本編(1)

 深夜のラジオ放送の中でも、特にお気に入りだったのは『白洲コウセイのぶっかけラジオ』という番組だった。それは、深夜2時から3時までの1時間を不定期に放送するというゲリラ的な番組だった。

 いつ放送されるかわからない番組。新聞の中面にあるラジオ放送欄には、その名前が載ることは無い。本当にゲリラ的に放送される番組であり、偶然に聞けた時の嬉しさといったら言葉では言い表せないほどであった。


 なぜ、この番組がゲリラ的であったかといえば、それは野球のナイター中継が関係していた。

 当時の野球中継はテレビ放送されており、ラジオでも中継放送がされていた。

 テレビ放送の方は、午後9時を過ぎると最大1時間程度は延長して放送することもあったが、それ以上の長さになる試合はそこで放送が終了してしまうことが多かった。

 それに対してラジオ放送は、試合が終わるまで中継し続けたのだ。そのため、ナイターが延長になると、その後でやるはずだった番組が放送しなくなるか、後ろにずれこむということが生じる。生放送の番組などは中止になることが多いようだったが、番組によっては放送を後ろ倒ししてやるものもあった。


 そういったことから発生するのが深夜帯の空白の1時間であり、その空白の1時間を埋める番組が『白洲コウセイのぶっかけラジオ』だった。


 だから、当時野球が延長に入ったりすると、もしかしたら『白洲コウセイのぶっかけラジオ』が聞けるかもしれないと思い、深夜0時から3時頃まではずっとラジオを聴くようにしていたのだ。

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