第6話 晩春

 四月も終わりを迎えようとして、春もずいぶんと深まったと言うべきか、すっかりあたたかくなった。

 日差しがあたたかい。こんな日は、一日中、日に当たって寝ているのが最高だにゃあ。などと思っているのか、うちの猫は、南に面した窓の前に積んだ座布団の上で、春の陽光を浴びながら、昼寝を楽しんでいる。

 その寝姿のなんと幸せそうなことか。春の一日、猫の寝姿を眺め楽しむ。

 そういえば、先代の猫たちも、この時期になると、日なたに並んで昼寝を楽しんでいたものだ。三つ並んだ丸いバスケットの中に、三匹それぞれ、その身をすっぽりと収めて、ぽかぽかとした春の陽光を浴びて、すやすやと眠っていたものである。

 もう二度と戻らない日々。今は亡き三匹の猫たちを偲び、猫たちが与えてくれていたもの、今も与えてくれているもののことを思う。

 思うに、日なたで眠る猫の、その丸い形にこそ、ぬくもりがあり、安息があり、平和があり、そしてかけがえのない幸福がある。


   晩春の ひだまりの猫 そのまるさ

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