第十四話(1,960文字)
銃声が
アカネの拳銃から細い煙が、音もなく
床には脳天から血を流して倒れる死体が四つも、血の海を広げて転がっている。
「ナオさん、もう終わりましたよ。」
アカネの後方、それを聞いたナオは
ナオの怪我がまだ痛むので、最近はアカネが前を進み、ナオが後ろから援護して仕事をしていた。
「ごめんね。アカネちゃんにばっかり、仕事させちゃって」
「いいんです、無理なさらないでください。」
「ありがとう。」
アカネは手際よく
「銃の扱い、上手になったね」
「へへ、ナオさんが教えてくれたおかげですよぉ。ありがとうございます」
微笑むアカネに対してナオは少し、複雑な気になった。
部屋から出てマンションの廊下へ行こうとするアカネに、ナオが
「ねぇ、アカネちゃん、」
と呼びかけた。
それにアカネは
「どーしたんです?」
と微笑んで振り返った。
ナオは何か言おうと思ったが、言葉が出てこなくて
「あぁ、いや、なんでもない。」
と言った。
アカネはちょっと不思議そうな顔をした後、
「あ、何言うか忘れたんじゃないですか?」
と、ちょっと笑って言った。
それを聞いたナオは
「ううん、多分、そうじゃなくってね。その、えっとぉ」
と頭を回した。
アカネは部屋へ引き返してきてナオに近づき、頭を回すナオを、微笑んで眺め出した。
「ごめんね、すぐ出てこないや」
「ううん、いいんですよ。時間はあるんですから、焦らなくっても。」
ナオの『〜くって』という
「あの、えっとね」
言葉が出てきたらしいナオは、アカネを見つめた。
アカネは微笑みながら穏やかに「ん、なんでしょ?」と言うと、ナオへ耳を傾けた。
「えっと、まだまとまってないんだけどね。でも、その。アカネちゃん、最近撃つのも上手になってさ」
「ええ、おかげさまです」
「うん、ありがと。それでね、その、人を撃つのも、平気になって、仕事もできるようになって、それで、その。」
ナオはもう一度、アカネの顔を見た後、目を逸らした。
「私はね、まだ、辛いんだ、この仕事。だから、その、なんかね、アカネちゃん、遠くに行っちゃうみたいで、その、なんか」
ナオはアカネに目を合わせた。
「怖いの。アカネちゃん。一人で、行っちゃうみたいで、やなの」
アカネはナオと目を合わせた。
「ごめんね、こんなこと言っちゃって。仕事は、できた方がいいんだよ。いいんだけど、でも、なんか、寂しくて。ごめんね、変なこと言って、」
アカネはナオの手を握った。
「大丈夫です。ナオさんを一人にはしません。ここにいますよ、
アカネの目が、
「一人にはしません。大丈夫ですよ、ナオさん。」
「ほんと、」
「ほんとです。任せてください。」
ナオの細い手が、アカネの手をゆっくりと握り返した。
マンションの階段を、ナオは電話をしながら降りている。
空は久しぶりに明るく、雲は若干あったが、晴れと言えるものだった。
肌寒い風が吹いて、電話をしているナオはその
その遠目では、前に解体されたショッピングモールが更地になっていて、その下の地面が剥き出しになっており、寒そうだった。
ナオの耳元からは、
「──それで、次の仕事なんだがな。前にマンションで、二人殺しただろ?あの、俺が封筒渡した時のさ。お前が今いるとこの近所の。」
「はい、ショッピングモールの。」
「そうそう、解体工事がうるさかったヤツ。んで、次の仕事の
「そう、なんですね。」
ナオは電話を片手に、マンションの目の前にある駐車場に停めた自分の車の荷台にもたれかかり、道路のアスファルトをなんとなく見つめる。
「そう、だから、あのホテルの時以上に危険な仕事になるかもしれない。だから、気をつけろよ。お前はウチの戦力なんだから、死なれると困る。」
「わかりました。気をつけていきます。」
「おう、頼んだ。また情報は送る。じゃあな」
「では、失礼しま──」
ナオの見つめる道路の先、人影があった。
アカネはまだ、目の前のマンションの部屋で業者と話しているはずだから、アカネではない。
それに、男の人影だ。
すると、その人影の手元が、銀色に光った。
リボルバーだ。
ナオをまっすぐ狙っている。
「兄貴はな!お前ら殺し屋にはわからんやろうが!ええ人やったんや!それをよくも!」
ナオの手から、携帯が落ちた。
「死ね!」
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