深夜ラジオ

大隅 スミヲ

プロローグ

 学生の頃、ラジオ放送を聴くのが好きだった。

 特に午前0時から3時頃に掛けて放送されると呼ばれるものが大好きで、電気を消した暗い部屋の中で、布団を頭までかぶってラジオ放送を聴くのが楽しみで仕方なかった。


 ラジオは携帯型の小型ラジオだったが、デジタル式のものではなくダイヤルを動かして周波数を合わせて使うものだった。そのせいもあって、うまく周波数を合わせないと雑音交じりの放送を聴くことになってしまうのだ。

 お気に入りのラジオ局はAM放送であり、各放送局の周波数は頭の中に入っていて、ダイヤルの数字を見なくてもそのラジオ放送局に周波数を合わせることはできた。


 夜になると「早く寝なさい」という母の声に従う振りをしながら布団に潜り込み、イヤフォンを装着してラジオのスイッチを入れる。

 電源がオンになっていると赤色発光ダイオードが光るようになっていたが、そこをガムテープで閉ざして、暗い部屋でも光が漏れないようにしていた。


 ここからは、ひとりの時間。ラジオ放送を存分に楽しめる時間なのだ。

 わたしは布団を被ると、全神経を耳に集中させてラジオ放送を楽しむのだった。

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