第7話 隠し事
二人で一緒に温泉に入り、夕食として用意された豪華な和食を食べたことで、何一つ苦痛を感じない時間を過ごしていることを自覚するアカネは、二人離されたベッドに妙な孤独を感じていた。ユウナは洗面台で貸し出しの白い歯ブラシを咥え、優しく自らの歯を左右に揺らして磨く。ベッドが軋む音を耳にしながら、温水で口を
反応のないアカネの首を右手の人差し指でそっとなぞると、アカネは小さく悲鳴を上げて、仰向け状態へと転がった。そして、ユウナのうっとりした目が合い、その顔をずっと見ているとユウナは空いた隣のスペースに入り、三角座りになる。そして、赤くなった顔に力の抜けた掌を当て、優しく摩る。その手から伝わる彼女の温もりに心を奪われていくアカネは手を解いてゆっくりと起き上がり、服従の姿勢から膝立ちへと移り、そっと温かくなった顔をユウナの待ち焦がれる笑顔に近づけていく。我慢ができなくなったのか、ユウナは自ら口を近づけ、優しく三秒触れ合わせる。
「じれったい」
ユウナは少しウンザリした声を漏らすと、もう一度キスを交わす。触れあっては離れ、何度でも触れあう唇から二人の吐息が漏れる。その吐息も交わすうちに強くなり、深みを増す。呼吸が荒れるアカネはキスから解放されると、口を少し開いたまま呼吸を整え、胸に両手を当てて解き放れた快感に対し、興奮を抑えようとする。猶予すら与えようとしないユウナは、強く抱きついて隠そうとする悪い癖を防ぐ。
「何も躊躇わなくていい。隠さなくていいんだよ。何も恥ずかしいことなんて、ないんだから」
ユウナはもう待ちきれず、本音で向き合って欲しいと抱きしめる強さに表す。アカネは訴えに胸から離れた両手を何も言わず、彼女の肌に当て、抱きしめる。強くなくても、ユウナは自らの肌に触れたアカネの手から伝わる温もりが嬉しかった。アカネの乾いた髪に触れ、撫でながら「それでいいの」と呟く。
「友達でいいなんて、思ってごめんね」
アカネはずっと自分を誤魔化していた言葉を吐き出し、今度は自らユウナの唇に触れ、口吻を交わす。そして二人は抱き合ったまま横向きになり、もう一度キスを交わした。
「私も、ごめんね」
ユウナは掠れた声で囁くと、隠していた想いを口にする。
「本当はね、アカネを助けたかった。ただ、それだけだったの」
この自白にアカネは何も反応を見せず、ただ頷く。ユウナは愛するアカネへの仕打ちがただ許せず、自分のこととは関係なくても、逃がすことが彼女への助けになると考えていた。しかし、移動している時でもアカネが自分に気を遣っている姿を何度も目にしているうちに、自分のした行動が間違いなのではないかと疑っていた。
「伝わったよ、ユウナの想い」
アカネは額を合わせ、目を閉じる。
「ずっと、一緒にいようね」
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