第17話 私と競輪⑰

そんな中で、久瑠宮さんと一緒に出場することになった大会の日がやって来ました。

会場に入ると、たくさんの人が私たちを出迎えてくれましたが、

その中に一際目立つ存在がありました。

それは、今回の大会で注目されている選手の一人、大間賀 芽里さんですか、

その方は常に笑顔を振りまいていて明るく元気いっぱいといった印象を受けます。

(こういうタイプは苦手だなぁ)

と思いながらも、挨拶くらいはしておこうと思い近づいて行きました。

そうすると、あちらの方から話しかけてきてくれました。

「君が噂の新人ちゃんかな?

初めまして、私は大間賀 芽里っていうんだ! 今日はお互い頑張ろうね!」

などと笑顔で握手を求めてきたので応じておくことにしました。

そうすると、次に他の参加者の方とも次々に紹介されていってしまい、

あっという間に時間が過ぎ去ってしまい、開会式の時間になってしまったんです。

それから程なくして始まった競技の中で最初に走る事になった私が、

レーンに向かう為に入場口へ向かう途中、隣にいた彼女に

呼び止められ振り返るとそこには真剣な顔をした彼女の顔があったんですけど、

何かあったのかなと思って首を傾げる仕草をすると、突然抱き着かれてしまったんです。

「え、ちょっと、どうしたんですか!?」

驚く私に構わず彼女は耳元で囁くように言葉を紡いでいく中で

その内容を聞いた瞬間、私は耳を疑いました。

何故なら、彼女が言った言葉というのが、

「あなたが好きです、付き合ってください」

というものだったからです。

その言葉に動揺してしまい何も言えずにいると、

さらに強く抱きしめられてしまいました。

息苦しさを感じながらなんとか抵抗しようと試みるのですが、

全くビクともしなくて困ってしまいました。

どうしようかと考えを巡らせていると、不意に唇が重ねられてしまいました。

キスだったので頭が真っ白になってしまいました。

その間にも舌まで入れられてしまっていて、

口の中を掻き回される感覚にゾクゾクしてしまいました。

ようやく解放された時にはもうフラフラになってしまっていました。

「はぁ……はぁっ……」

荒い呼吸を繰り返しつつその場に崩れ落ちると、

その様子を心配そうに見ながらも手を差し伸べてくれた彼女に

お礼を言って立ち上がりました。

その後、しばらく歩くうちに体調が戻ってきたのを感じて安心していたのですが、

そこでまた唇を奪われてしまうのです。

今度は不意打ちではなくしっかりと意識がある状態でされてしまい、

抵抗する暇もなく受け入れさせられてしまいました。

歯茎の裏や上顎などを舐められたり吸われたりするたびに

ゾワゾワするような感覚に襲われてしまい、その度に身体を震わせていたのですが、

次第に力が抜けていき立っていられなくなってきてしまったのです。

そんな私を抱きしめて支えてくれる彼女の優しさに感謝しつつ身を委ねていると、

「ねぇ、私の恋人になってくれませんか?」

と尋ねられたのですが、正直まだ気持ちの整理がついていませんでしたし、

いきなりすぎて混乱していたので何も答えられずにいると、突然唇を重ねられてしまった。

突然のことに驚いてしまい、咄嗟に突き放そうとしたものの、

ガッチリホールドされていて逃れることができませんでした。

その間も容赦なく貪るように舌を絡ませてきて、

あまりの激しさに意識が飛びそうになったところでようやく解放された時には、

すっかり息が上がってしまっていました。

そんな私の様子を見てクスリと笑いながら、耳元で囁かれました。

「好き」

それを聞いた途端、全身が熱くなっていくのを感じた。

心臓が激しく鼓動し始めたのがわかった。

顔が真っ赤になっているのが分かるくらい熱い。

どうしよう、すごくドキドキしてる……。

恥ずかしくて俯くことしかできなかったんだけど、

そしたら急に抱きしめられちゃったから余計にパニックになっちゃったんだ。

慌てて離れようとしたんだけど全然ダメで、

むしろもっと強く抱きしめられちゃって完全に身動きが取れなくなっちゃった。

そうしたら今度は耳元に息を吹きかけられて変な声が出ちゃったよ、

うぅ〜恥ずかしいよぉ〜! とにかく早く離れないとって思って

必死に暴れたら何とか脱出できたんだけど、

その時にはもうヘロヘロになっちゃってて倒れそうになるところを彼に支えられてたって感じです。

その後はちゃんと自分の足で立つことができたけど、

まだ動悸が治まらないままだったから落ち着くまではしばらく時間がかかったんだけど、

それでも時間が経つにつれて少しずつ落ち着いてきたんだ。

「あの、ありがとうございました」

そうお礼を言うと、彼女はニッコリ笑ってくれました。

なんだか凄く良い人そうだなぁって思いました。

そんな風に思っている時、ふとある事に気付きました。

彼女が私の事をじっと見ているのです。

しかも、何か言いたげな表情でずっとこっちを見ているので気まずくなってきました。

そうすると、いきなり手を握られたので驚きました。

そのまま引っ張られるようにして連れて行かれたのは、

競輪場内の駐車場にある休憩スペースでした。

幸いにも周りに人気はなく、二人きりでした。

何を言われるのかわからずに緊張していると、不意に抱きつかれてしまいました。

その瞬間、心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受けました。

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