黒髪清楚の冷酷美少女を助けたら、俺と二人きりの時だけデレるようになった件
ぷらぷら
第1話 冷酷美少女を助けたらデレた
夕方、仕事帰りや学校帰りの人々で賑わうコーヒーショップ。
そこで俺、一条湊は注文を受けた品を作りつつチラリとカウンターの方を見た。
黒く美しい髪に透き通るような白い肌、そして周りを寄せ付けない冷たい碧眼。彼女の名は七瀬玲。俺のクラスメイトであり、同じバイト仲間でもある。
学校では『冷酷姫』と呼ばれていたり、「人の心がない」など散々な言われようである。
だがそれでも彼女と付き合いたいと思う男は多く彼女に振られて罵詈雑言を受け心が折れる生徒が出るのはもはや恒例行事だ。
「だからさ〜俺と遊ぼうよ!」
「ご注文は?」
カウンターで金髪のチャラい男に話しかけられている彼女はゴミを見るような冷たい瞳で男を見つめながらめんどくさそうに接客していた。
「俺、こう見えても金持ってるからさ! なんでも買ってあげるよ?」
「……ご注文は?」
「だからさ———」
「ご注文がないならお帰りください。そんなところで立っていられると他のお客様の迷惑になりますので」
玲の極寒の視線と容赦のない言葉に男の顔が引き攣った。
ナンパになれてそうな男も流石に彼女は無理だったようだ。
「お客様、お出口はあちらです。」
「くっ!」
男は悔しそうに玲を睨みつけながら店を出て行った。
男が出て行ったのを見送ると彼女はいつも通り接客を再開した。
「湊くんと玲ちゃん、あとはやっとくからもう上がっていいよ」
一通り仕事を終えた俺たちに店長の渡辺さんが俺達に声をかけてきた。
「二人ともなんか飲む? 私が出しとくから」
「いえ、私はもう上がります。お疲れ様でした。」
「う、うんお疲れ様!」
そういうと彼女は更衣室の方へと歩いて行った。
彼女は基本的にバイトの人達ともあまりコミュニケーションを取らない。なので店長、先輩達、そして俺もほとんど彼女と話したことがない。
「相変わらずクールだね、学校でもあんな感じなの?」
「バイトの時は学校より少し優しいですよ」
「えっ、ほんとに? まぁでも悪い子ではなさそうだしね」
「ですね……じゃ、店長。僕今日出た新作で」
「君は遠慮ないね……わかったよ、りょーかい!」
◇
バイトを終えた俺は、新作のコーヒーを飲みながら帰路についていた。
「やっぱ人に奢ってもらったコーヒー美味しい———ん?」
ふと見知った顔が見えて俺は出しを止めた。
そこには七瀬玲と先ほどのナンパ男がいて何やら揉めている様子だ。
「ついてこないでください! 通報しますよ!」
「いいじゃーん、もうバイト終わったんでしょ? わざわざ待っててあげたんだから感謝してよね」
なるほど……七瀬が終わるまで待っていたのか……よほど悔しかったんだな
俺はとりあえず二人に気づかれない位置に移動し、様子を伺う。
「誰も待ってて欲しいなんていってません!ほんとに迷惑です!」
「冷たいなぁ……少しくらい遊んでくれてもいいじゃん」
「お断りします、貴方のような最低で卑劣な男とは同じ空気も吸いたくないです。わかったらさっさと消えてください」
「はぁ……もういいや、強引にでも連れて行くことにするよ」
男の目つきが変わったと思った次の瞬間、男が七瀬の腕を掴んだ。そしてそのまま乱暴に腕を引く。
「ちょっ! やめてください!」
「いいから来いよっ!」
「やめておいた方がいいですよ女の子に乱暴するのは。」
俺は男の腕を掴みながら言った。
すると男は突如現れた俺に訝しげな視線を向ける。
「ああ? 誰だよお前」
「彼女の知り合いというのが一番近いかな……彼女の手を離して早く帰れ」
「誰が———っ!?」
引く様子を見せない男に俺は少し手に力を入れてやると男が焦り始めた。
これでも俺は握力が高い方なのだ。
「帰るか?」
「痛てぇぇっ!」
「ならもう少し力を上げるか」
「わ、わかった! わかったからっ! もう勘弁してくれっ!」
俺が腕を離してやると男は逃げるようその場から去って行った。
そしてこの場に俺と玲だけが取り残された。
ふと彼女の方を見るとこちらを警戒するように俺からかなり距離をとっていた。
「私を助けて貴方何を狙っているの?」
「知り合いだから助けただけだよ、特に意味はない。」
「……本当に?」
「ああ、でもお前が無事で安心したよ」
俺がそう言うと彼女の頬が朱色に染まった。
「……一様お礼を言っておくわ……そ、その……ありがと、助けてくれて」
「気にするな、じゃあ気をつけて帰れよ」
俺は今度こそ彼女に背を向け帰路についた。
だがこの時の俺はまだ思っても見なかった。まさかこの出来事がきっかけで彼女が俺にだけデレるようになると。
【あとがき】
最後までお読みいただきありがとうございます!
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