第5話
戦いは何百回と続いた。
俺たち二人は浜辺に座り込んでいた。またも失敗してループした直後だった。
波の音を聞きながら、アイと見詰め合う。
「中々上手くいかないね」
アイは「そうだね」と疲れ果てた表情をしている。
日に日に疲労の色が強くなっていくアイに、俺には同情しかできない。
アイの言うとおり、何も出来ない足手まといな男なのだ。
近くのホテルに宿泊した。
食事を摂りながら対応策を話し合った。
「何も殺そうとしなくても」
「方法がないんだ」
「世界を終わらせる力がウイルスによる影響だったら、ワクチンのようなものでウイルスを殺せないのかい」
「24時間では作れない。リワールドを殺すしかない」
「話し合いで穏便に解決するとか」
アイは首を振る。
「君は殺人者になるんだよ」
「一生背負って生きていく。覚悟はできている」
俺は十七歳。アイは? ほぼ同い年だ。殺人者として生きていく覚悟ができているなんて。そんなことを言う年齢じゃないだろ。
世界を守るために命を削ってループをし続ける。ループで元通りになるとはいえ、腕を切り取られたり、何度も死にかけたり。その体験だけでもどれだけの精神的な苦痛を味わっているか。青春を楽しむ年頃の俺たちが経験することではない。俺がアイの立場だったら、精神崩壊しているに違いない。だから、精一杯のアシストをしないと。それが、俺とアイが出会った理由なんだ。ループの神様が手を差し伸べたんだ。
「でもさ、アイのほうがずっと大人だね」
そんなフォローしか俺にはできない。
「それって、私をおばさんって言いたいのかい」眼光が鋭くなった。
「いいや、アルマ・アイは立派で魅力的なレディだよ」
「何を言い出すのだ。やはり君はおかしいよ」
アイは頬を紅色に染めながら俯いた。
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