第22話 調・達・決・行
私が地表へと降りる際は、ほぼ毎回『転送』機能を利用する形を取っている。
これは
大抵の場合、高度を地表付近に設定しているのだが……その気になれば、空中へと転送させることも出来る。
……機能としては、まぁ出来るのだが……非常に目立つからな。余程のことが無ければやらないだろう。
『報告。周囲に『ヒト種』生命反応を検知出来ません』
「やっぱ使えるな、ここ」
『推奨。同様に『ヒト種』生命反応が検知されない廃墟都市のリストアップを提案致します』
「同感だ。良さそうな場所見繕っといてくれ」
『了解。艦長ニグの要請を承ります』
非常に高い利便性を発揮する一方で、転送元と転送先のどちらにおいても強烈な発光を伴うという点が、我らが『転送』機能における強烈なデメリットである。
光の柱とともに出現するモノなんて、この広い地球上を探したところで私以外に存在しないだろう。
ただでさえ多方面に喧嘩を売るような、こじらせた一匹オオカミのような振る舞いを続けているのだ。興味や関心ならまだいいが、嫉妬や怨恨を持った輩に絡まれないとも言い切れない。
よって、私が『転送』を用いて地表に降りる際、非常時を除いて人けの無い場所を用いることが多い。
地表にさえ降りてしまえば、こちらのものだ。高深度隠蔽状態を維持したまま機体を浮遊させれば、どこへだろうと見咎められることなく移動することが出来るのだ。
誰の目を気にすることもない、悠々のんびりとした空中散歩。なかなか乙なものだ。
「例の座標は……コッチで合ってるよな?」
『肯定。目的地座標位置情報を送信致します』
「確認した。有視界警戒も怠るな、何かあったらとりあえず知らせろ」
『了解。艦長ニグの要請を承ります』
直近の
本日の天気は晴れ。気温は……まぁ、それなりだろう。
とはいえ
まぁ、色々述べたが……要するに。
今日は絶好の『お出かけ日和』というわけだ。
『報告。目標地点を直視にて確認致しました』
「…………アレか。見えた」
本日の目的地へと近付き、浮遊機関の出力を落として地上へと降着。申し訳程度に物陰に隠れ、
ここからは姿を晒していくわけだが……そもそも私は見た目が
そうとも、私は別に罪を犯している訳ではないのだ。軍資金だって合法的に手に入れたものだし、何もやましいことは無い。
ただ普通に、ごくごく普通に、衣料品店で下着やその他衣類を調達しようとしているだけの、ただの無害な銀髪人造人間系少女なのだ。
「いらっしゃ……………ませぇー……」
あからさまに硬直した店員に迎えられながら、私は自動ドアを潜り買い物カゴを手に取る。
今回の軍資金であり全財産である一万円を握りしめ、とりあえずは最優先目標である下着売り場へと直行する。
何も恐れる必要は無い。何も気にする必要は無い。私は何もやましいことはしていないし、生前とは異なり今の私(の容姿)は少女のものなのであり、つまり女性用の下着を手に取ることは何の問題も無いのだから。
ましてや……『私』と『生前の私』のことを関連付けられる者など、当然この世に存在しないだろう。また今世で知人と呼べる間柄のヒトなど存在しないし、周囲の人々は全員が全員『赤の他人』に他ならない。
女性用下着を購入するところを、たかだか『赤の他人』に目撃されたところで、私にとっては何の痛痒も感じないのだ。
「…………あの、何やってるんですか? 【アルファ】さん」
「ッ!!?」
不意に投げかけられた声に振り向くと、そこには見覚えのない女学生が一人。
濃紺色のブレザーと赤いリボン、あしらわれている校章が何処のものかは判断できないが、その背丈から中等部であろうかとアタリをつける。
しかしながら当然、私に女学生の知り合いなど居る筈も無い。買い物中に遭遇して世間話に興じるような相手にも、全くもって身に覚えが無い。
校則を遵守しているのであろう、ごくごく一般的な……しいて言えば若干ブラウンがかった頭髪と、意思の強そうなぱっちりとした瞳。
寸分違わず『私』を注視するその視線に、しかし私は困惑を禁じえなかった。
その困惑を察したのだろうか。彼女は一瞬『はっ』と何かに気付いたような素振りを見せると、きょろきょろと周囲へと視線を巡らせ。
深呼吸とともに『ぎゅっ』と瞳を閉じ……そしてゆっくりと瞼を上げ。
再び相見えた彼女の瞳、一目見た限りでは標準的な日本人そのものの特徴を示す
只人とは明らかに異なる、蠱惑的な輝きを湛えた
「…………『会いたくない』って言われちゃいましたけど……私が会いに行ったわけじゃないですから、セーフですよね? 【アルファ】さん」
『報告。眼前のヒト種個体を種別『魔法少女』、識別呼称【パーシアス・エベナウム】と判定致します』
(もっと早く判定しろ……!)
目元を緩め口角を上げ……『してやったり』とでも言いたいのだろう、その身からは以前のような剣呑な雰囲気は見て取れず。
かつて私が邪険に振った【
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