょう?」
肩を寄せ、下から覗き込むように
すぐさま、
「
仕方なく
「国公世子が
科挙の合格者を、進士という。進士すなわち今後の国政を担う高官候補であり、それだけで前途洋々な郎君とみなされる。さらには爵位を継ぐことが確定している世子となれば、とり入ろうと考える者が現れるのは必然だ。
「そういえば合格発表の当日には、浩国公府の前に
「彼らなら全員、母が追い返してしまったよ。わたしとしても、相手にする気はない」
肩をすくめて、
「ほう。
「同調はしていない」
即座に否定して、
「母は、母自身の選んだ相手以外わたしに相応しくないと考えているが、わたしはそうは思わない。わたしは、自分が心から思える相手を自分で選ぶ」
高貴な出自に加え、柔和な美貌と気立てを持つ
しかし、彼が
「その口振りは、すでに心に決めた相手がいるな」
「それは……」
「世子に嫁げるなら、
二兄と世子が同時に振り向いた。
「やめた方がいいぞ、
先帝の姪でもある
そのため
そんな内心は隠しつつ、
「二兄上だって
科挙合格者の内、上位三名には特別な肩書きが与えられる。探花は、第三位の称号だ。
「中書侍郎の令嬢? 初耳だぞ。いつの話だ」
世子が驚くのも無理はなかった。中書侍郎といえば、皇帝を補佐する宰相二名の内の一方の肩書きだ。科挙で上位の成績を収めれば高官から声がけがあるのは常だが、最高官が首位と二位を差し置いて、三位の探花にとなると、なんらかの意図を邪推したくもなる。
「その話題は勘弁してくれ。そういう話があるというだけで、なにも進んでいないし、わたしも乗り気でない」
「
「母上は、中書侍郎と姻戚になるのがどれだけの面倒ごとか分かっていないだけだ。巻き込まれなくていい政争に巻き込まれることになる」
「しかし中書侍郎は皇帝に次ぐほどの権威だろう。断れるのか? 下手を打ったら、栄えある探花が左遷の憂き目だ」
親友を案じて、
「殿試以上の難題だ」
主賓の二名が揃って思い悩む。その向かいで、
「どうやら、これからはわたしが一番お気楽でいられそうだ」
「
「家は兄が継ぐし、わたしが進士になったところで、父の金儲けのために働かされるだけだ。武官でいた方が、父や兄と距離を置けて好きにしていられる。それに、
皇城司は、
三年前に
「皇城司に入れたのは兄君の
「…………」
反論するのさえ
このまま際限なく会話が続いていくと思われた矢先だった。急に
「少し失礼。すぐに戻る」
新しい菓子をとりに
次になにが起こるか。
分かっているな――と。眼差しだけで、釘を刺される。
ここで
「わたくしも、少し出てきます」
口の止まらない
「
「
「かしこまりました」
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