第4話 死んでしまうとは情けない?

 HPがなくなった僕は倒れて動けなくなった。しかし死んではいなかった。

 動く余力が残っていないだけで意識は割とはっきりとしている。



 意識すると視界の端に見えるHP0を示す数字とHPゲージは未だに赤く点滅したままだったのだけれど、時間の経過で回復してHP1となった。


 そのまま体を休めているとHP2へと回復。注意して見てみるとHPゲージには灰色の部分があり、そこが時間経過することで回復していった。


 HPが4まで回復して赤い点滅から黄色に変わった頃、問題なく体を動かせるようになった。

 HPゲージの灰色部分もなくなり完全にHPの回復も止まってしまったみたいだ。


 ステータスウインドウを開いて詳細を確認する。




朝凪 マナブ Lv.1

混濁の魔法使い


HP  4/10

MP 10/10


ちから   5

みのまもり 5

かしこさ  8

すばやさ  6

きようさ  10

たいりょく 91



 レベルは上がっていない。


 HP4とたいりょくの数値だけが減っている。MPはどうやらスキルの効果で回復してくれたみたいだ。


 ゲームと同じシステムならHPが0になると死亡扱いになる。

 1PLAY専用のRPGとかなら、『ゆうしゃよ、死んでしまうとは情けない』と復活したり、セーブポイントからのやり直しとなるが、ネットゲームだと死んでもその場で復活カウントが進み時間の経過で復活するゲームもある。


 しかしそれはゲームの話だ。今僕がいるこの世界はゲームの様に復活ができる世界なのか?


 ......それともプレイヤーのみ、死のない世界?


「ヒール」


 呪文を言葉にして唱えると、ちゃんと魔法は発動した。


 体内の魔力を意識的に操作したり、念じるような強いイメージ力など定番の仕様は不要のようだ。

 無意識に呼吸をするように、右手で落ちている棒を自然と拾えてしまうように、魔法もその領域で簡単に使えてしまう。

 それはまるで覚えている魔法ならボタンひとつで発動してしまうゲームのような手軽さだった。


 ヒールを使ったおかげでHPは2回復して、MPは1消費した。

 MP消費が1なのはMP消費軽減スキルのおかげなのかそれは良い事なのだが、回復量が2というのはショボすぎる。

 初期の低いHPなら1発で全回復して欲しい。


 回復量が足りないのでもう1度ヒールを唱えようとしたが、発動しなかった。


 不思議に思いウィンドウを開いてみるとヒールのアイコンにクールタイムの表示。こういうところではしっかりゲーム仕様なんだなっとクールタイムが終わるのをじっと待ってるとMPも回復してしまった。


 MPの回復速度はかなり早いのではないだろうか。賢者にはなれなかったが【MP自然回復】の資質スキルはやはり当たりスキルなのだと思いたい。


「そういえばさっき魔物がなにか落としていたような」


 さっきは死ぬかもしれない恐怖でそれどころではなかったが魔物は砕けてガラス片のように散った。


 あれはどこに落ちてるのだろうと、木の棒を拾い上げるついでに見つけて回収した。


【魔水晶の欠片で強化】


 魔水晶と呼ばれるものを全て回収すると、突然ウィンドウが現れた。どうやらチュートリアル的なものはまだ続いているらしい。


 説明の表示に従って操作していくと装備画面が開き、木の棒を選択しろと指示がとぶ、他のところを押しても今は操作不能になっているようだ。とりあえず木の棒を押してみる。


 すると次は魔水晶の選択画面が表示され、魔水晶×10となっているので指示された通り操作を更に進めると、左手に持っていた魔水晶の欠片が突然発光した。


 その光は木の棒の中に吸い込まれていく。


 演出が終わり装備画面で結果を確認すると、【木の棒+1】となっていた......。


木の棒+1

攻撃力 2


森に落ちていた木の棒。軽くて扱いやすい。



「なんか、ものすごく無駄なものを強化させられた気がする」


 死にかけた戦いの末にそこらへんに落ちていた木の棒を強化するのが報酬に変わったのとか嫌すぎる。

 木の棒なんて探せばたくさん落ちている。何気なく目に付いた木の棒をもう一本拾ってみた。


木の棒

攻撃力 3


森に落ちていた丈夫な木の棒。軽くて扱いやすい。

 

「こっちの方が強いのかよ!」


 意味が分からないせめて同じであれよ! っとツッコミを入れつつ、なんだか捨てれなくなってしまった木の棒をを2本手に持つことになってしまった。


 とりあえずこんなところでじっとはしていられない。


 まずは近くに町がある事を信じて移動しよう。


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