第17話 俺はパンヤオ斧使い

 パンヤオとふたりで森の中に入る。


 パンヤオは家を建てるのはこなれているらしく適した木を見つけ、いとも容易く切り倒してしまう。


 パンヤオとはこの短い時間で少し打ち解けた感じもするが、さっきの荒々しい態度はよそ者から村を守るための威嚇だったのかもしれないと思い言葉にして彼の心配を取り除こうと考えた。


「パンヤオ、僕は村に迷惑をかけるようなことはしないと誓うよ」

「......そんな心配はしていない」


 まぁ、僕がやるのは内政チートだ。迷惑だとどころか漁業に農業に建築、塩と砂糖の精製など豊かな暮らしというモノを教えてやるわフハハハハハ。


「マナブは魔法使いなのか?」

「そうだよ? パンヤオはどんな魔法がつかえるの?」

「俺は斧使いだから魔法は使えない」


 おかしな質問だなとは思ったけど、魔法が使えない人もいるのか。


「斧使いか初めてみたよ」

「お前は町出身のはぐれだときいた......やっぱり町では斧使いは珍しいのか」

「僕の周りには居なかっただけだよ、斧使いはどんなことが出来るの?」

「......ふん。そこから動くなよ」


 パンヤオは斧を担いで木の前に立って構えた。


「パワーアックス」


 パンヤオの斧に赤いエフェクトが入り上段から斜めに振り下ろす。斧は一撃で木を切断してしまった。


 ゲームで言えばパワースラッシュ的な攻撃スキルだろう。


 通常よりも高い倍率の攻撃補正がある。


 スキルを使わない時は木の側面を削り倒す様だったのが、スキルを使ったら両断である。


 木目に逆らって一刀両断なんて斧の使いかたとしては完全に間違ってる。


「すごい」

「すごくねぇよ、ジャシンの時に全く役に立たない」

「......?」

「こんな大振りだと攻撃が当たらねぇんだよ。斧使いは力があってもいざって時頼りにならないのさ」


 パンヤオの斧は石の斧だろうか、石を研いで鋭くした斧頭(ふとう)を木の棒を固定している簡単な作りだ。


 ある程度太い木も切れるように石が大きいモノが使われている。

 外見からして重そうに見える。


 あれを何度も持ち上げて振り下ろせられるんだから大したものだと思う。


「その斧、使ってみてもいい?」

「ん? あぁ」


 っげ、何だコレ先端の斧頭の部分だけでもダンベルのように重いぞ。8㎏ぐらいはあるんじゃないか?

 簡単な作りのように見えて木も頑丈に固定されている。

 それにしてもこの重さはひどい。


 腰から上にあげるとそれだけで体力がゴリゴリ削られていく。数回程度ならいけるが、何十回も反復作業をするには辛い重量である。


 装備画面を確認してみると、


石の斧

攻撃力 50


パンヤオの石の斧。重くて扱いづらい。



 ふ、ふーん。僕の木の棒+1の25個分の攻撃力ね。



「何してんだおまえ」

「いや、重すぎるよ」


 結局僕は持ち手を持って、斧を振る事は出来ず頭上から落とすので精一杯だった。もちろん木を伐るなんて話しどころじゃない。


「魔法使いは力がないヤツが多いけど、おまえは特にないな」


 先日魔法の攻撃力もないことが発覚したばかりだと言うのに、力までないなんて、なんでそんな現実をわざわざ口に出してくるんだ君たちは!

 それに魔法使いは力がないなんて言うけど、タジキさんが村一番の力持ちって話じゃないか。


「僕はタジキさんが村1番の力持ちって聞いているけど」

「あぁ......ユイファが言ってるんだろ、村1番の力持ちって言うなら俺だぜ」


 パンヤオは自信満々に親指を自分に向けてオレオレってやってくるが、ユイファはタジキさんが1番と言ってたしどっちを信じればいいのか、いやどっちでもいいけど。


 読者アンケート1位みたいな限定的な1番なんだろうか。そういうことなら、僕だって混濁の魔法界隈では1番の力持ちと自称しても良いのではないだろうか?


「まぁ......ユイファの言ってることもあながち間違いじゃない。村で1番強いっていうならタジキだろうな」

「......」


 ゲームの世界では武器として扱われるバトルアックスは巨大なビジュアルなものが多いそれは演出によるものであって、キャラクターたちは片手で振り回したり重さを感じさせない。


 しかし実際使い勝手の良い斧といったら、鉞(まさかり)のような大きな斧ではなく、ハンドアックスと呼ばれるような片手で扱える小ぶりの斧だろう。


 生き物なんて大抵小ぶりの斧が脳天に直撃したら死ぬだろうし。


「もっと小ぶりな斧はないの?」

「小ぶりのヤツはダメだろ。刃が木に深く刺さった時に固定部分がぶつかるからすぐ壊れる」

(それは使い方の問題なんじゃ......)

「木はこれで十分だから運ぶぞ」

「わかった」


 この世界の人間は邪神を恐れている。それほどまでに身近な存在の神が邪神というのは皮肉な話だ。


 パンヤオは4本の木を軽々と担いで、僕は2本の木を引きずって持ち帰った。


「悲鳴を上げる筋肉にヒール」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る