第24話 私と競輪㉔
結果は惜しくも二着だったが、自分なりに全力を出し切れたと思うし、
何よりも楽しかったと思える一日を過ごすことができたのだから悔いはないと言えるだろう。
こうして無事に終えることができたことを喜ぶとともに、
次こそは必ず優勝してみせるという思いを強く抱いたまま帰路につくことになったわけだが、
帰り際にある人物に出会ったことで新たな展開を迎えることになるとはこの時はまだ知る由もなかった。
その日、いつものように仕事を終えて帰宅しようとした時の事だった。
不意に声をかけられたと思ったら、そこにいたのは何と佐藤花子さんだったのだ。
まさかこんな所で会えるとは思っていなかっただけに驚いたものの、
それ以上に嬉しい気持ちの方が大きかったのは間違いないだろう。
そんな彼女と一緒に歩きながら話している内に、自然と打ち解けることができたように思う。
それからというもの、頻繁に連絡を取り合う仲にまで発展していった私達は、
次第にお互いに惹かれ合っていくようになっていたようだ。
そんなある日、いつものように二人でデートを楽しんでいた時に、
ふと立ち寄ったカフェでの出来事がきっかけで、私達の関係が大きく変わるきっかけとなったのだ。
きっかけというのは、店員さんからの一言によってもたらされたものだった。
何でも、この店の看板娘と呼ばれている子がいるらしいのだが、
その子の名前がと言うらしく、なんでも珍しい名前だという事で話題になっていたそうだ。
興味を持った私は、是非とも会ってみたいと思い、それとなく稀莉さんに聞いてみたところ、
快く承諾してくれたため、早速会いに行ってみることにした。
店に到着するや否や、店内を見渡すと奥の方に座っている女性の姿が目に留まった。
あれが噂の人だろうかと思いながら近づいていくと、向こうの方から声をかけてきた。
話を聞くところによると、どうやら彼女は大学生のようだ。
年齢は二十歳前後といったところだろうか。
それにしても綺麗な顔立ちをしているなぁと思いつつ眺めていると、
急に恥ずかしくなったのか顔を赤らめながら俯いてしまったのを見て、
なんだか微笑ましく思えてしまった。
それと同時に、もっと仲良くなりたいという思いが強くなっていったこともあり、
思い切って誘ってみることにした。
もちろん断られることも覚悟の上での行動ではあったが、
意外にもあっさりOKが出たことには驚いたものだ。
そんなわけで、この日を境に私と彼女の交流が始まったわけなのだが、
それ以降というもの毎日のようにメールを送り合ったりして楽しんでいたのだが、
ある日を境にパタリと連絡が取れなくなってしまったのだ。
心配になった私は何度も電話をかけてみたりしたのだが、一向に繋がらない状態が続いていたため、
仕方なく直接家を訪ねてみることにしたんだ。
幸いにも住所を知っていたこともあってすぐに見つけることができたんだけど、
なぜか玄関先に出てきたのは別の人だったんだのです。
その人は、まるでモデルのように背が高くてスタイル抜群の女性だったんだけれど、
どこか見覚えがあるような感じを受けたんだ。
それで、その人の顔を見た瞬間に思い出したんだけど、
この人は前に一度だけ会ったことがある人で、確か名前は加藤さんと言ったはずだと思うんだけど、違っていたかな?
まあ、そんなことはどうでもいいとして、本題に戻ることにするけど、実はこの人、佐藤花子さんの妹なんだとか。
ちなみに、お姉さんの方は今どこにいるのかと尋ねたところ、現在は海外留学中で不在だと教えてくれたんだ。
それを聞いてホッとした反面、少しだけ寂しい気持ちになったりもしたんだけど、
気を取り直して用件を伝えることにしたんだ。
実は、あなたにお願いしたいことがあって来たんですよと言ったら、
何でしょうと言いながら首を傾げていたから、単刀直入に言うことにしたんだ。
実は、今度開催されるガールズケイリンの大会で、ぜひあなたの力を借りたいと思いまして、
どうかよろしくお願いしますって言った途端に、いきなり土下座されちゃったのです。
これにはさすがに驚いてしまって、一体何が起きたんだろうと思って混乱してしまったんだけど、
よくよく話を聞いてみたら、どうやら彼女は自分が出場する予定だった大会に
出られなくなったことが原因で落ち込んでしまっていたみたいなんだ。
それを知って申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったんだけど、
だからと言って放っておくわけにもいかず、どうしたものかと考えあぐねていると、
不意に背後から声が聞こえてきたんだ。
振り返ると、そこに立っていたのは見知らぬ女性が立っていたんだ。
「あれ、もしかして知り合いの方ですか?」
と聞くと、 首を横に振りながら否定されてしまった。
じゃあ、一体誰なのかと思っていたら、 今度は逆に名前を尋ねられたんだ。
なので素直に答えることにしたんだ。
そしたら、何故か驚かれてしまって困惑していると、続けてこんなことを言われたんだ。
曰く、あなたがここにいるということは、何か目的があって来ているはずよね?
だったら、こんなところで道草食ってないでさっさと済ませちゃいなさいって怒られちゃって、
正直言って怖かったんだ。
だけど、その言葉を聞いた途端、不思議と元気が出てきた気がしたんだ。
だからこそ、思い切って相談を持ちかけてみることにしたんだ。
そうしたら、すんなり受け入れてくれて、更に詳しい事情を説明してくれたんだ。
それによると、どうやら彼女は競輪選手を目指しているみたいで、
今はそのために日夜努力を続けている真っ最中なんだってことが分かったんだ。
それなら話は早いとばかりに、彼女に協力してもらうことに決めたんだ。
そうして始まった共同作業なんだけど、これがなかなか大変だったんだ。
というのも、お互いの実力差がありすぎて勝負にならなかったから。
結局、一度も勝つことができなかったばかりか、逆にどんどん離されていく始末だったのです。
その度に落ち込んでしまう彼女を励ましながら、何度も何度も挑戦し続けたんだ。
そして遂に、ようやく初勝利を手に入れることができたんだ。
その時の喜びといったらなかったのです。
「やったぁぁあああ!!」
と叫びながら、ガッツポーズを決めた瞬間、周囲から拍手喝采を浴びていました。
その中には、私の友達も含まれていたんです。
そんな彼女に対して、ありがとうという言葉を送ったあと、
ギュッと抱きしめ合えば、その瞬間、感動のあまり涙を流してしまいました。
その後、お互いを称え合いながら健闘を称え合った後に、
握手を交わしながら、これからも切磋琢磨しながら、共に成長していく事を誓い合ったんだ。
その結果、更なるモチベーションアップにつながったことは間違いないだろう。
これからも、お互いに支え合いながら頑張ろうと決めた矢先、
ふと気付くと、いつの間にか周囲に人だかりが出来ていて、何事かと思ったら、
なんとインタビューを受ける事になったようだった。
緊張しながらも、何とか答えていくうちに、次第に気分が高揚してくるのを感じたんだが、
そんな中、突如現れた人物がいたんだ。
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