第34話 すべてをぶっ潰そう
「まぁまぁ。まず、僕たちを狙っているという他のクラスの情報をもらおうか」
「はい。まず、アイツらはここから500メートル程離れた所で、罠を張ってリオンさん達を待ち構えています」
「ふーん。僕たちがそこへ行かなければ、どうするつもりなんだろうね?」
「作戦としては、搖動の部隊が、リオンさんたちのウチの一人を攫うつもりのようです。具体的には、カーラさんを攫うつもりのようです」
なるほど、それで追いかけて行ったところを袋叩きにしようって魂胆か。
カーラさんを狙うっていうのはちょっと容認できないな。
「そんなの許せないわよ!」
「ウチ、やっぱり弱いと思われてるんだね」
激昂するエリスさんに、少し落ち込むカーラさん。
自分が弱いと思われていることにズーンとなっている。
エリスさんを狙わないのは一応強いからだろうか。それとも、ただ嫌われたくないだけか……。
「オレたちがその程度でやられると思っているんだね。それは心外だ」
「まぁ、あっちに何人いるかわからないけど、一気に魔法を撃ってくるつもりだろうねぇ」
「こっちはカーラさんの魔法で返り討ちにしよう」
バアルくんは戦うことにノリノリだ。あまりやりすぎないようにしないと死人も出かねない。
「アイツらは、雷魔法の奴が主体となって指示を出しています。だから、最初に雷系統の魔法が放たれるはずです。その後に、後を追うようにいろんな種類の魔法で一気にカタをつけようとしているようです。しかし、それぞれ小規模魔法がほとんどです。中規模魔法はごく一部です」
その徒党を組んでいる奴ら、作戦内容が筒抜けのようだけど、大丈夫か?
「それにしても、君たち、ずいぶんアイツ等に辛辣だね」
「そりゃそうですよ。事ある毎に! 奴らは僕たちを魔法の練習台にして遊ぶんです! どれだけの生徒が怪我を負わせられていることか!」
「それは酷いな。そんなことになっているなんて知らなかった……」
「我らは落ちこぼれと言われていますから、何も言えないんです!」
「ふーん。それはちょっと懲らしめたくなってくるねぇ。腕の一本や二本は覚悟してもらおうか」
僕がそう口にすると黒髪くんはブルリと震えた。
「やっぱり、リオンさんは別格ですね」
「うん? なにが?」
「なんというか、今の言葉を口にした時の雰囲気が恐ろしかったですよ」
「そうかな?」
僕はさっき確かに少し、殺気が漏れてしまった。弱い人をいじめるような奴らは嫌いだ。
自分の自己満足のために生きているんだろう。
そうだ。いいこと考えた。
「ねぇ。こういうのはどう?」
僕が考えたことを伝えて、みんなで作戦会議をし、実行に移した。
◇◆◇
「魔物がいないねぇ?」
「どこにいるかなぁ?」
僕たちは近づいてくる気配に気が付きながらも、カーラさんとエリスさんをあえて少し離れた所に配置して雑談をしていた。
時は来た。
カーラさんの頭に袋をかぶされて二人掛かりで運んでいく。
「あっ! カーラさん!」
僕は慌てているふうに叫ぶ。
バアルくんも「待て!」といいながら追いかける。
エリスさんも後を追うように駆ける。
三人は攫われたカーラさんを追いかけていく。
このままでは徒党を組んでいる奴らの思惑通りに進んでしまうのではないかと、お思いだろう。
それはそうだ。なぜなら、僕が考えた作戦は。
『作戦に乗っかって、その上ですべてをぶっ潰そう』だ。
後を追い、「待て―!」といいながらばれない様に一生懸命ついていく。
その後に起きることがわかっているだけに、作戦は立てやすい。
まずは、罠の張られているところへと誘導されるがまま。
奴らがスタンバっているところへ着いた。
すると、開けた場所で周りが小高くなっており、上から見下ろせるような場所であった。
「撃て―!」
奴らが号令のもと、一斉に雷魔法を放ってくる。
雷魔法は発動から魔法が到達するまでが一番早い魔法だと言われている。
だから、奇襲に向いていることは間違いない。
「ダークベール」
だが、魔法が届く前に待機させていたバアルくんの防御魔法を発動させる。
闇のカーテンが僕たちを守る。
初撃が防げれば、後はこちらの作戦通り進める。
「よいしょぉ!」
カーラさんを攫っていた生徒の腕を手刀で切り裂く。
手首から先がなくなった生徒は叫び声を上げながらもんどりうつ。
カーラさんの頭の袋をとってあげる。
「もぉ! もうちょっと丁重に運んでほしいもんだね! まったく!」
袋をとると頬を膨らませながら、プリプリと怒っている。
そんな怒りを露わにしているカーラさんは、その矛先を周りの潜んでいる生徒へと向ける。
「クソッ! 防がれた! 次―! 一気にいけー!」
放たれた魔法は周囲から津波の如く押し寄せてくる。
これは、バアルくんの魔法だけでは対応できない。
そこで、カーラさんである。
「灼熱の炎よ! 我の魔力を糧に辺り一面を燃やし尽くせ! いっけー! イラプション!」
時が止まったかのように音が消えた。
次の瞬間には、僕たちを中心に炎が噴火した。
噴火した炎は溶岩の様に粘度のある炎で、迫りくる魔法を飲み込み、周囲を焼き尽くしながら進んでいく。
「うわー! にげろー!」
「きゃー!」
「うわっ! くるなぁー!」
こちらを狙っていた生徒たちは逃げ惑い、そこは地獄の様相になった。
すべてをぶち壊す作戦はこれで終わりではない。
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