第22話 ドライヤー完成!
「ドライヤーが届いたわ!」
「おぉー」
私はドライヤーの入った箱を見せる。すると、リーナとルークが拍手をした。
ユーリさんと魔封石に魔法を込めてから、数週間が経過した。
あの後すぐに、私はドライヤーの発注をするために、魔封石と共にドライヤーの図案を業者に送った。
そして、数週間が経過した本日、完成したドライヤーが店に届いたのだ。
私は業者から届けられたドライヤーを一目見るべく、急いで箱を開封した。
箱の中から、2つのボタンが付いているドライヤーが姿を現すと、ルークが不思議そうにそれを手に取った。
「へぇ〜、これが“ドライヤー”って言うんですか?」
「そうよ。お風呂上がりにこれを使えば、すぐに髪を乾かすことが出来るわ」
「すごいですね。さすが風呂バカの考えることは天才級……。あ、早く使わせて下さい」
「あんた、私をバカにしてるわよね? バカにしてるわよね⁇ 使わせないわよ⁉︎」
私が頬を膨らますと、すぐにリーナが口を開いた。
「でも、本当にすごいですよ。特に髪の長い女性は喜ぶと思います」
「そうよね、リーナはよく分かってるわ! ドライヤーを一番に使わせてあげる」
私がリーナに抱きつくと、すぐにリーナはルークを振り返った。
「ルーク、見た? 我が主人はこうやって機嫌を取るんですよ」
「なるほど。単純ってわけね」
「……ルークもリーナも、私を見くびってるってことがよーく分かったわ!」
という感じで、いつもの会話を交わしつつ……ドライヤーを試すために、早速それぞれお風呂に入った。
お風呂から上がって、順番にドライヤーを使っていく。2段階調整で、ぬるめの風と熱めの風が出るようになっており、かなり使いやすかった。
ドライヤーを使ってみて、リーナとルークがそれぞれ感想を述べる。
「風の温度がちょうどよくて、気持ちいいですね」
「あー、これならすぐ乾くってのも納得です。便利ですね」
「でしょう? 寒い地域だし、髪が濡れたままって、あんまり良くないと思うのよね」
髪が濡れたままだと、風邪を引きやすくなってしまうし、髪も傷みやすい。ドライヤーがあった方が便利だろう。
「品質的に問題なさそうだし、追加で業者にドライヤーの製造を頼んでみるわ」
この間は、ユーリさんと共にゲットした魔封石すべてに、風と火魔法を込めた。そのため、あと数十個はドライヤーが作れそうだ。
「追加の分が届いたら、早速ドライヤーの提供を始めていくわよ!」
⭐︎⭐︎⭐︎
それから、数週間後。
「リディア様、今日も開店前からお客さんが並んでますよ」
「本当ね。早く店の準備をしなくちゃね」
リーナと共に買い出しから帰ってくると、店の前には行列が出来ていた。
店の前に並ぶ人たちの間を「すみません」と掻き分けて、店の中に入る。
その時に、お客さん達の声が少しだけ聞こえてきた。
「楽しみだね」
「ねー、どんな感じなのかしら」
「待ちきれないわ〜」
「温かい風が出てくるらしいよ」
「早く使いたいね」
「あー、楽しみだなぁ。ドライヤー!」
店の前に並ぶ人たちは、ドライヤー目当てで来店してくれているようだ。
実は、髪をすぐに乾かすことの出来るドライヤーは、話題を呼び、「一度使ってみたい」と来店する人が増えたのだ。
元々、水浴びをしてから髪を乾かすことが出来ずに風邪を引いてしまう人が多かった事情もあり、この地においてドライヤーの発明は画期的だったようね。
口コミが広がり、新たに訪れるお客さん……特に女性客が増えた。
この店を始めた時からは考えられないほど、「風呂カフェ・ほっと」は繁盛していた。
ずっと「繁盛したい」「もっと風呂の良さを伝えたい」と思っていた私にとって、今の状況はこれ以上ないほど嬉しいものだ。
ちなみに、スライム倒した後からの常連さん達は、
「嬢ちゃんの店の良さがようやく伝わったんだなー」
「初期から通ってる常連として誇らしいわ」
「繁盛したいって言ってたもんな〜」
と言って喜んでくれた。
けれど、ドライヤー目当てのお客さんが増えて、これまでのお風呂を楽しみにしてくれていた常連さんが店に入りづらい状況になっているのは、悩みどころなのよね……。
というわけで、私は空き時間に新たな作戦をリーナに話してみた。
「ドライヤーを売り出したいなって思うの」
「どうしてですか?」
「うちの店にしかドライヤーがないから、珍しいもの見たさに、ここに人が集まってしまうじゃない?」
今のままではお店のキャパシティを超えるほどのお客さんが集まってしまっている。
来店してもらえるのは喜ばしいことなのだが、それによってお風呂を求めている人が店に訪れにくくなったら、本末転倒である。
「まだ使っていない新品のドライヤーが数十個残ってるし、これを店の中で販売しようかしらね」
「いいんじゃないですか? 家で水浴びする時用に買いたい人は多いはずですよ。値段はいくらに設定しますか?」
「販売量が少ないから、お値段は高めになっちゃうでしょうね……」
「それでも購入したいって人は多そうですけどね」
今のところ私しか魔封石に魔法を込めることが出来ないので、値段は高くせざるを得ないだろう。
大量生産していくためにも、作り方を商会に提供するのもアリよね。
「どうせならお湯が出る魔法を込めた魔封石も売って、“お家で簡単お風呂セット”みたいなのを作ってもいいかもしれないわね」
「いいですね。お風呂が家庭に参入すれば、リディア様の“お風呂を広めたい”っていう最終目標にも近づきますね」
「でしょう? それじゃあ、具体的には……」
というわけで、ドライヤー販売に向けて、私は動き出したのだった。
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