第四話 魔剣士試験


ギルドの受付に着いた。


受付のお姉さんに色々聞いて試験の申し込みをしてもらう。なんと、今は客が少ないからすぐに試験をうけられると。


これはもうやるしかない。


案内されるまま受付の奥の道に進むと、円形の競技場があった。雰囲気はコロッセオだ。そこらには凸凹と台があったり、細い筒が落ちていたり変な感じだ。


そして真ん中には、大きな剣を両手に持った大きな男がいた。


「お前が試験を受けるのか?」そう聞かれた。


「はい。」返す言葉は3秒以内、それに短く。これが受かるための話術。まぁこの試験は倒す以外の項目はないけどね。


態度が悪くても悪すぎない限りは倒せば合格だ。


「名前は?」


「ライト・モスタントです」


結構圧を感じるなぁ。でもスキルの威圧ではないな。


「試験を始める。アナザー・マイン」男が手をパチン!と勢いよく叩くとその隣に分身が現れた。


「レベルは?」


「70です」


「だいぶ高いな。ならば…」男はもう一度パチン!と手を叩いた。「お前には俺2人に勝ってもらう。いいな!」


「はい!」


「それでは始める」


いつの間にか本体はどこかへと消えていた。男の分身2人は左右から同時に攻撃をしようとしている。


「深淵魔法・戊」地面に魔法陣が展開され相手の動きが読めるようになる。


あぁそういうことか。次の1秒1秒の動きが見える。このまま動かなければやられる。


「ブラッディ。メラ!」


これは略術式である。今まで使ったことのある術式の略を言ってもそれと被らないものがあればそれが使えるのだ。


だから今回のブラッディ。メラ!は血の剣を作り黒い炎を纏わせるのをこの一瞬でやったのだ。


邪王の知識には助かってるぜ。


相手の次の動きのところで剣を振りちょうど当たるようにする、、、だが相手には当たらなかった、、なぜ?


そう考えていると、


「後ろがガラ空きだ!」もう片方の男が背後から剣を振る。


腰をかすめた。HPは減ってない、服が切れただけか。


相手の剣は持ち手は黒く刀身は赤く、とても硬そうな感じだ。でもなんだろう。時々刀身がゆらめいているように見える。


「多角的視点」


おおーすごっ。自分を真上から見れる!あ、いろんな方向からも見れる。二人視点、三人視点、、、面白いな!


相手が突っ込んでくる。重そうな剣を軽々と振った。多角的視点を使っているので簡単に避けられる、が、深淵魔法・戊を使って少し先を見ると、なんとさらに振って刀身を揺らめかせて伸ばしている。


なるほど、等身をゆらめかせてリーチを伸ばしているのか。面白い剣だ。


「ブラッディービルド!」と叫び手を開いてクイっと上にまげた。相手の足元に小さい魔法陣が5つ出てきて、そこから血でできた槍が相手を下から突き刺した。


ちなみにこの魔法陣から出てくる血は次元式収納の中の亡骸の物だ。次元式収納に入れると入れたままの状態を保持できて便利だ。


そこには5本の槍に突き刺された相手がいるはずだった。だが、そこにはいなかった。


多角的視点で捉えた。右と後ろから突っ込んでくる相手たちを、高くジャンプして軽く避け、掌を突き出し、「スピア・アロウ」小さい5つの魔法陣から矢が勢いよく放たれた。矢はまっすぐに進み、相手を確実に刺した。はずなのに、そこにあるのは地面に刺さった矢だけだった。


「おいおいそんなんでいいのか?」


後ろからの攻撃。避けた!のに、避けた先でもう1人に切られた。多角的視点では捉えられなかった。


HP残り5500。くそっ!どうなっているんだ!


相手は2人並んで剣を構えると2人同時に来た。「スピア。メラ!」矢が相手に当たる瞬間に相手の下にと自分の真後ろに魔法陣が展開された。その中に落ちるとと自分の真後ろに展開されている魔法陣に、相手が現れた。なるほど、転移魔法か。ならば、、、


「ソウルコントロール!」


次元式収納から3つの操り人形を出して動かす。


人形たちに戦わせている間に考える。そして、手に力と魔力を溜めて魔法陣を作る。さらに、イメージしたものになるように力を動かして叫ぶ


「我流インポッシブル・アロウ!」魔法陣から飛び出した矢がグルグルと自分の周りを漂う。合計で30本。


一つ一つの矢を想像し「貫け‼︎」と叫んだ時、全ての矢の真ん中程に小さい魔法陣が展開されて、凄まじい勢いで相手の方へ進んで行った。


もちろん相手も転移魔法を使って避ける。だが、この矢たちは魔力のする方へと進む。


その仕組みは矢についた魔法陣は相手の魔力を感じ取ると、その方向に矢を向ける。それを繰り返すだけだ。


邪王の説明にあった我流、結構簡単にできるんだな。


そして、転移魔法は連続して使えない。剣で矢を切ろうとするも、あの剣は多分炎属性だ。刀身がゆらめくし、形は定まらずに伸びる。一方で矢につけた魔法陣は少しながら黒い炎も付けさせてもらった。要するに炎を吸収する。定まらないから吸収してもしきれないが、常に吸収はできる。そのゆらめきが仇となったのだ。


2人に対して15本ずつ30本を同時に突き刺した。


「ゲームセットだ!」


勝ったのだ!2人ともHPはゼロ、正真正銘の勝利だ!


「さすがだ!ライト。君は強い!合格だ。魔剣士になる資格をやろう。受付には伝えてある。ギルドマスターのところへ行って魔剣士の称号と証を貰ってくれ。楽しかったぞ。君みたいな人が勇者をやるならこの国も安泰だな!」


「ありがとうございました」


、、、まぁ魔術と剣技の補正をかけたいだけだし、むしろこの国乗っ取るけれども。


こうして魔剣士の試験を合格し、資格を得たのであった。


このまま勇者パーティでも開こうかなー。そう考えつつギルドマスターのいる部屋に案内された。


「待っていたよ。」


全てを従える柔らかな声。称号〔最高司令官〕(ジョブマスター)の持ち主。


ジョブマスターとは、役職をもつものを従える能力。上下関係で言うと、一番上が〔シタガエルモノ〕二番目が〔オウノサンキョウ〕そして〔ジョブマスター〕だ。


シタガエルモノは王の魂に刻まれていてその称号を持っていると、自分の配下を呼ぶことができる。


が、普通に王を倒してもなれない。むしろ残虐者の称号をもらい強制的に転移魔法で特殊な牢屋だ。でも自分は魂吸収を持っているから大丈夫、、、なはず。


ジョブマスターでありこのギルドの最高責任者なので皆はギルドマスターと呼んでいる。以下を『ギルマス』


ギルマスから手のひらサイズのカードを受け取った。これが証。心の奥から力が湧くような気がする、この感じ、カード側に支配の魔法がほんのりかかっている。


「説明をします…」


「いいえわかっているので。急いでいるので帰って良いですか?」


「えっ、まあ………本当にわかっているんですね!ならばお帰りください。」


「ありがとうございます」


そう言ってそそくさと出てきた。


イラつくなぁ。あの優しい声とこのカード。自分に宿った邪のオーラが苛立つのがわかる。あのギルマスは強いな。王を殺した後にシタガエルモノで呼び出して、不意をついて殺すか。それか魂を支配して勇者パーティに入ってもらうか。


楽しみだなぁ。アイツは使えるなぁ。


第二章〜勇者リベンジ編〜  完






豆知識


邪のオーラはレベルが上がるごとに強さを増してゆく。

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