第27話 魔物狩りへと前進

 四人で合流したことで、魔物の討伐へと動くことになった。


「よーっし! 魔物を狩りに行くわよぉ!」


 気合十分のエリスさん。

 そんな高いテンションで挑むのか。


 ただ、このくらいの人数で動くというのは、それだけ目立つわけで。


 小高い山の上である、遠距離からアースアローが飛んできた。

 拳からの衝撃波を放ち、相殺する。


「リオンくん、ありがとう! オレたち狙われてるよ!」


 バアルくんが注意を促す。

 魔法が飛んできた方へと牽制の魔法を放っていく。


「敵を射抜け! ダークランス!」


 着弾する音が響き渡る。

 だが、今度は違う位置からアースランスが飛んできた。


「ウインドウォール」


 エリスさんがすかさず防御魔法を展開する。

 あっちの敵の数もわからない。

 移動しながら攻撃しているのかもしれない。


 なかなかやるみたいだ。

 魔力探知にも反応しない。

 うまく隠れている。


「このままだとこっちが不利かもね?」


「あっちからは捕捉されているからねぇ」


「オレは攻めようか?」


「援護するよ」


「頼んだ!」


 バアルくんは小高くなった山へと突っ込んでいく。

 やる気があっていいねぇ。

 草を剣で払いながら突っ込んでいく。


 また違う位置からアースアローがバアルくんへと放たれた。


「ウインドアロー!」


 放たれた数と同じ数の風の矢が飛んでいく。


「あっ! 一個外れた!」


 おっちょこちょいのエリスさんは肝心なところで魔力操作を誤ってしまったようだ。


「ほっ!」


 僕が慌てて衝撃波で撃ち落としたが。

 バアルくんのすぐ近くで土の矢が粉砕されてしまった。


「ちょっと! ちゃんと援護してよ!」


「はははっ。ごめんごめん!」


 頭に手を置きながら「てへっ」といって笑っているエリスさん。

 その顔を不満げにバアルくんはみているが、すぐに前を向いて山へと登っていく。


 林の奥でガサガサと敵が慌てたような動きを見せている。


「みんな! ゴブリンマジシャンだ!」


 顔を少し出したバアルくんはそう叫んだ。


「だったら、力を抑える必要はないね。カーラさん」


「うん! オッケー! 灼熱の炎よ! 燃やし尽くせ! フレイムスロワー!」


 炎が射出されて林を焼き尽くす。

 ゴブリンマジシャンも体から炎を上げて、燃え上がっていく。

 五体ほどいたようだ。


「ちょっとぉ! オレも燃えそうだったんだけど!」


 バアルくんが抗議の声を上げている。

 僕たちはなだめながらゴブリンの討伐部位である耳を取得する。

 

「まぁ、まぁ。無事でよかったじゃない。カーラさんの魔法はさすがの威力だね!」


 やはりカーラさんは火力が強い。

 その弊害として、森が燃えるわけだけど。


「アップドラフト!」


 エリスさんが魔法を発動する。

 炎は上昇気流に乗って天へと火柱を上げ、燃えるものが無くなると鎮火した。


「エリスちゃん、ありがと!」


 カーラさんがエリスさんに抱きついている。

 なんと可愛らしい光景だろうか。

 僕はのほほんと見ていた。



◇◆◇


 その頃、負傷して離脱したもの達は、配信の様子を見てのほほんとはいかなかった。

 戦々恐々としていたのである。


「黒襟がなんかやったら魔法が爆散したぞ!?」


「ありゃ、なにやってんだ?」


 騒ぎ出した人達がいる。


「あっ! あれは、きっと私がやられたヤツだわ!」


「あぁ! ボクもやられた!」


「あたいもだよ!」


 リオン達が接敵した魔物は意外と多くの人を場外へと葬っていたらしい。


「あっ! 突っ込んで行ったぞ!?」


「無謀よ!」


 エリスの迎撃した場面が映される。


「あぁ! 一個外れたぞ!」


「きゃー! やっぱり無理だったのよ!」


「ありゃやられるな」


 土の矢が爆散する様子を見て、見ていた生徒たちは口をあんぐりと開けていた。


「何が起きた!?」


「黒襟が動いたように見えたぞ!?」


「突っ込んだやつが何か言ってるぞ?」


 配信を見ていた生徒達は固唾を呑んで見守る。

 すると、一気に画面が真っ赤に染った。


「うおぉぉぉ! 何だあの威力はぁぁ!?」


「あれが同じ一年の魔法なの!?」


「何じゃありぁ」


「炎が天へと上っていくぞ!」


「あぁ。凄い」


「火が消えたわ……」


「おぉ。消化までしたのか。アイツらは」


「ははっ。すげぇや」


 離脱した生徒は呆然としていた。


◇◆◇


 その頃同じように配信を見ていた教師達。


「おっ! 遂に合流しやがったなぁ。あの四人はやるぞぉ!」


 アダマンタイトクラスの担任は気合いが入っていた。


「ふっふっふっ。黒襟くんはあまり目立たずにというのを貫いているようですね」


「そうだな。だがよぉ、他の三人に引っ張られて段々と実力を出さざるを得なくなってきてんじゃねぇのかぁ?」


 ニヤリと笑う担任に、歴史の教諭は頷く。


「そうですね。徐々に実力が発揮され、それが周りにも認められれば最年少ダイバーの登場も有り得ますな」


「そうだなぁ。ダンジョン協会が早くダイバーにさせろとうるせぇんだよ。だけどなぁ、今は学生でいさせてやりてぇって気持ちもある」


「まぁ、今だけですからな。学生っていうものは」


「あぁ。だからよぉ、なるべく長く学生をさせてやりてぇよなぁ。その間に、あの三人には自分のことを話すといいけどなぁ」


 眉間に皺を寄せてそう語る担任。

 その言葉に深く頷く歴史の教諭。


「彼のタイミングで話すのでしょう。あんな格好をしていてもできた、せっかくの仲間なんですから」

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る