第13話 マナブハウス4

 マナブハウスの内壁と外壁が完成したので後は屋根をつけるだけという段階まで来た。早く中に入ってみたいというユイファをなだめて、屋根づくりを協力してとお願いする。


 僕は最初平たい板状のもので蓋をする感じにすれば良いかな? っと思いたのだけれど、『屋根が平たいと誰かが上に乗って突き抜けて落ちてくる』とユイファに言われてそういう問題もあるのかと苦笑した。


 屋根はユイファの家のモノを参考に作る事で決定。


 まずは長さを揃えた4本の柱を家の4角に配置して地面に刺して固定する。

 そして側面の中央に対となる長い柱を2本配置してコレも固定する。


 そうして手前の短い柱から長い柱へ、それから奥の短い柱をつなげる木を通すと三角屋根の骨組みが完成する。


 僕個人としては板と釘を使って屋根を作りたいところだけどそんなものはない。


 ユイファに聞いてみると細長い木の枝やツルなどを使って網目状に下地を作るらしい。

 更にそこに干し草を編み込んで隙間をなくす。その上から雨を弾く樹皮を被せて固定していくそうだ。


 ユイファの家の屋根に瓦の様に乗っかてるあれは樹皮だったらしい。


 今日は素材がないので作るのは明日になる。屋根づくりの説明を受けている間に日も暮れ始めマナブハウスも冷えていた。


 ユイファのおねだりに、やれやれしょうがないなという雰囲気を出しつつも内心では自慢したくてしょうがないので、ぜひとも今すぐ部屋を見て欲しい。


 ユイファは洞窟でも探検するように壁に手を当ててゆっくりと階段を下りて行った。

 寝床が地面より高くなっているのがなんだか新鮮だったらしく、羨ましがっていた。


 寝床が地面より高いのは寝ている時に地面の埃を吸い込まない為でもある。


 日本でも畳に敷布団は寝がえりの時に埃を巻き上げて吸い込んでしまい咳が止まらなくなる症状が度々起きていたらしい。


「ここの穴はなんだ?」


 次にユイファは壁に空間があるのを不思議に思ったみたいだ。


「ここにはモノを入れるんだよ、服とか毛皮とか色々」

「マナブは賢いな、そんなことまで考えて作ったのか」


 ユイファよ良い反応である。異世界住宅の匠はこういうことをするのである。


「マナブ」

「ん?」

「ここの壁の仕切りをなくせないか?」


 ユイファは異世界住宅の匠がデザインした壁穴式収納に難癖をつけてきた。


「なんで?」

「この壁がなくなったら私がこの中で寝れる」


 まさかのユイファが収納されるためだった。


「さすがに壊せないかな」

「むう」


 ユイファは僕の返答が不服だったのか頬を膨らまして、寝床の台に上がって横になった。


「私がここで寝るーーっ!」

「ユイファに寝られたら僕の寝るところがなくなるよ」

「マナブは父の隣で寝ればよい」


 なんでだよ。想像しちゃったけどおかしいだろ。


「今日はマナブも私の家で一緒に寝るつもりだった」


 ユイファは僕の寝る場所も考えてくれていたらしい。


「マナブはもうここで寝るのか?」


 ユイファの問いに天井を見上げる。


 屋根はないが空は晴れている。


 ここで寝ても問題はないと思う。


 自分の寝床が用意できているのに他人の家にお邪魔するのもなんだかなと思うし、それに気安く話ができてるのが不思議だけど一緒の部屋では気まずくて熟睡もできないだろうな。


「そうだね。せっかく仕上がったからここで寝るよ」

「マナブ......本当に父の隣で寝なくていいのか?」

「寝ないよ?」


 ごめんユイファ、そういうところを遠慮してるわけじゃないんだ。


 逆にマイナス材料なんだけど。


 僕にはユイファの推しポイントが理解できないよ。


「そうか残念だ。それなら干し草をここに敷こう。マナブは干し草をここに運んでくれ私は毛皮をとってくる」

「わかった」


 朝から干していた干し草を回収して寝床に並べる。

 ユイファが持ってきた毛皮を下敷きにしたら良い感じになった。


 僕が干し草と毛皮を手でならしているとユイファがズイッと近づいてきた。


「ちょっと貸してみろ」


 何かおかしなところがあったのかとユイファに場所を譲る。

 するとユイファはベッドの感触を確かめて、ウンウンと頷いて寝床に横になった。


 またか......。


「すごくいい」

「それはよかった」

「私がここで寝る」

「ダメ」

「......」

「......」

「......すぅすぅ」

「ユイファ?」


 寝たふりとか子供か。


「ちょっとユイファ寝たふりしてもダメだよ?」


 反応がないので軽く肩をゆすって起こす。


「もうユイファーー」

「......すぅすぅ」


 あれ、これマジで寝る気なんじゃ......? そうだタジキさんに回収してもらおう。


 僕はユイファの家に行きタジキさんに声をかける。


 タジキさんに自分の家を作った事を説明して現物を見せる。タジキさんも素直に驚いてくれた。


 そういうリアクションがあると、やっぱりうれしいね。苦労したもん。


 めちゃ自慢したい。明日あたりに「いやーー半日で家作っちゃったんだよねーおかげで今日は筋肉痛☆」とか言いたい。


 それはさておき、タジキさんを部屋に招き入れ、事情を説明する。


 さぁユイファを回収してください。


「......はぁ」

「ということなんです。ユイファを起こしてもらっても良いですか」

「ユイファはわがままを言うと止まらない。たとえ起こしても機嫌が悪くなるだけだ」

「そんな事言われても」

「マナブよ、今日は俺の隣で寝ろ」


 ......なんでそうなるの。



 結局僕はユイファの寝床一式を借りて、床で寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る