第6話 晩春
四月も終わりを迎えようとして、春もずいぶんと深まったと言うべきか、すっかりあたたかくなった。
日差しがあたたかい。こんな日は、一日中、日に当たって寝ているのが最高だにゃあ。などと思っているのか、うちの猫は、南に面した窓の前に積んだ座布団の上で、春の陽光を浴びながら、昼寝を楽しんでいる。
その寝姿のなんと幸せそうなことか。春の一日、猫の寝姿を眺め楽しむ。
そういえば、先代の猫たちも、この時期になると、日なたに並んで昼寝を楽しんでいたものだ。三つ並んだ丸いバスケットの中に、三匹それぞれ、その身をすっぽりと収めて、ぽかぽかとした春の陽光を浴びて、すやすやと眠っていたものである。
もう二度と戻らない日々。今は亡き三匹の猫たちを偲び、猫たちが与えてくれていたもの、今も与えてくれているもののことを思う。
思うに、日なたで眠る猫の、その丸い形にこそ、ぬくもりがあり、安息があり、平和があり、そしてかけがえのない幸福がある。
晩春の ひだまりの猫 そのまるさ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます