第5話 桜と猫

 ずいぶんとあたたかくなり、とうとう桜が咲いた。

 満開の桜は春のにぎわい。心もなにやら浮かれるようである。

 もっとも、桜見物と人が外出するよく晴れた日でも、猫のすることといったら、南向きの窓越しに射し込む日の光を浴びながら、座布団の上で昼寝をすることである。

 猫は風流を解さない。果たして、そうだろうか。あるいは、猫のあり方そのものが、ある種風流と言えはしないか。

 ぽかぽかとした春の陽差しを全身に浴びて、まさしく幸福といった様子で、すやすやと眠る。なるほど、猫は春という季節の楽しみ方を、よくよく心得ているようではないか。

 その姿は『俗』であるようでいて、むしろ『仙』であるとさえ言えるかもしれない。とにかく、どこか超越的ですらある。

 咲き誇る桜も、日なたで眠る猫も、いずれも、春の風物詩ということにしておこう。



   桜咲く 日なたに猫の 昼寝かな

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