第7話 私と競輪⑦

むしろ、健康的な体型になったような気がしています。

この半年間、私の生活の中心は競輪だったと言ってもいいでしょう。

仕事が終わってから寝るまでの間、ずっと自転車に乗っていましたし、

休日も朝から晩まで競輪場に通い詰めていましたから。

おかげですっかり競輪にハマってしまいました。

今では、毎日のトレーニングを欠かさず行うようにしていますし、

レースにも積極的に参加するようになりました。

その結果、徐々に成績が上がってきて賞金も稼げるようになってきたんです。

そのおかげで借金を返すことができましたし、今では余裕を持って生活することができています。

しかし、それでもまだまだ足りません。

もっともっと稼ぎたいと思っていますので、これからも頑張っていこうと思います。

それから更に数ヶ月が経過した頃のことですが……ある日のこと、

いつものように競輪場へ向かおうとしたところ、突然声をかけられました。

振り返るとそこには鈴木さんの姿がありました。

彼女は以前と比べて少し痩せているようでしたが、相変わらず元気そうな様子でした。

そんな彼女から告げられた言葉に私は驚きを隠せませんでしたが、同時に嬉しくも思いました。

何故ならそれは、彼女が私のレースを観に来てくれるという意思表示に他ならないのですから。

それから、毎日のように競輪場に通うようになりましたが、

次第に私生活の方も充実するようになっていきました。

まず、仕事が終わった後は、すぐに帰宅して食事や入浴を済ませた後、

競輪中継を観る習慣ができたことです。

そしてもう一つは、休日の過ごし方が変わったことです。

以前はただ単に趣味で行っていただけだったのですが、今は違います。

私は競輪選手として生きていくことを決めたのです。

今の私なら何でもできる気がしていますし、どんな困難にも立ち向かえる自信があります。

そんな私が今一番欲しいものといえば……やはり勝利です。

だから今日も全力で戦い抜きます。

それが私の生きる道なのですから!

そうして迎えた最終日、最終レースでは惜しくも2着でしたが、

それでも賞金を獲得することができました。

本当に嬉しくて、思わず泣きそうになりましたが、グッと堪えました。

ここで泣いてしまったら今までの苦労が全て水の泡になってしまいますし、

何よりも今こうしてこの場に立っていることが奇跡のように思えてくるからです。

だから最後まで笑顔でいようと思いました。

そしてレース終了後、すぐに競輪場を後にしました。

その後、美香さんと一緒に食事をしながらこれまでのことを振り返りつつ、

今後のことについて話し合いました。

彼女は私の勝利を自分のことのように喜んでくれていましたので、とても嬉しかったです。

また、これからは二人で協力して競輪界で成功を収めていこうという決意を固め合いました。

それからというもの、私たちは毎日練習に明け暮れるようになりました。

もちろん仕事も疎かにはしていませんし、休日もしっかりと確保していますから安心してください。

そんな充実した日々を送りながら月日は流れていきましたが、ある日突然転機が訪れたのです。

それはあるレースでの出来事でした。

いつものようにスタートを切った後、順調に周回を重ねていたのですが、

突然、他の選手と接触してしまいバランスを崩してしまいました。

その結果、転倒してしまい、そのままレースは終了となってしまいましたが、

幸いにも怪我はなく、軽い打撲程度で済みましたので一安心しました。

しかしその後、病院で検査を受けた結果……医師から衝撃の事実を告げられました。

なんと、私の心臓に先天的な欠陥があることが判明したのです。

それを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になりました。

まさか自分がそんな病気を抱えているなんて夢にも思わなかったからですし、

これからどうやって生きていけばいいのかも分からず途方に暮れていました。

そんな私を見かねてか、美香さんは私を優しく抱きしめてくれました。

そして、こう言ってくれたのです。

「大丈夫、きっと治るよ」

と……その言葉を聞いた途端、涙が溢れてきました。

それからしばらくの間泣き続けましたが、

その間ずっと美香さんが側にいてくれたおかげで落ち着きを取り戻すことができました。

そして改めて決意を固めた私は、この日から本格的に治療に専念することに決めました。

まずは医師の指導の下、日常生活における心肺機能の向上を図るべく、

毎日のトレーニングに励みました。

また、投薬治療も並行して行いながら、定期的に検査を受ける日々が続きました。

辛いこともたくさんありましたが、美香さんを始めとして周囲の

人達のサポートもあって乗り越えることができたのです。

そんな努力が実を結び始めた頃、遂に私の心臓は完治したのです。

嬉しくて思わず泣いてしまいました。

そんな私を優しく抱きしめてくれた美香さんの温もりを感じながら、

私は幸せを噛み締めていました。

それからというもの、私は競輪選手としての活動を再開しました。

私がレースに出る際には、いつも美香さんが応援に来てくれました。

そして、私が1着でゴールインすると、美香さんは自分のことのように喜んでくれるのです。

そんな美香さんの姿を見る度に、私は幸せを感じます。

だからこれからもずっと、彼女の側にいたいと思いました。

そしていつかは二人で一緒に表彰台に上がれたら良いなと思います。

相川あいかの競輪人生は、まだまだこれからです。

「よし、今日も頑張るぞ!」

と気合を入れてから、私は自転車に乗って競輪場へと向かいました。

その道中、ふと空を見上げると雲ひとつ無い快晴が広がっていました。

まるで私の心を映し出しているかのような美しい景色でした。

そんな景色を眺めながらペダルを漕ぐうちに、あっという間に競輪場に到着しました。

早速受付を済ませると、更衣室に入ってユニフォームに着替えます。

そしてヘルメットを被ってからパドックへと出向き、他の選手達と挨拶を交わして交流を図ります。

そんな中、ある選手から話しかけられました。

彼女は私よりも年上で、既にベテランの域に達している方でした。

名前は確か、佐藤さんという方でした。

彼女は私に対して興味津々といった様子で、色々と質問を投げかけてきました。

それに対して私は丁寧に答えながら会話を続けました。

そうすると、今度は他の選手達からも次々と話しかけられてしまい、

対応に困ってしまったのですが、そんな時に美香さんが助け舟を出してくれました。

美香さんのお陰で何とかその場を切り抜けることが出来た私はホッと胸を撫で下ろしました。

その後、美香さんにお礼を言った後、お互いに健闘を誓い合いました。

そしてレースが始まり、いよいよ私の出番がやってきました。

緊張しながらもスタートを切ると、最初のコーナーを曲がっていきました。

そしてそのまま第一コーナを通過し、第二コーナへと入ります。

ここで一気に加速して先頭に立ちたいところですが、まだ序盤ということもあり無理は禁物です。

まずは完走を目指しつつ、体力を温存するような走り方を心掛けます。

そうすると、予想通り先頭を走る選手が見えましたので、追いかける形で追随します。

そしてそのまま最終コーナーへと突入しました。

ここで一気にスパートをかけ、一気に追い抜こうとしましたが、

相手もそう簡単には抜かせてくれません。

結局最後まで競り合いが続き、結果は2着という結果に終わりました。

それでも、自分の力を出し切った結果なので満足しています。

レース後、他の選手達と健闘を称え合うと、美香さんが駆け寄ってきてこう言いました。

「お疲れ様! 惜しかったけど、よく頑張ったね!」

と笑顔で労ってくれました。

その言葉を聞いた瞬間、胸が温かくなるのを感じました。

そして同時に、もっと強くなりたいという思いが湧いてきました。

だからこれからも頑張っていこうと思います。

それからというもの、私はより一層練習に励んでいきました。

トレーニングだけでなく、食事にも気を配ることでスタミナをつけ、

筋力トレーニングも欠かさずに行いました。

また、レース時の駆け引きやコースの理解を深めるために他の選手達と一緒に練習することもありました。

その甲斐もあってか、徐々に成績も上がり始め、遂には優勝することが出来ました。

そして遂に念願の初優勝を成し遂げることが出来たのです。

その瞬間は言葉に表せないほど嬉しくて、思わず泣いてしまいましたが、

美香さんが優しく抱きしめてくれたので安心できました。

それから表彰式では沢山の拍手と祝福の言葉を頂きました。

その中には私の両親の姿もあり、涙を流して喜んでくれました。

こうして、私の競輪人生は大きな転機を迎えることとなりました。

その後も順調に成績を残し続けていく中で、私はあることに気づきました。

それは自分がまだ成長途中にあるということです。

まだまだ強くなれるという確信を得たことで更に練習に熱が入り、ますます上を目指すようになりました。

そんな私を美香さんはいつも応援してくれていますし、時には叱り、励ましながら支えてくれています。

美香さんの存在が、私にとって心の支えとなりました。

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