第27話 私と競輪㉗

こちらも、それなりの人気を集めているようだ。

(やっぱり、強い人ばかりですね……)

内心で呟きながら、苦笑いを浮かべてしまう。

そうすると、背後から声をかけられた。

振り返ると、そこには先輩の姿があった。

どうやら、何か用があって来たらしい。

話を聞くところによると、明日の出走予定について話があるという事だったので、

急いで支度を整えてから、指定された場所に出向くことにする。

指定された場所は、普段使われていない倉庫のような場所で、

中にはパイプ椅子がいくつか並べられており、その上に腰掛けるように言われたので、

指示通りに腰を下ろした。

そうすると、程なくしてドアが開き、そこから姿を現した人物を見て、

思わず息を飲むことになった。

その人物とは、言わずもがな、高梨さんだったのである。

何故、彼女がここに現れたのか疑問を抱くよりも先に、

まずは挨拶をするべきだと考え、頭を下げることにした。

ところが、次の瞬間、予想外の展開に見舞われることになる。

なんと、いきなり抱きつかれてしまったではないか!

一体何が起こったのか分からず混乱していると、耳元で囁かれた言葉によって、更に動揺させられる事となる。

その内容というのは、次のようなものだった。

曰く、自分は貴女のファンなのだと言うのだ。

それを聞いて、一瞬思考が停止しかけたものの、

すぐに冷静さを取り戻すことが出来たのは、我ながらよくやったと思う。

それにしても、どうしてこのような状況に陥ってしまったのだろうか?

いくら考えても分からないものは仕方ないので、思い切って尋ねてみることにしたところ、

意外な答えが返ってきたことに驚かされた。

なんでも、以前から気になっていたのだという。

それで、つい声をかけてしまったのだとか。

なるほど、そういう事ならば納得できる話だと思ったところで、

一つ疑問が生じたので、それについて聞いてみることにした。

そうすると、案の定と言うべきか、予想通りの返答が戻ってきたことに安堵しつつ、ホッと胸を撫で下ろす。

だが、問題はここから先にあった。

何と、この後の予定を聞いてきたのだ。

それも、一緒に食事に行こうというお誘い付きで、流石にこれは予想外すぎる出来事だったため、

どう対応すべきか困ってしまった。

確かに、この人とは仲良くなっておいて損はないとは思うものの、

だからといって、そう簡単に承諾するのもどうかと思うわけで、

どうしたものかと考えていた時だった。

突然、後ろから肩を叩かれ、驚いて振り向くと、そこにいたのは、先輩の姿でした。

先輩は、険しい表情を浮かべながらも、私を庇うように立ち塞がってくれたお陰で、

何とか難を逃れることができたものの、もしあと少し遅かったら、どうなっていたか分からない状況でした。

助かったと思いつつ、感謝の言葉を伝えるべく口を開く前に、先輩が先に口を開きました。

その内容というのが、先程の件についての話だったようで、詳しい説明を求められました。

そこで、正直に話すことに決めた私は、包み隠さず全て打ち明けることにしました。

そうすると、それを聞いた途端、明らかに不機嫌そうな顔になり、舌打ちをする始末です。

その様子を見た私は、慌ててフォローを入れることにしたのですが、

それが逆効果となってしまったようで、余計に怒らせてしまい、最終的には怒鳴られてしまいました。

そんなやり取りを見ていた高梨さんが、仲裁に入ってくれようとしたものの、

結局上手くいかずに、その場は気まずい雰囲気に包まれてしまい、誰も何も言えなくなってしまいました。

その後、どうやって帰ったのか覚えていませんが、気が付けば自分の部屋にいたことだけは覚えています。

翌日になっても、昨日のことが頭から離れないせいで、

授業に集中することができなくて困り果てていると、いつの間にか放課後を迎えていたので、

さっさと帰ることに決めました。

帰り際、下駄箱の前で靴を履き替えようとしている時に、声をかけられる。

振り返ってみると、そこには高梨さんの姿がありました。

何の用だろうと不思議に思っていると、突然、手紙を渡される。

読んでみると、そこには連絡先が書かれていたので、驚きを隠しきれませんでした。

どうやら、昨日の出来事がきっかけで、興味を持ってもらえたみたいです。

しかし、相手が相手だけに、少し不安もあるんです。

何せ、相手はあの高梨さんですから、下手な真似はできないですし、

下手したら人生が終わる可能性すらありますから。

とは言え、せっかくの機会なので、ありがたく受け取ることにします。

そうして、この日を境に、私と高梨さんとの交流が始まったわけですが、

意外にも意気投合してしまい、今ではすっかり親友と呼べる間柄にまで発展しています。

それだけでなく、お互いの誕生日を祝うために、一緒にケーキを作ったりして、

本当に楽しい時間を過ごせたと思います。

ただ、一つだけ気になることがあるとすれば、

高梨さんが時折見せる寂しげな表情でしょうか。

まるで、何かを諦めたかのような、それでいて、

誰かを待ち望んでいるかのような、そんな切なさを感じさせるんです。

もしかしたら、過去に何かあったのかもしれないと思ったんですが、

本人に直接聞く勇気もなく、結局、有耶無耶にしてしまいました。

いつか、彼女の口から聞けたらいいんですけど、

それまでは、そっと見守ってあげることにしましょう。

こうして、私と高梨さんとの関係が始まったのでした。

ある日、練習を終えて帰ろうとしていると、高梨さんに呼び止められました。

何事かと思って話を聞いてみると、どうやら、

今度行われる予定のレースについての打ち合わせをしたいとのことでした。

それなら、場所を変えた方がいいと思った私は、近くの喫茶店に入ることにしました。

席に着き、注文を済ませた後、改めて向き合う形で座り直すと、早速本題に入りました。

その内容というのが、次のレースで、どちらが前に出るかということでした。

当然、答えは決まっています。

私が前に行くことを選択し、それを伝えたところ、

高梨さんもまた、同じように答えてくれました。

お互いに譲れない部分があるので、ここは譲り合うわけにはいかず、

結局、ジャンケンで決めることになりました。

結果は、私の勝ち。

こうして、無事に決定事項が決まり、

ホッと一安心していると、今度は別の話題へと移りました。

その内容というのが、プライベートなことに関してのもので、

好きな食べ物や趣味、休日の過ごし方など、様々な質問に答えていくうちに、

あっという間に時間が過ぎていった。

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