液体スープは何処
冷凍ピザ
とある昼の出来事
俺には三分以内にやらなければならないことがあった。
俺は
普通の企業で働いて、普通の年収で、ちょっと駅近のマンションで生活している。
今は日曜の午後0時。脳が食事を求める時間だ。
俺の脳も当然の如く胃に何か入れろと騒ぎ立てるのでとりあえず適当に済ませてしまおうと冷蔵庫を開けた。
「……マジかよ」
そこに広がる光景に驚きを隠せなかった。
何も無い。調味料、2Lの麦茶のペットボトル、スーパーのパック寿司と一緒に買った小さな醤油の袋しか入っていない。
昨日帰りに何も買わなかった自分と何も無い冷蔵庫に落胆しながら無言で扉を閉じた。
次は常温で保存できるものを置いてある場所へ目を向ける。
そこにはカップ麺が1つ。
「今日の昼飯はこれだけか」
このままカップ麺1つで昼食を済ませてしまうより、近くのコンビニやスーパーで買い物をした方が圧倒的に良い。そんなことは分かっている。
だが面倒。この一言に尽きる。
「……はぁ」
ため息を漏らしながらシンクの横に置かれているポットの方へ向かう。
カップ麺の蓋を半分ほど開け、中からかやくと液体スープを取り出す。
かやくの袋を雑に引きちぎり、半分開いた容器の中に入れる。
今回は何の問題も無く袋が開いた。"どこからでも切れます"は1度試して切れないと基本的に"どこからも切れません"状態になる。
かやくを入れ終わったらポットからお湯をぶちこんで後は4分待つだけだ。
キッチンタイマーを4分に設定して机の方へ持っていく。
「よし、後は待つだけか」
4分たつまでスマホでもいじって待っていようと思ったその時、カップ麺の蓋、もっと詳しく言うとカップ麺の蓋の上を見てある事実に気づいた。
「液体スープが無い……」
液体スープがどこかへ行ってしまったのだ。
液体スープの無いカップ麺などルーの無いカレーと同義だ。
キッチンタイマーを見るとカップ麺ができるまで後3分だった。
3分以内に液体スープを見つけなければならない。
まずは当然キッチンを確認する。
ポットの付近に目を通すが、見つからない。
この状況では、床に落ちている可能性が1番高そうだ。
キッチンの床を隅々まで確認する。
「どこいったんだよ俺の液体スープ」
その後も懸命な捜索を続けたが、結局消えた液体スープが見つかることは無かった。
ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ
無情にも、キッチンタイマーが部屋に鳴り響いた。タイムリミットだ。
「あああああ、もう!」
空腹も重なりイライラが限界に達し、シンクの横のワークトップで盛大な台パンをかましてしまった。
そこからはとち狂ったように調味料をぶちこんで、味覚異常者専用の味になったカップ麺を食べ尽くした。
液体スープが部屋着のポケットの中に入ったままであることに気づいたのはその日の夜の事だった。
液体スープは何処 冷凍ピザ @HyperMissing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます