第3話 冬場の猫が眠る定位置

 猫と暮らしている方々には周知の事実かと思われるが、寒い冬の夜、猫が眠る場所には定位置というものがある。

 人が布団で寝ていると、肩の辺りを、トントン、と叩くものがある。

 それはむろん、猫の前足である。

「寒いにゃ、布団に入れてくれにゃ」

 とでも言わんばかりの動作であって、こちらが布団を持ち上げてやると、するすると布団にもぐり込んで来る。

 そしてもぞもぞと定位置に至る。それすなわち、人間の股の間である。

 人間の体温のあたたかさと、また、すっぽりと覆われている安心感とで、猫はまるくなりながら、すやすやと眠るのである。

 こちらはこちらで、なるほど、寝返りを打つことは不可能となるが、不思議な安心感とでもいうべきものか、眠りに落ちるのが円滑になる。




冬深し 猫あたたまる 股間かな

 

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