アイドル

勝利だギューちゃん

第1話

「みんな、のってるかーい?」

「イエーイ」


ステージの上でかわいい女の子が、歌っている。

ミニのスカートひらりで、客席の男子の視線を釘付けにしている。


俺は、ステージの女の子を知らない。

知り合いという意味でなく、名前を知らない。

アイドルには興味がないのだ。


「なっ?いい子だろ?」

「まあな」


友達の付き添いできている。

一緒にいくはずだった別の友人が来られなくなり、チケットを無駄にしたくないので、俺に代役を頼んだ。


「では、ここでみんなの中からひとり、壇上にあがって談笑したいとおもいます」


歓声とどよめきが起きる。


昔と比べて、今はアイドルとの垣根は薄いので、話せる機会は多いと思うが、古風なんだな。


「じゃあ、くじをひくね」

壇上のアイドルが、くじを引いている。


そういえば、入口でカードをもらったな。

俺は、55番か。

まあ、無理だな。


「何番だ?」

「55番」

「俺は。95番だ」


前後に入ったのに、離れている。

順不同だ。


「55番です。55番のこはいるかな?」

俺だ。


得てして興味のない人間ほど当たる。

そういうものだろう。


友達に譲ろうとしたが、アイコンタクトをする。

気にせず行ってこいか・・・


さてと、行きますか。


誘導されて、ステージにあがる。

アイドルは笑顔で出迎えてくれる。


愛想笑いだな。


「久しぶりだね、裕也くん。変わってないね。すぐにわかったよ」

「どうして、僕のことを?」


俺にアイドルの知り合いはいない。

いないはずだ。


「ステージからも見てたよ。相変わらずそっけないね」

相変わらずって・・・


「裕也くんじゃない。緊張しないためには、客席全体ではなく、ひとりにターゲットをしぼり、その人だけに聞かせたらいいって」

「?」

「だから、私は君をみて。歌ってたんだよ」


思い出しました。


あなたは、小学生時代の同級生の女の子、葉山優子さんだ。


「でも、よく僕が来てるってわかったね」


「女の子は、好きな人の事なら、すぐに見つけられるんだよ」

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アイドル 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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