第38話 異世界お風呂でも快適に
異世界で石鹸を作った事で浮かれていたけど、もうひとつ女の人には大事なものがあった。リンスだ。
でも慌てる事はない。リンスの代替え品を知ってるだろうか? お酢である。
人間の体の外側は弱酸性に保たれている。そこにアルカリ性の石鹸をつかうと皮脂汚れが落ち、肌がさっぱりする代わりにツッパリ感や、髪だとキシキシといった指通りが悪くなったり、髪が痛んでいると油分が落ちるせいで逆にボサボサになったりする。
そこでお酢を使うと、アルカリ性に傾いた髪が酸性で中和されてリンス効果がでる。
失われた髪の油分、コーティングは日本でも椿油などでトリートメントしていた。
ここではヤシの実油もどきで代用したらいいだろう。
問題はお酢がないから、さらに代替え品になるものを探したらいい。
レモンみたいな酸性の果汁が手に入ればわざわざお酢を作る必要もない。
「ユイファ、この森で食べると酸っぱい果物ってあるかな」
「あるぞ? 何に使うんだ?」
「すっぱい果実を湯に入れると、石鹸で洗った髪や体を保護してくれるんだ」
「ふむ? わかった。必要なら家にあるから持ってこよう」
「それって珍しいものなの?」
「そんなことはない、多く自生しているが酸っぱすぎて1度に多くは食べれない。あまり人気のないものだ」
有り余ってるなら、入浴剤代わりに贅沢に使っても良いかもしれない。
あとレモン水のようにしたら魔法の水も、もっと飲みやすくなるかもしれないから試してみようかな。
ウォーターで作り出した水は飲料にしても問題はないことはわかった。
飲むと口当たりがすごくやわらかい代わりに後味になぜか苦味を感じるから、手軽に手に入る清潔な水なのに飲みたくない葛藤がある。
果汁の爽やかさを足すことで飲みやすい飲料水ができると良いのだけれど。
時間を潰していると浴室の熱も抜けて触れられる温度になった。
壁の反射熱で中は暖房の効きすぎた部屋みたいになってしまっていたけど天井のない吹き抜けだ。ウィンドで換気したらすぐにこもっていた熱気は気にならなくなった。
完成した浴室内をユイファ見せびらかす。
「中も大丈夫みたいだからユイファも入ってきて」
「うむ」
「ここが浴室で、奥が脱衣室って言って服を脱いだり、新しい服に着替えたりする場所。この入り口の壁はちょと不便だけど外から中が覗けないようにする為の壁」
「うむ」
「ここがお風呂の中、浴槽はこの前使ったからわかるよね。ここに入る前に石鹸で体を洗う、使う水も浴槽からお椀を使って掬う。これはシャワーといってここにお湯を溜めると少しずつ水が落ちてくるから体を洗う時に便利なんだ」
ユイファは僕の説明を聞いて少し難しそうな顔をした。
「......それで石鹸の使い方なんだけど」
「待て、マナブ。やはり言葉だけでは正しいのか判断できない。カリカナは尚更わからぬだろうな」
「んーそっか」
「もう一度服を着たまま入るのではダメなのか?」
「ダメじゃないけど」
ダメじゃないけど、逆にいいのだろうか......?
「それなら、そうしよう」
「まぁ、ユイファが気にしないのなら......」
確かに頭の洗い方やお風呂の作法は言葉だけ説明しただけでは、本当に正しいのか間違ってるのか判断し辛いのかもしれない。
「もう風呂には入れるのか?」
「そうだねお湯を溜めたらもう入れるよ」
本当なら、水を貯めて、火をつけて沸かすのに何時間もかかるところなんだけど、僕の魔法はある程度の温度調整もできる使用だからそのまま入ることもできる。
それが事前にわかっていたら竈なんて作らずに済んだのだけれど、後の祭り。
まぁ僕が居なくてもお湯にすることが出来るって言う意味では必ず必要なところだ。
「そうか、ならカリカナを連れてこよう」
「それなら、お湯を溜めて準備しておくよ」
「うむ」
ウォーターの魔法で湯を溜める。水量は申し分なく、MPも増えた事で休憩を挟むことなく浴槽を満たす事ができた。
レベルアップの恩恵はやっぱり大きい。色々と効率を上げる為にもレベルアップは優先させたいところだ。
ただそのための下準備にまだまだ時間をかけないといけないジレンマがあるが、下手したら命に係わる事だ。
慎重で確実に勝てる条件を揃えていこう。
「マナブ、カリカナを連れて来たぞ。あとこれが先ほど言っていた酸っぱい果実だ」
ユイファから手渡された果実は、柑橘系の果実だった。
「ひとつは食べてみてもいい?」
「好きにしろ」
手で剥けはするが皮は厚く結構硬い。剥ぐ毎にボロボロと小さい塊となって落ちていく。実を齧ってみると中の薄皮は少し苦味があり、果実の方はレモンの様な強烈な酸味があってそのまま食べるのには確かに難しい。
でも柑橘系の爽やかな香りは飲料水にも入浴の芳香としても最適だと思う。
「マナブ、酸っぱすぎて顔のパーツが全部中央に寄ってるぞ、どうなっている」
「ちょっと、待って回復するのにもう少し時間がいる」
手をユイファの前に掲げてストップをかけて口から酸味が抜けるのを待った。
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