初恋のくろれきし

薄味メロン@実力主義に~3巻発売中

がんばりました

 小学3年生の頃のお話です。


 ちょっと考えてみてください。 


 大好きな相手に


「好きな子いる?」


 そう聞かれたら、どうしますか?


 話すチャンス


 キタ━━━━。゚+.ヽ(´∀`*)ノ ゚+.゚


 そう思いますよね。


(がんばろう! めっちゃ頑張ろう!!)


 そう思いますよね!


 で、頑張った訳ですよ。


「……ひみつ」


 思わせぶりな態度で、相手の気を引く作戦!!!!


 イケてますね~!


 孔明にも劣らない策士でしょう!


 可愛いカノジョも、これには興味津々!!


「やっぱりいるんだ! だれ!? 教えてよ!!」


「……誰かに聞かれるとイヤだから、ふたりきりなら、まあ……」


 本音は半分くらい。


 残りは、可愛いカノジョと話がしたい。そんな下心。


「わかった! じゃあ、こっちに来て!」


 彼女と、誰もいない音楽室へ。


 窓の外には、いい感じの青空が見える。


 ドッチボールをする友達の声が、遠くに聞こえる。


 心臓がバクバクする。


「これでいいよね? 誰が好きなの?」


「……どうしても知りたい?」


「うん! どうしても知りたい!!」


 なんか、あれじゃないですか?


 いい感じ?

 絶好の告白チャンス!?


 もしかして、両思い……????


「わかったよ」


 よし!


 鏡の前で練習した、優しい笑みを浮かべよう!


 声も、練習したイケメンで!!


 大丈夫だ!


 かっこいいセリフは、毎日練習している!!


 半歩だけ、近づいて……



「キミが好き」



 決まったーー!!!!!!


 これは格好いい!!


 ドラマのかっこいい台詞を練習した成果が出てる!!


 そう思っていると、彼女がなぜか、クルリと背を向けた。


「……そうなんだ」


 あれ?


 なんか、ちょっと、テンション低い……?


 あ、そのまま、教室を出て行く?


 ドアを開いて、廊下に出て、閉じる?


 で、部屋にひとりだけ残された……。


 えーっと……?



「告白、の、……返事……、とかって……」



 ないの?


 ドラマじゃないから、キスが返事じゃないのは知ってるよ?


『付き合おうよ』も『ごめんなさい !』も ない?


 えーっと……


「もしかして、やらかした??」


 好きな人は? そう聞かれて、『キミ』って答えただけ。


 付き合ってくださいって、言ってない。


「練習したのに……」


 告白になってない。


 それから20年。

 彼女とは、その後、一言も話せていません。

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