第20話 そうだ畑を作ろう

 ユイファの案内で、い草の織物と魚を交換しようとした時に生ものデメリットが発生した。


 魚はその日の内に食べないと傷むため、一度に大量に魚をもらっても困るのだ。

 い草の織物は僕が欲しいサイズだと作るのに3日程度かかるらしい。


 僕は敷布団と枕をござで代用しようと思っているので合計で5日毎日魚3匹を届けるという約束の元に作成を依頼した。


 というわけで今日を初めの1日として魚3匹を渡した。


 しかしそれでは手持ちの魚が余るわけで、ユイファから余る分の魚を返してもらう。

 早速保存食という現代知識を活かした干物づくりに挑戦してやろうと企てたのだ。


 僕は中途半端な知識からとりあえず魚を開いて干すところから始めようと思った。


 魚の下処理を終えて、いざ開こうと思ったら包丁がなので開けないことに気付く。


 なんで包丁がないんだ。『包丁が欲しい』と心の刻む。


 しょうがないので魚を干そうと思ったけど干す場所がない。

 すべてが準備不足で空回りだ。


 手ごろな細い枝を探して体重をかけて折る。生木だがまあ良いだろう。適当に組み合わせて完成し、魚を吊るして干そうと思った時に魚にはハエが集っていた。


(うげ......)


 内心ではもうコレは食べれないとは思いつつ実験は一応続ける。魚にツルを通して干す。見た目不安しかないが経過を確認しよう。


 なんだかもう若干臭いような気もするけど要観察だ。


 そうこうしているうちに時間はあっという間に過ぎていたみたいで、ユイファが呼ぶ声がした。


 ユイファの家に行くと焼き魚を渡された。毎日同じメニューである。もうマナブの体の8割は魚で出来ていると言っても過言ではない。ある意味魚人だ。


 今日は昨日よりそれぞれ1匹多い。ユイファさんとタジキさんもお腹いっぱい食べて欲しい。


 ユイファとタジキさんは一緒に食べるそうなので、少し農業についての話を聞いてみた。


 タジキさんの農業のやり方は畑となる地に枯草や木材を集めて火をつける事から始めるらしい。

 焼畑というのをどこかで習った気がするのでそういうモノなのだろうと思う。


 それから土を耕し、土壌をつくり種芋を植える。

 そろそろ収穫できる時期なので楽しみに待っていろとのことである。

 ぜひ芋を食べたい。そして僕は確信した。農業は自分でもできる。


 安直な考えだが半放置で収穫できたら儲けものぐらいでやれば失敗してもダメージは少ないと思う。

 何もしなければ収穫は0なのだ。とりあえずできる事はやってみよう。


 まずは小さな範囲で始めようと枯れ枝や枯草を集めてマナブハウスの近くに集める。

 聞きかじっただけの知識でとりあえず燃やす。着火はファイアーであっという間である。


 パチパチと燃える火を見ながら待つ。しかし、待つというのはもどかしいもので、なかなか灰にならない木たちに痺れをきたした。

 今は過ごしやすい季節だとしても火の近くにいるとさすがに汗ばんでくる。


「ファイアー」


 僕は得意の魔法で追い焼きした。


「ははは、燃えろ燃えろー」


 魔法がすぐに消えてしまわないように効果時間アップを最大限活用しMP切れすれすれまで使っては回復するを繰り返しているとファイアの熟練度があがった。



『ファイアの熟練度が上がりました』


 嬉しくなってステータス画面で確認すると、今度は射程距離アップとなっていた。


 射程距離は30㎝程度が限界だったのだけれど、60㎝程度にまで伸びた。


 試しにウィンドの魔法を合わせると1mまで射程が延長できるようだ。まさに火炎放射といった感じで強くなった気がしてハンパない。


 これはやっぱりMPはどんどん消費して魔法を活用しておくべきである。


 あきらめるなマナブ、異世界チート無双はまだまだ全然あり得る。


 完全に焼きの原となり薄い煙が立ち上るマナブ畑予定地に水を撒き完全に消化する。


「ウォーター」


 やっぱり何事も最初は大変である。小さな畑を作るのにも時間がかかる。

 これから土を耕してと作業は終わらない。土壌を作る。


 本来なら一番の重労働になるところを僕なら魔法スキルでなんとかしてしまうのさ。


(土を耕すのはアースの魔法で代用できそうだな)


 汗だくで全身をススで汚して、地面に魔法をかけて途中まで順調に作業を続けていた。

 はずなのに......僕は途中から粘土を捏ねていた。


 屋根のないトウフハウス再来である。


 しかしその大きさは控えめで人が3人すし詰めで入れるかな?と言った大きさしかない。


 1度の成功体験は安易に僕の行動を急転換させてしまった。


 畑? なにそれ美味しいの? 何を隠そう今僕が建設中なのは風呂である。


 僕は作業している間に汗でべたつき、全身かゆくなって急激なお風呂欲が全欲望を占めたのだ。


 最初は竈(かまど)の上に鍋みたいな風呂を作ろうとしたんだけど、『これ足火傷するやつ』と危機察知が働き浴槽部分と湯沸かし部分とを左右で分けてみた。

 半仕切りなので水をかき回せばいい感じにお湯が循環すると思ってる。


 頼む上手くいけ。


 イメージとしては浴槽の隣に風呂炊き用の竈(かまど)を備え付けた感じだ。

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