第25話 私と競輪㉕
その人物とは、かつて同じ高校の同級生であり、ライバルでもあった高梨瑠璃ちゃんだった。
突然の再会に驚きながらも、嬉しさを隠しきれない様子だった。
なぜなら、彼女とは幾度となくレースで競い合ってきた間柄だったからだ。
そのため、久しぶりの再会を喜んだ一方で、複雑な心境でもあった。
何故なら、今の私にとっては、もはや過去の関係でしかないからだ。
とはいえ、せっかく会えたことだし、少しくらい話がしたかったのも事実だったので、
思い切って話しかけてみたところ、以外にも好意的な反応を示してくれた事に安堵しつつ、
近況報告をする事にしたんだ。
しかし、そんなやり取りの中で、突如として現れた人物が、
とんでもない発言をしてきたものだから、その場の空気が一変してしまう事になるとは、
この時の私には想像すらできなかっただろう。
何故なら、その人物とは、私の先輩にあたる人だったからです。
その人が発した言葉というのが、あまりにも衝撃的であったため、
その場にいた全員が固まってしまったかのように動けなくなってしまい、
しばらくの間沈黙が続いた後、 ようやく我を取り戻した私が、
恐る恐る質問してみると、返ってきた答えは予想外のものだった。
何と、彼女は私のことを褒め称えるような発言をしてきただけでなく、
挙句の果てには、いきなり抱き着いてきてしまったのだ。
これにはさすがの私も動揺してしまい、どう対応したらいいのか困ってしまったものの、
とりあえずされるがままの状態を受け入れることにしたんだ。
その間、周りの人達からは好奇の視線に晒されていたが、
そんな事よりも、今はこの状況をどうにかしなければならないと考えていた矢先、
突然、後ろから誰かに腕を引っ張られたかと思うと、
そのままどこかへ連れて行かれそうになったため、必死に抵抗しようとしたものの、
力で敵うはずもなく、なす術なく連れて行かれてしまったんだ。
それからどれくらい経った頃だろうか、ようやく解放された頃には、
既に辺り一面真っ暗になっていて、街灯もない場所に連れて来られてしまったため、何も見えない状態だった。
不安になりながらも、恐る恐る歩を進めていった先で、
誰かが立っている気配を感じ取った私は、恐る恐る近づいてみると、そこには意外な人物が立っていたんだ。
その人物とは、何と佐藤花子さん本人だったんだ。
どうしてこんなところにいるのか疑問に思ったものの、
それよりもまずは状況を把握する事が先決だと思い、思い切って尋ねてみたところ、
返ってきた答えは意外なものだったんだ。
なんでも、たまたま通りかかった際に、偶然見かけたらしいのだが、
その時に様子がおかしいと感じたようで、心配して様子を見に来たところ、
案の定というべきか、予想通りの展開になっていまったというわけだ。
ただ、一つだけ違う点を挙げるとすれば、それが善意による行動だったという事だ。
そうでなければ、わざわざこんな事はしないはずだからね。
そういう意味では、本当にありがたいと思っているんだ。
だけど、その一方で、申し訳なさを感じている自分もいるんだ。
だって、本来なら感謝すべき場面なのに、何故か素直に喜べないというか、
モヤモヤした感じが残っているというか、よく分からない感情に
支配されているような感覚に陥ってしまっているんだ。
これは一体どういう事なのか、自分自身でもよく分かっていないんです。
まあ、とにかく、これ以上迷惑を掛けるわけにはいかないから、
そろそろこの場を離れた方がいいんじゃないかと考えた私は、彼女に向かってこう告げたんだ。
「ありがとうございます、助かりました、さようなら」
そうすると、それを聞いた彼女は、一瞬ハッとしたような表情を浮かべた後、微笑みながらこう言ったんだ。
「どういたしまして、気をつけて帰ってくださいね」
その言葉を聞き終えた直後、ホッと胸を撫で下ろした私は、ゆっくりと立ち上がり、
再び歩き始めようとしたところで、不意に呼び止められてしまったんだ。
何だろうと思って振り返ると、そこには先ほどまで会話していたはずの佐藤花子さんの姿があったんだ。
しかも、どういうわけか真剣な眼差しをこちらに向けているではありませんか。
一体どうしたんだろうと思いながら見つめ返すと、
次の瞬間、とんでもない発言が飛び出てきたんだ。
その内容というのが、何と、 この後、一緒に飲みに行こうというものだったのだ。
確かに、今の時間帯ならまだ営業しているお店もあるかもしれないけど、
だからといって、初対面の相手を誘うなんて普通じゃないでしょ!?
いくら何でも唐突すぎるし、そもそも私は未成年だし、お酒飲めないし、
それに何より、こんな時間に出歩いてたら親御さんが心配するだろうし、
もし見つかったりしたら、それこそ大騒ぎになるんじゃないの? という考えが次々と浮かんできて、
断る理由を必死になって探してみた結果、やっぱり無理ですという事になり、
丁重にお断りさせて頂いた次第である。
ところが、当の本人は、諦めずに食い下がってくるので、
困り果てていたところに、救いの手を差し伸ばしてくれる人物が現れたんだ。
そう、私の先輩である高梨瑠璃さんだ。
彼女の登場により、何とか窮地を脱する事ができたおかげで、
何とか事なきを得たというわけなのです。
それからしばらくして、無事に自宅へ到着すると、急いでお風呂に入り、
汗を流した後、夕食を済ませてから自室へと戻ると、ベッドの上に寝転がりながら今日の出来事を振り返ることにしたんだ。
(それにしても、今日は本当に色々な事があったな)
そんな事を考えているうちに、段々と眠くなってきたため、そのまま目を閉じて眠りにつくことにしたんだ。
翌日、いつも通り競輪場へ向かった私は、いつものように準備体操を始めようとしていたんだけど、
そこで思いがけない出来事が起きてしまったんだ。
何と、そこには誰もいなかったんだ。
いつもなら、この時間になると必ず誰か一人くらいは居るはずなのに、今日は誰一人いない状態だったんだ。
不思議に思いながら周囲を見渡してみると、皆一様に暗い表情を浮かべていたんだ。
その様子を見て、何だか嫌な予感を感じた私は、近くにいた係員さんに尋ねてみたんだ。
そうすると、信じられない答えが返って来たんだ。
何と、昨日行われた試合において、 多くの選手が怪我を負ってしまったために欠場を余儀なくされたというのだ。
その事実を知った瞬間、目の前が真っ暗になってしまったような気がした。
だって、それだけじゃないんだもん。
他にも、精神的にショックを受けてしまい、
まともに練習できない状態の人も何人かいるようだと聞いた時は、もう絶句するしかなかったんだ。
それでも、何とか気持ちを切り替えようと頑張ってみたものの、
そう簡単に割り切れるものでもなく、余計に辛くなっただけだったんだ。
それからというもの、一人で黙々と練習を続けていたんだけど、
全然身が入らないというか、むしろ悪化してるんじゃないかと思えるくらい調子が悪かったんだ。
そんな時だった、不意に声をかけられて振り向くと、そこには見覚えのある顔があったんだ。
そう、そこにいたのは、あの有名な高梨瑠璃さんです。
「こんにちは、今日も頑張っているみたいね」
と言って微笑んできた彼女に対し、軽く会釈してから、また視線を元に戻そうとしたんだけど、
そこで不意に手を掴まれてしまったんだ。
突然のことに驚いていると、そのままグイッと引き寄せられてしまい、
気がつけば、彼女の顔がすぐ目の前にあったんだ。
それを見た瞬間、心臓の鼓動が激しくなるのを感じたと同時に、
顔が熱くなるのを感じた私は、慌てて離れようとしたんだけど、
何故か体が思うように動かなかったんだ。
それどころか、ますます強く抱きしめられてしまい、身動きが取れなくなってしまったんだ。
どうしようか困っていると、耳元で囁かれた言葉に衝撃を受けることになったんだ。
それは、 これから二人きりになれる場所へ行きませんかという内容だったんだ。
最初は何を言っているのか理解できなかったんだけど、その意味を理解した途端、一気に血の気が引いていった。
何故なら、この場所には監視カメラが設置されている上に、警備員も巡回しているはずだから、
下手な真似はできないと思ったからだ。
しかし、そんなこちらの考えを見透かしたかのように、
不敵な笑みを浮かべながらこちらを見つめてくる彼女を前にして、何も言えなくなってしまった。
結局、言われるがままについていくことになってしまった私は、
人気のない場所へ移動すると、その場で押し倒されてしまったのだ。
突然の出来事に頭が真っ白になってしまった私は、抵抗することすらできずに、
ただ呆然と見上げることしかできなかったんだ。
そうすると、彼女はニヤリと笑いながら顔を近づけてきたかと思うと、強引に唇を重ねてきたんだ。
「んぐっ!?」
咄嵯に身を引こうとしたものの、しっかりと押さえつけられているせいで逃れることができず、
口内に侵入してきた舌の感触を感じながら、為す術もなく受け入れるしかありませんでした。
やがて満足したのか、ゆっくりと離れていく唇を見つめながら、
ボーッとしていると、今度は首筋に吸い付かれてしまいました。
チクリとした痛みと共に、赤い痕を残していく様子を眺めていることしかできませんでした。
その後も、次々と襲いかかってくる快感に耐え切れず、ぐったりと脱力して倒れ込んでしまいました。
その様子を見届けた彼女は、満足そうな表情を浮かべると、耳元に口を寄せて囁いてきました。
「ねぇ、気持ちよかったかしら?」
その問いかけに、小さく首を縦に振ると、嬉しそうな笑みを浮かべたまま、
さらに激しく責め立てられました。
あまりの激しさに意識を失いかけた時、ようやく解放してくれる気になったようです。
名残惜しそうに離れて行く指先を見つめていると、最後にもう一度だけキスをしてくれました。
「ふふっ、可愛い子ね、気に入ったわ、特別に可愛がってあげる」
そう言って微笑む姿はとても美しく、それでいて妖艶な雰囲気を漂わせていました。
こうして、私はこの日から、彼女と一緒に練習する仲間となったのです。
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