第二章 狩猟競技会編
第21話 狩猟競技会かぁ
男を逃がしてしまったあと、バアルくん達の元へと行くと倒れている三人がいた。
「大丈夫!?」
「あっ……リオンくん。なんとか無事だよ。全力を出し切っちゃってね。魔力切れさ」
なんとかしのぎ切ったらしい。
僕が始末するのもう少し遅かったら、犠牲が出ていたかもしれない。
「あぁあ。せっかくの海水浴が台無しね。もぉぉぉ! せっかく楽しみたかったのにぃぃ!」
「回復薬飲んで少し魔力回復したら遊んだら?」
「その手があった!」
エリスさんは回復薬の存在をすっかり忘れてしまっていたようだ。師匠の修行では自然回復力を高めるために回復薬の類は使わないからね。
回復薬を飲んで魔力が回復したエリスさん達三人は海水浴を満喫したのであった。
その次の日、学院が再開されてダンジョン攻略の授業も再開された。ダイバーの人を護衛につけることにしたそうだ。
一応僕達が襲われたことと、奴らが話していたことは報告している。担任は話半分に聞いていたようだ。
何度かダイバーの人とダンジョンへと潜ったが襲撃はなかった。やっぱりあの男が言っていた通り、しばらくは襲いに来ないのかもしれない。
「あー。最近様子をみていたんだが、襲撃はないようだ。ある筋の情報もあるしな。延期されていた狩猟競技会を開催することにした!」
聞いたことがないその競技会は、クラス全員で魔物を狩り魔物の討伐部位を取得。競技終了時に持っていた討伐部位が得点となるらしい。
つまり、他の人が狩った討伐部位を奪ってもいいということだ。これはかなりの混戦が予想される。凄い大変そうだなぁ。
そう呑気に構えていると衝撃の言葉が紡がれた。
「これの順位で戦闘、ダンジョン探索の点数を加算されるからなぁ! あんまり点数少ないと単位落とすぞぉ」
先生の目線がなんだかこっちをチラッと見たような気がする。困ったものだ。目立たないように魔物狩らないで大人しくしてようと思ったのになぁ。
まぁ、いいか。そこそこの点数を出せばいいんだ。うん。そういうの得意だから大丈夫。
「ちなみになぁ、クラス毎の点数も出るんだわ。このクラスがトップじゃなかったら、お前らわかってるよなぁ?」
その言葉にズーンとなるクラスメイト達。プレッシャーが半端じゃない。
「まぁ、でもさ、僕達なら何とかなるんじゃない?」
バアルくんがそんな事を口にした。
目立つの前提の話をしてるよね?
そんなの困るんだよなぁ。
目立っちゃうじゃないか。
「いやー。程々に頑張れば……」
「これは私たちの力を見せる時が来たわね!」
エリスさんも僕の話を聞かず、ノリノリである。拳を掲げてなにやら凄いやる気を出している。
「ウチ、頑張る!」
なんとカーラさんもやる気に満ち溢れている。どうしたんだい。そんなにやる気を出して。
「リオンくんも頑張ろ! ねっ?」
顔を近づけて笑顔を見せるエリスさん。
近いなぁ。僕、そんなに目立つのは嫌だなぁ。
「いやー。僕は程々に……」
「あー。また目立たないように隠れようとしてるなぁ?」
「いやー。まぁ、なんていうか、程々に……」
すると、腕をガシッと掴まれた。
柔らかいものが当たってますけど?
「逃がさないからね? 私達と一緒に行動するんだからね?」
「うーん。まぁ、その時に考えようよ。ねっ?」
「むー。ダメだよ? 強いんだから、ちゃんと評価されないと」
だから、そういうのが嫌なんだよねぇ。
別に僕が強いわけじゃないんだよ。
この竜人っていう種族が強いだけで。
反則的な種族だからさ。
「僕は程々の強さだよ?」
「はぁ。ダメだ。バアルくん。パス」
僕は、自分を強いだなんて言えないよ。
「まぁさ、いいんじゃない? その時に連れされば」
「まぁ、そうね!」
バアルくんとエリスさんはなんだか、意気投合している。
こんな感じで目立っちゃうのは勘弁して欲しいんだよねぇ。
◇◆◇
エリスは部屋で今日のことをカーラと話していた。
ホンットに頑固なんだからリオンくんはぁ。
なんであんなに強いのにそれを出そうとしないんだろう。
もっと出せばいいのに。そうすればこの学院でだって英雄って言われるのに。強いのにどうして隠すの?
それは、バアルくんとも話したんだけど、答えは見つからないままだった。
バアルくんいわく、何か理由があると思うとのこと。それが分かれば苦労しないけど、話してくれるまで待った方がいいんじゃないかなって。
それはそうだけどさぁ。
「ウチにはよくわからないけど、リオンくんは何かただならぬ物を感じるよね?」
一緒の部屋のカーラとはよくこんな話をしてるのよねぇ。リビングのソファーに座りながら。
「そうだよねぇ? 勿体ないよね? あんなわけわかんない服きてさぁ。一体なんのためにあんな服きてるんだろう?」
「うーん。それも目立ちたくないからなんじゃない? 何かあるんだよ。きっと」
「私だって、待っていたいよ? でもさ、気になるじゃん?」
この胸を締め付けるような痛み。
何かを隠されているんだと思うといつも痛くなる。
どうして話してくれないの?
「誰もが気になっているんじゃない? たださ、先生は知ってるんじゃないかなぁ?」
「なるほどねぇ。だから、目立っていても何も言わないのかぁ。思い切って聞いてみようかなぁ」
「まぁ、ほどほどにしないとさ、嫌われちゃうよ?」
それだけは嫌なの。
嫌われたくない。
でも、みんなにリオン君の凄さを知ってほしい。
「嫌われるのはいやだなぁ」
ソファーへぐでっとしながら物思いに耽るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます