第35話 私と競輪㉞

やがて、舌先が差し込まれ口内に侵入してきた。

上顎や歯茎の裏側など隅々まで舐め回されていくうちに、頭がボーっとしてきた。

いつの間にか、身体の力が抜けてしまい、その場に崩れ落ちそうになったところを抱き止められた。

そのままお姫様抱っこされて、浴室に連れていかれる。

浴槽の縁に座らせられると頭からシャワーを浴びせられる。

全身をくまなく洗い終えると、今度はスポンジを手に取り、泡立て始めた。

モコモコとした白い塊が出来上がると、それを体に擦り付けるようにして滑らせていった。

背中から始まり、腕や足、お尻など隅々に至るまで丁寧に洗われる。

特に胸や股関などのデリケートな部分は、特に念入りに洗われた気がする。

時折、くすぐったくて身を捩らせることもあったけど、

そのたびに優しく窘められ、結局最後までされるがままだった。

一通り洗い終わると最後にもう一度、頭からシャワーをかけてもらい、全身綺麗さっぱり洗い流してもらった。

いよいよお待ちかねの入浴タイムがやってきた。

湯船に浸かり、手足を伸ばしてリラックスしていると隣に入ってきた彼女も同じように寛ぎ始めた。

しばらく無言の時間が続いた後、不意に話しかけられた。

何かと思えば、私に好きな人がいるかどうか尋ねられた。

いないと答えると、何故かホッとしたような表情を浮かべているように見えた。

どうしてそんなことを聞くんだろうと思い、理由を尋ねてみると意外な答えが返ってきた。

なんと私のことを好きになってしまったらしいのだ。

まさか、そんなこと言われるとは思ってなかったので、かなり動揺してしまった。

しかも相手は女性だというのだから尚更だ。

いや、待って、これってチャンスなんじゃないかしら? ふと、そんなことを思い付いた。

「ねぇ、私と付き合いませんか?」

思い切って提案してみると、あっさりとOKしてくれたので拍子抜けしてしまった。

そんなわけで私たちは付き合うことになったのである。

それからというもの、毎日一緒に過ごすようになった。

デートをしたり、ご飯を食べたり、映画を見に行ったり、カラオケに行ったりと色々なことをした。

勿論、私自身が競輪選手なので練習もしっかりとしているのです。

最初は戸惑ったけど、今ではすっかり慣れてきました。

今ではすっかり生活の一部になっている感じです。

最近では、彼女と同棲を始めました。

寝る時は同じベッドで寝ています。

夜になると、決まって私の布団に潜り込んでくるんです。

正直言って鬱陶しかったのですが、それでも受け入れてしまっている自分がいます。

我ながら甘いと思います。

そんなある日のこと、いつものようにトレーニングをしていた時のこと。

コースを走っている時に、ふと違和感のようなものを感じました。

なんというか、いつもよりスピードが出ないというか、

体が重いというか、そんな感じでした。

最初は疲れているだけだと思ったのですが、

日に日に悪化していき、とうとう日常生活にも支障が出るようになってしまいました。

さすがにおかしいと思って病院に行ってみたのですが、特に異常はないとのことでした。

じゃあ一体何が原因なんでしょうか?

考えても全く分かりませんでした。

とりあえず、しばらくは様子を見てみることにしました。

そうして数日が経過したある日のこと、いつものように練習をしている最中の出来事でした。

突然、下腹部に激痛が走ったと思ったら、そこから大量の血が溢れ出てきました。

あまりの出来事にパニックになってしまい、その場から動けなくなってしまいました。

周りの人に助けられて、なんとか医務室まで辿り着くことができましたが、

出血量が多く、危険な状態であることは変わりませんでした。

すぐに緊急手術が行われ、何とか一命を取り留めることができました。

その後、数日間入院することになったのですが、

その間、毎日のようにお見舞いに来てくれました。

それが何よりも嬉しかったです。

退院してからもしばらくは休養を取ることにしました。

その間に原因を突き止めようと努力しましたが、結局分からずじまいでした。

仕方なく、レースに復帰することにしたのですが、

以前のように走れなくなっていました。

しかし、それでも練習して沢山勝利を重ねていかないといけないのです。

その為には、少しでも早く元の状態に戻さないといけません。

そのため、いつも以上にハードなメニューをこなしていました。

その結果、無理をしすぎて倒れてしまいました。

病院に運ばれた後、医師からは暫く安静するように言われたのですが、

それを無視してレースに復帰したところ、案の定体調が悪化してしまいました。

当然の結果です。

その後も何度か同じことを繰り返して、ついに限界を迎えてしまいました。

遂には歩くことすらままならなくなり、車椅子なしでは移動できない身体になってしまいました。

そんな状態で復帰しても勝てるはずがありません。

当然のことながら、引退を余儀なくされました。

これからどうしようかと考えていると、ある噂を耳にしたのです。

なんでも私が所属している練習しているグループに新しいコーチが来たそうです。

その人が凄く優秀な人で、あっという間に私を治してしまったのです。

本当に凄い人です。

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Girldream~Eカップのシンデレラ~ 一ノ瀬 彩音 @takutaku2019

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